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コロナ禍、各国の隔離事情…制限の中での日本代表23名の選出背景とは?

コロナ禍による地域のルール、同時期の五輪代表(U-24)招集。様々な制約のなかで選ばれたA代表23名(うち初招集は国内組の8選手)。このメンバーが選出された背景と期待される役割とは。(文=川端暁彦)

■冨安はA,三笘、田中らは五輪へ

 18日に発表された日本代表メンバー23名は、25日の国際親善試合・韓国戦、そして30日のW杯2次予選兼アジアカップ予選・モンゴル戦のためのラインナップだ。

 インターナショナルマッチデーに開催される今回のシリーズは、従来なら代表側の要求に沿ったベストオーダーを揃えるべき状況だが、コロナ禍の影響を受けて、FIFAは帰国後2週間の隔離を求められるケースなどでクラブ側の招集拒否を認めている。今回はフランスなどのチームにいる選手たちが招集できなかったようだ。この点については同じ国であっても地域によって対応が異なり、ドイツやベルギーでプレーする選手たちなどはクラブの属する地域によって呼べる選手と呼べない選手が出ることとなった。

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 加えて同時期に五輪代表(U-24日本代表)もアルゼンチンとの国際親善試合2連戦を予定しているため、7月の東京五輪を見据えて、五輪世代の選手たちはDF冨安健洋を除いてそちらへの参加となった。この中には川崎フロンターレで存在感を見せるMF三笘薫やMF田中碧などが含まれるだろう。この点について森保一監督はこのように説明する。

「冨安以外にもA代表のスタメンでプレーできる力のある選手、サブの戦力として考えられる選手はいます。ただ、絶対的にスタメンということでないならば、世界的強豪であるアルゼンチンとプレーする時間が長いほうが個の成長にもつながり、オリンピックに向けての強化にも、さらにその先のA代表の強化にも繋がると考えました」

 せっかくオーバーエイジ選手まで帯同して本気の強化機会と捉えているアルゼンチンとやれる機会なのだし、五輪本番まで4カ月という時期的な問題を考えても、基本的に五輪世代の選手たちはそちらに回るという判断になった形だ。

■代表の「席」に生じた空白を埋めた国内組

20210319-yamane-kawasaki©Kazuki Okamoto/ONELIFE

 こうなってくると、代表の「席」にはいくらかの空白が生まれることになる。森保監督はそこに「Jリーグで活躍を見せている選手たち」をピックアップし、結果として23名中8名が初招集、さらに2名は森保体制になって初めての招集という、「チームの半数くらいが初めて」(森保監督)という非常にフレッシュな顔ぶれになった。

 初招集となったのはGK前川黛也(ヴィッセル神戸)、DF山根視来(川崎フロンターレ)、中谷進之介(名古屋グランパス)、小川諒也(FC東京)、MF江坂任(柏レイソル)、原川力、坂元達裕(セレッソ大阪)、川辺駿(サンフレッチェ広島)の8名。Jリーグで高いパフォーマンスを示している、24〜28歳の脂の乗った年齢の選手たちが「空席」を埋めた形となった。

 ただ、空いた席を埋めるような招集だったのは確かながら、こうした機会を飛躍の切っ掛けとする選手が出てくるのもまたよくある話で、そうしたブレイクスルーを果たす選手たちが出てくれば、代表にとっても大きいし、Jリーグでプレーする選手たちにとっても確かな刺激になるだろう。

 少し懸念されるのは、今回の代表活動では感染対策として国内組と海外組の選手たちの宿舎も分けて練習場と試合以外は別々の活動とするため、初招集の選手が代表に「馴染む」という意味での壁はいつも以上に厚くなりそうだということだろうか。

 ただ、森保監督が「普段のJリーグで彼らが存在感を持って輝きを持つプレーをしてくれているので、今回のチーム編成を考えたときに、韓国戦・モンゴル戦に勝利できる戦力だということで選ばせてもらっている」と明言したように、個々の地力はJリーグで証明済みであり、変な遠慮はしないでもらいたいところだ。

■Jリーグ自体への波及効果も期待

 ここで彼らが練習を含めて得る刺激というのは間違いなく大きなもので、「代表初招集の選手たちはまだ経験値として浅いところもありますが、刺激を受け手もらって短期間でも成長してもらい、代表での経験が日常でのチームでの活動に還元してもらいたい」と語ったように、Jリーグ自体への波及効果も期待したい。

 当然「いや、俺を呼べ!」と思う選手たちが出てくるという意味での刺激も歓迎だろう。昨年秋の代表活動はコロナ禍のために国内組の選手たちは選考対象でなくなってしまったが、やはりそれでは本当の意味での「日本代表」ではない(もちろん、Jリーグ組の力が足りなくて選ばれないのであれば仕方ないが)。

 今回の招集について「戦力の幅を広げながら底上げをしながら最強のチームを作っていく」と森保監督は言う。東京五輪のことがどうしても注目される時期ではあるが、W杯の2次予選はもちろん、最終予選も近い。そこを経てW杯本大会にて最強のチームになるための第一歩。韓国とは予選で再び戦う可能性もあるだけに、単なる親善試合の一つではない意味を持つ試合となりそうだ。

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