16日、町田市立陸上競技場で行われたFC町田ゼルビア対名古屋グランパスの試合は、両チーム合わせて7ゴールが生まれる乱打戦となった。降り続ける小雨を吹き飛ばすような熱戦の試合前に、Jリーグ史上初めてとなる“あるイベント”が催された。
その名も“エスコート女子大生”――。
8月16日の『女子大生の日』にちなみ、選手と一緒に手をつないで入場するエスコートキッズの代わりに、女子学生たちにエスコートしてもらおうという企画だ。町田といえば、これまでも『ミニスカートの日』にちなんでスカート着用者を無料招待したり(2015年10月)、入学の季節に合わせて学生服、ランドセル着用者を無料招待したり(2017年4月)と、一風変わったユニークな企画でサポーターを楽しませてきた。
©FC MACHIDA ZELVIA今回のイベントを企画した経緯について、現役時代には町田でもプレーし、現在はクラブの営業・ホームタウン推進課課長を務める星大輔さんに聞いてみた。シーズン開幕前に星さん、広報部、運営部の3者でリーグ戦の年間スケジュールを確認したところ、名古屋戦当日が「女子大生の日」であると判明。「夏休みだし、女子大生を招待したら面白いかもしれない」ということで企画を立ち上げたという。しかし、無料招待だけなら以前の企画と変わらない。そこで町田のアイディアマンたちが、もうひと工夫を加えて生まれたのが“エスコート女子大生”だった。
手本にしたのはオランダの名門・アヤックスが行った「母の日」の“エスコートママ”。「母の日に選手がお母さんと入場するというのは世界でもやっていて、聞いたことがあったんですけど、『女子大生はないんじゃない?』っていうのから、今回の企画は始まりました」。相馬直樹監督や強化部との話し合いの結果、選手と手をつなぐことはなく、フラッグを持って入場する形となったが、“エスコート女子大生”は発表と同時にSNS上でも話題になった。
いざ募集を開始すると、クラブの予想以上に応募が殺到。エスコート22名とフェアプレーフラッグベアラー4名、合計26名の枠に対し、約4倍の101名が応募する激戦となったのだ。当日、集まった女子学生たちは、星さんの案内のもとで記者会見室やイベント広場のゼルビーランドを見学。そして、キックオフ前に選手の元へと集まると、入場曲「Zelvia Anthem」とともに野津田のピッチに入場した。
©FC MACHIDA ZELVIA“エスコート女子大生”という大役を終えた一人、上原愛理さんは「これから試合に出る選手の横にいたので、緊張もしましたし、ドキドキしました」と一言。実は幼少期にエスコートキッズを体験しており、ちょうど10年ぶりのエスコートという偶然も重なった。同じくエスコートを終えた伊藤愛絵さんは、試合前から緊張を隠せない様子だったが、「選手が普段から見ている景色を一緒になって見ることができてよかった」と、特別な体験をできたようだ。そして最後には二人とも「また町田の試合を見に来たい」と興奮気味に語ってくれた。
©FC MACHIDA ZELVIAこの日の観客動員数は6,007人。雨が降り続く中で、町田にとっては今季3番目に高い数字を記録した。クラブとして目標の数字には届かなかったようだが、星さんは前向きに話す。「初めて会った参加者の子たちが、色々なところで写真を交換し合っていたんですよ。ゼルビアがきっかけで友だちになって、またそれぞれの友だちが『ゼルビア、また行こうよ!』、『面白いことをやっているチームがあるんだよ』みたいに輪を広めてくれればいいなと思います」
Jリーグ全体が抱える問題の一つとして、若年層のファンの少なさが挙げられる。「そのくらいの年代の子たちは、日本代表は見てもなかなかJリーグやゼルビアを見に行きたいとは思っていないでしょう」と星さんも若者の少なさを認める。だからこそ、エスコートに参加した女子大生や、無料招待の学生が喜んでくれたことに笑みを見せる。
「面白いことだったり、話題になるようなことは今後もやっていきたい。町田は“アホなこと”、面白いことをやっているクラブと覚えてもらえたらなと思います」
ひとまず、Jリーグ史上初の試みは無事に終了したが、星さんとクラブは目標に向けて様々なチャレンジを続けていく。これからも町田ではユニークなイベントを楽しむことができそうだ。
取材・文=清水遼
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