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素直に喜べない異例の対決…日本代表vsU-24日本代表にはある種の“軽さ”も必要ではないか/プレビュー

■奥の手のマッチメイク

 夢の対決! ドリームマッチ実現!!……と素直に喜べない特殊な試合が、北の大地を舞台に開催されることとなった。

 U-24日本代表(東京五輪日本代表)を預かる横内昭展監督が「急きょ」というフレーズを連発したことからも分かるとおり、急転直下の決定だった。

 この日、日本代表(A代表)が対戦を予定していた相手はジャマイカ代表である。しかし、米国経由で来日する10名の選手たちが無事に出発した一方、オランダ経由で旅立とうとした欧州組の選手たち複数が空港カウンターにおいてPCR検査の陰性証明書に関して日本政府の定めている書式と異なるものを用意してしまったため、搭乗を拒否される事態になってしまった。

 再検査して来日となるとスケジュール上の無理があるため、試合をすることは不可能に。そこで急浮上したのが「A代表vs五輪代表」というカードである。お隣の韓国では実施されたこともあり、国際試合開催が不可能となった場合の奥の手としてアイディアベースでは存在していたこのジョーカーを、日本サッカー協会は代替試合として用意したわけだ。

■「すぐスケジュールの計算を…」

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 この提案について、A代表と五輪代表の指揮官を兼務する森保一監督は受諾した。

「ジャマイカ戦がなくなって、日本のサッカーとしてはピンチの状況になったと思う。普段の試合、普段の活動の環境を作ってくださる多くの関係者がいる。われわれが五輪代表と試合をさせてもらえば強化にもつながる。試合の環境づくりをしてくださっていた方々に、われわれがいつもしてもらっている恩返しをする機会にもなると考えた」

 コロナ禍で代表活動を続けるに際して、一筋縄でいくはずもないという覚悟を決めていたのもあるのだろう。「制限が全国的にある中で特別に試合をさせてもらっている」(森保監督)。であるならば、違う形での試合が決まったのであれば、それを活かす方向で考えようという割り切りも感じられた。

 もちろん現場にとって青天の霹靂だったのも確かである。

「ここにゲームが入るんだ! やるんだなあって、すぐスケジュールの計算をしました。試合までの日程を頭に浮かべて、その後の移動というか、そこのプランを少し考えました」

 五輪代表の現場を預かる横内監督はそう言って笑う。試合前々日の1日に急きょ札幌へ旅立ち、A代表戦へ備える。その試合後は中1日で博多へ移動してU-24ガーナ代表との試合に臨む流れだ。ハードスケジュールに伴う負荷はもちろん、トレーニングの計画も破綻したに違いない。

■ベストをぶつけたいのはガーナ戦

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 ただ、やるからには「僕は明日のゲームに前向きに」「緊張感のある中で、U-24の選手が質のあるA代表の選手とやれるのは、非常に良いマッチメイク」と、この試合を利用してやろうというマインドセットに切り替えている。

 チャレンジャーとなる五輪世代の選手たちの反応も悪いものではなく、モチベーション自体は高い。

「聞いたときはすごくワクワクしたというか、楽しみだなという思い。いま日本を代表しているチームなので、その相手にどこまでできるのか。すごく楽しみな一戦」(DF旗手怜央)

「僕たちも負ける気はないですし、勝てれば評価もひっくり返るので、そういったところは狙っていきたい」(MF三笘薫)

 オーバーエイジ選手3名を加えて初めて行う試合という意味でも重要性はあり、“18枠”を巡るサバイバルレースの第一歩という価値もある。A代表選手たちの力量を知るMF堂安律が「勝てるんじゃないかという雰囲気はダメ。大敗する可能性だってある」と兜の緒を締めたように、胸を借りる相手として実力不足ということもない。

 とはいえ、三笘が「ガーナとジャマイカとの試合(5日と12日)がメインというところは変わっていないと思う」と言ったように、ここで完全燃焼するような位置付けでないことも確かで、微妙なバランスも必要になりそうだ。どうしても周囲は対決を煽ってくる形になるだろうし、選手側の士気も低くはならないだろうが、五輪代表にとってもA代表にとっても、ここは準備試合の一つに過ぎない。ある種の“軽さ”も必要である。

 特に五輪代表の選手起用についても、東京五輪初戦の相手が南アフリカであることを思っても、そこを見据えた5日のガーナ戦にこそベストオーダーはぶつけたい。個人的には、森保監督もA代表のベンチには入らず、スタンドから中立観戦するくらいのほうが立ち位置としていいのではないかと思うくらいである。

 その上で、単純に「A代表vs五輪代表」の異色マッチが楽しみであることもまた確かだろう。「長友佑都vs堂安律」といったマッチアップには確かに夢もあれば、経験値にもなるはずだ。オーバーエイジの3名が五輪側にいることを思えば、戦力的にもそれほどの差はあるまい。

 急転直下で決まったこの試合、実りあるものになることを願うのみである。

取材・文=川端暁彦

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