■単なる紅白戦ではないぶつかり合い
©Kenichi Arai興行としては面白いカードに違いなかった。新世代の五輪代表が、FW大迫勇也、DF長友佑都といった“おなじみのメンバー”を擁するA代表に挑むという構図も分かりやすい。A代表側には負けられないプレッシャーがあるしプライドもある。対する五輪代表側からすると、本大会の18人枠へ向けた最終選考会の一つだからだ。
実際、試合は白熱していた。スコアとしては0−3の大差だったが、単なる紅白戦ではないレベルのぶつかり合いがあり、相手の隙を見逃さないプレーがあった。外国人のダルウィッシュ主審が試合を裁いていたことも、“紅白戦っぽさ”を排する効果があったように思う。DF橋岡大樹が「突き詰めていかないといけない部分をたくさん見付けられた」と語ったように、個々人が課題を認識する場としても機能した面はある。
ただ、五輪代表にとっての目標は東京五輪である。A代表は元から予定されていた試合の相手が変わっただけで、強化スケジュールに何か変更があったわけではないが、五輪代表はこれをねじ曲げての参加だった。このため、デメリットも小さくない中での試合である。横内昭展監督はそうした言葉を用いるのは避けていたが、先発メンバーを見れば、「本番は2日後のガーナ戦」と位置付けていたことは明らかだろう。
先発メンバーにオーバーエイジ選手の姿はなく、交代で出た遠藤航が「事前に15分だけ出場するからと言われていた」と語っていたように、勝つための交代をしたというより、決められた時間を各選手に割り当てていたと思しき采配だった。むしろモチベーションが自ずと高まるシチュエーションだからこそ、ここで完全燃焼してしまうことがないように配慮していたとも言える用兵だった。
ただ、その中でも遠藤が15分ほどの出場でさすがのプレーを見せて存在感を出してきたのは大きな収穫。頼りになる兄貴であることを印象付けると共に、その招集にある種の納得感を与えられたのは大きい。
また遠藤は「今日ゲームができたことはポジティブなこと。試合に出たフィーリング、いまも試合後のロッカールームで話していたが、そこでのコミュニケーションが大事になる」とも語る。「ポジティブな雰囲気を落とし込むのが自分の役目」と言うように、敗戦を喫したからこそそれを前向きに活かそうというマインドが重要であることを強調していたのも印象的だった。
■千葉、札幌、そして福岡への移動
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この試合単体を切り取ったときに意味も価値も見いだせるゲームだったが、6月シリーズ全体という意味では難易度が上がった面はある。何しろ五輪代表は試合前々日に千葉から札幌へ突然のフライトを敢行し、今度は福岡へと飛び立って中1日でガーナ戦へ臨むことになったのである。横内昭展監督は選手起用について「やりくりをしなければいけない」と語ったように、A代表との試合が挟まったことで、スケジューリングとコンディショニング、そして選手のキャスティングについては何とも悩ましい部分が出たのは間違いない。
加えて、中1日でフライトありの移動というのはリスキーな要素で、実際この中日での移動は悪天候によって予定どおりに行かず、五輪代表チームは福岡でのトレーニングを断念し、札幌で練習してから移動する形となってしまった。試合をするスタジアムで練習できずにぶっつけ本番でガーナ戦へ臨むこととなる。
これはネガティブに考えればいくらでも考えられるような状況だが、こうしたアクシデントから生まれた厳しい状況でチームがまとまるのもよくある話なので、うまいこと前向きなエネルギーに置換してもらいたいところではある。そういう意味で言うと、ユース年代からフライトや練習に関するトラブルが“あるある”となる国際経験を積んできた選手たちが揃っているのは頼もしい。
ガーナとの試合はA代表との試合で先発を避けた選手たちが軸となるだろう。つまり、現状のベストに近いオーダーをぶつける腕試しとなるはずだ。つまり、オーバーエイジも含めたテストであり、コンビネーションを擦り合わせる場であり、本大会の南アフリカ戦を見据えたシミュレーションの機会でもある。
一石三鳥を狙って組まれたガーナ戦。できれば、勝って「自信」という四つ目の鳥も得ておきたいのだが、少々贅沢な望みだろうか。
取材・文=川端暁彦
