最終節まで3チームが優勝の可能性を残した混戦の明治安田生命J3リーグを制したのは、ブラウブリッツ秋田だった。杉山弘一新監督のもと、開幕から快進撃を遂げたチームは、一時期の不調を乗り越え、シーズン終盤に再びギアを上げ、最後の最後に逆転で初の栄冠を手に入れた。
昨季は4位と上位に食い込んだ秋田は、杉山新監督を招聘し、さらなる躍進を目指した。開幕戦こそ、昨季までJ2に所属したギラヴァンツ北九州に1-1と引き分けたものの、第2節からの6連勝を含む15戦負けなしと、圧倒的な強さで優勝争いを牽引した。安定した守備に加え、田中智大、久富賢ら攻撃陣がコンスタントに得点を奪い、まさに向かうところ敵なしで首位を独走。このまま優勝に向けて突っ走るかと思われた。
ところが第17節に初黒星を喫すると、以降の10試合でわずか2勝しか挙げられず、突如の失速を強いられた。堅守を誇った守備がほころびを見せはじめ、失点数が増加。第23節にはアスルクラロ沼津に交わされ、6節から守り続けた首位の座をついに明け渡すこととなった。
流れを考えれば、このまま沈んでしまってもおかしくなかったが、第28節から3連勝を達成し、息を吹き返すと、シーズン終盤は優勝を争った栃木SCと沼津の躓きにも助けられ、最終節でガイナーレ鳥取に快勝を収めて、劇的な逆転優勝を飾っている。J2クラブライセンスを保有していないために昇格こそかなわなかったが、近い将来のJ2入りに向けて、価値ある優勝となったことは間違いない。
最終節にその秋田に交わされて2位となったのが栃木だ。昨季は入れ替え戦の末に昇格を逃したチームにとってリベンジのシーズンとなったなか、開幕から9戦無敗とスタートダッシュに成功した。
もっとも以降は得点力不足に悩まされ、勝ち切れない戦いが目立った。その状況を変えたのが、今夏に大宮アルディージャから加入したネイツ・ペチュニクだった。元スロベニア代表の経験豊富なストライカーは、移籍後初戦となった第19節のY.S.C.C.横浜戦でいきなりゴールを奪うと、第22節の鹿児島ユナイテッドFC戦ではハットトリックを達成。チームに再び勢いをもたらすと、沼津との直接対決となった最終節ではチームを昇格に導く同点ゴールを奪い、まさに救世主としての活躍を示した。シーズン終盤の6試合は5分1敗と勝ち切れなかった栃木だが、リーグ最少失点を誇る堅守を武器に、2015年以来となるJ2復帰を成し遂げている。
J.LEAGUEその2チームと最後まで優勝を争った沼津の戦いぶりも称賛に値する。JFLからの昇格1年目ながら臆することなく立ち向かい、難敵を次々に撃破。とりわけ際立ったのが攻撃力。4ゴール以上奪った試合が6を数えるなど、リーグ最多の60得点をマークした。シーズン終盤の5試合でわずか1勝しか挙げられなかったことが優勝を逃した要因となったが、そのアグレッシブなスタイルで今季のJ3リーグに旋風を巻き起こした。
一方、1年でのJ1復帰を狙ったギラヴァンツ北九州だったが、厳しいシーズンを過ごした。原田武男監督のもとでボールを保持するサッカーを標榜したが、出だしから勝ち負けを繰り返す不安定な戦いを露呈。ツボにはまった時は圧倒的な強さを見せたものの、あっさりと敗れる脆さも同時に抱え、シーズンを通して波に乗り切れなかった。最後まで優勝争いに絡むことなく、9位という成績に終わっている。
J2クラブライセンスを得た鹿児島は、結果的に前半戦の不調が響いた。第6節から4連敗を喫するなど、早い段階で優勝争いから遅れを取った。夏場以降に巻き返しを見せ、24ゴールを挙げ得点王となったエースの藤本憲明の奮闘も光ったものの、昇格には一歩及ばなかった。
同じくJ2クラブライセンスを持つAC長野パルセイロは浅野哲也監督のもとで堅守を築いたが、得点力不足の課題を解消できずに5位でフィニッシュ。6位に終わったFC琉球は序盤の躓きが響き、勝ち切れない試合も目立つなど、昇格争いに絡めなかった。
森岡隆三新体制のもと、上位進出を期してリーグ戦に臨んだ鳥取は、シーズン序盤こそ上位につけていたが、第8節以降に4連敗を含む10戦未勝利と、突如不調に陥った。さらに第19節以降はひとつも勝利を挙げられず、屈辱の最下位でシーズンを終えている。
健闘を見せたのはYS横浜だ。昨季最下位に終わったチームは、今季も前半戦の16試合でわずかに2勝と、最下位に留まっていた。ところが第20節から3連勝を含む7戦負けなしとV字回復を実現。エースの辻正男が得点を量産し、秋田や北九州といった格上からも勝利を挙げている。終盤に再び負けが込み最終的には14位となったが、攻撃力が格段にスケールアップし、来季の躍進を予感させるシーズンとなった。
U-23チームの中では、FC東京U-23が11位と最高の成績を残し、前半戦は苦戦を強いられたセレッソ大阪U-23も後半は着実に勝点を積み重ね、13位とまずまずの結果を残した。一方、宮本恒靖監督が率いることで話題となったガンバ大阪U-23は開幕5連敗と出遅れ、20節からは泥沼の8連敗を記録。それでも一美和成ら攻撃陣が奮起した残り6試合を負けなしで乗り切り、鳥取をかわして最下位を免れている。
J.LEAGUE個人に目を向ければ第5節のC大23戦で、F東23の久保建英が、15歳10カ月11日でJ3リーグ最年少得点記録を更新。一方でSC相模原の川口能活が第17節の鹿児島戦で、J3リーグ最年長出場を果たした(41歳11カ月1日)。次代を担う俊英と、かつての日本サッカー界を支えたレジェンドが素晴らしい記録を打ち立てたことも、付け加えておきたい。
文=原山裕平
