everton-james-rod(C)Getty Images

ハメス・ロドリゲスの凋落。カタールへの移籍でコロンビアのアイコンはさらなる下降線へ

新天地を求めてエヴァートンに移籍してから1年以上が経ち、ハメス・ロドリゲスは再び新たな旅に出ることになった。

グディソン・パークから離れることが決まってから、夏の間に多くのクラブがコロンビアのプレーメーカーの獲得を検討していた。

10代で最も輝かしい才能として名を挙げたハメスだったが、その当時の所属先であるポルトも熱視線を送っていた。さらにイタリアの名門ミランも移籍先として噂されたし、カルロ・アンチェロッティが指揮するレアル・マドリーに戻ることまで取り沙汰された。それらの噂は結局実現することなく、ハメスは新天地にカタールを選んだ。

以下に続く

アル・ラーヤンへの移籍は確かに金銭的には大きなメリットがあるが、これほどの能力を持ち、サッカーエリートとして確固たる地位を築くはずだった男にとって、大きな後退となるだろう。

■エヴァートンではケガと監督交代で…

james-rod(C)Getty Images

昨シーズン開幕当初、アンチェロッティと再会を果たしたハメスは、確かにチームの一員となったように見えた。マドリーでの苦難の時を経て能力を証明しようとしており、リシャルリソン、ドミニク・キャルバート=ルーウィンら攻撃陣とダイナミックな連携を見せた。シーズン序盤は良いパフォーマンスを何度も見せ、アンチェロッティの信頼に応えたのだ。プレミアリーグでは最高のハメスが再び見られるのではないかと思われた。

だが、これまでと同様の事態が発生することになる。ケガをして調子を落としてしまったのだ。ピッチに戻ったときには、そのダメージは大きく、成果の得られない期間が長く続いた。そしてピッチの外での行動が紙面を飾っていく。

結局アンチェロッティはスペイン首都に帰っていった。厳格な規律を好む後任のラファエル・ベニテスとハメスの間に意見の折り合いがつかないだろうということは、フットボールに詳しくなくても予想することはできた。

「彼はラファのチームに必要な選手じゃなかっただろうね」

ハメスがエヴァートンで生き残れなかったことを受け、移籍期間明けにこう語ったのは、元トフィーズ(エヴァートンの愛称)監督のサム・アラダイス。

「彼ら(ベニテス支配下の選手)は仕事のこなし方を知っているし、彼のシステムでどう動けばよいか、やらなきゃいけないあれこれを理解している。練習場でとてつもなく長い時間を過ごしているからね」

「ハメスは本能で動くタイプの選手だ。自由がほしいタイプで、手枷をはめられることを求めていない。ただただラファの望む選手じゃなかったんだ。そこに意見の不一致があった」

■キャリアに野心が見られず

james-rod(C)Getty Images

ハメスがマージーサイドに残ろうとしていたかどうか疑問に感じているのだとしたら、それは9月初めにヨットでパーティーをしていた時、イビザの空気に吐き出したタバコの蒸気にまぎれてしまっただろう。ハメスがうつつを抜かす間、チームメイトはプレミアリーグのシーズン序盤を快調に滑り出していたのだ。

それ以前から、チームの事情は意にも介していなかった。8月にエヴァートンはリーズ・ユナイテッドと2-2で引き分けたが、その時ハメスは「エヴァートンがどこと対戦しているのか知らないんだ。教えてくれない?」と『Twitch』のインタビュアーに聞いたのだ。

このプレーメーカーは、コパ・アメリカを戦うコロンビア代表のスカッドから外されて以来、ほぼ同じような態度を取り続けている。その結果、ロス・カフェテロス(コロンビア代表の愛称)とほぼ修復不可能な溝を作ってしまった。その数週間後にはエヴァートンとの関係も崩壊してしまった。

それが態度の悪さによるものなのか、不調によるものなのか、その両方なのかわからないが、どちらにしろハメスは自身の類まれな能力を維持することができなくなってしまい、安定して高い能力を出せる選手ではなくなってしまった。

james-rod(C)Getty Images

30歳という若さで、自身の経歴を元手にカタールに移るというのは、彼の最高の状態を見てきた人にとっては受け入れがたいものだ。この移籍がエヴァートンにとって経済的な意味を持ち、少なくとも2014年W杯得点王が2021-22シーズンも競技を続ける機会があったとしてもだ。

ハメスのエヴァートン移籍は、停滞していた自身のキャリアを復活させ、偉大な選手になるという過去の予想が当たっていることを証明するものになるはずだった。だが、今ではその野心的な見通しを実現しようという意識はほとんどなくなり、これまで以上にその興味を失ってしまったのかもしれない。

広告