■はじめに
Instagramは写真に特化したSNSで、世界中の人と交流出来るのが特徴だ。Jリーグではクラブと選手の公式アカウントもあり、日々情報発信をしている。しかしInstagramに”リア充向け”といったイメージがあるのもまた事実。情報収集ならばTwitterの方が向いているのではないか。今回はそんな疑問を晴らすべく、Instagramを利用しているサポーターから話を伺った。
■若手選手がSNSを更新する理由
1人目は横浜F・マリノスファンのうなさん。(@camelliarang)普段からスタジアムに足を運び、試合を追い続けてきた長年のマリノスサポーターだ。彼女は若手選手の情報を得る時はInstagramが一番だと説明してくれた。ベテラン選手の情報や試合結果はYahooニュースなどでも手に入るが、若手選手の情報はなかなか難しい。そこでうってつけなのがInstagramなのだそうだ。言われてみればその通りである。年齢が若いから最新のSNSツールに対するアンテナが張っているのだとしか考えていなかったが、自分をアピールする場を増やすツールとしての認識がしっかりあるからこそ利用率が高いのかもしれない。
■TwitterにはないInstagramの魅力
うなさんは「個人的な感想として、Twitterは選手がつぶやいても『試合応援ありがとうございました』のコメントにプロのカメラマンが撮った一番よく写っているきれいな写真がついているだけなのであっさりした報告の様に感じてしまって…でもそれがInstagramになってくるとコメント欄で選手同士のやり取りが見えて人間味を感じられます」と話してくれた。
「例えばこの投稿。金井選手の投稿に(天野選手が)#すぐ可愛こぶるって書いてあるから不思議に思っていたら、その後の投稿のコメント欄に甘えん坊キャラの天野選手の一面が垣間見えるんです。」
©kanai_takashi_13
©kanai_takashi_13「#キノコ」というハッシュタグも非常に気になるが、天野選手の衝撃である。記事やインタビューで見ていた天野選手は自身のプレースタイルやフリーキックについて真面目に答えているイメージしかなかった。年下キャラなのだろうと少しは思っていたが、確信に至ったのはこれが初めてである。
試合中や公式インタビューでは出てこないゆるい部分が選手同士のやり取りに出ており、選手のパーソナリティーが分かると応援の気持ちが強くなるという。
選手によっては人の顔を全くあげずに食べ物の写真ばかりアップする人もいて、投稿に信条や性格が表れている。写真はTwitterで140文字を書くよりもずっと人柄が出るものだ。
■チームワークの競技だからこそ人間関係を知りたい
「テレビ朝日のやべっちFCの企画『デジっちが行く』はプロのカメラマンではなくてよく見知った選手がカメラを回しているから素の表情が出ると思うのですが、Instagramもそれに似ているのかな、と思います」とうなさんは話してくれた。
慣れない人の前だと無意識に繕ってしまうものだが、『デジっちが行く』もInstagramも、リラックスしている雰囲気が壊れずに伝わってくる。
サッカーというスポーツはチームワークの競技だからこそ、プライベートの充実が良いプレーに繋がるのは間違いない。
仲良くなれば「変な力が入らずにパスを出しやすい」、「試合中のコミュニケーションを積極的に取れる」など円滑な連携が期待できる。何よりチームの雰囲気の良さが分かるのはサポーターにとっても安心できる部分だ。Instagramから人間関係を推測する楽しみはただの「萌え」として消費しているのではない。応援チームのプレーへの期待の表れなのだ。
しかし、うなさんはInstagramで選手のプライベートがあまりにも出ている場合はフォローをためらうそうだ。選手の子供の顔がオープンになっているものなど、サポーターが踏み込んで良い領域ではないと感じると言う。ただのミーハー心でなく、選手との距離感を適正に保っているからこそ、応援に繋がる人間味を見つけられているようだ。
■選手発信のオリジナルハッシュタグ
2人目は大宮アルディージャサポーターのユキナさん。(@yukina092)応援チームに熱く声を出し続ける熱狂的サポーターである。彼女は選手のオリジナルハッシュタグについて教えてくれた。(ハッシュタグとは#記号と半角英数字で構成される文字列のこと)
大宮の選手の中でもいち早くInstagramを始め、自分でオリジナルハッシュタグを作るほど情報感度が高いのがGKである加藤順大選手。
彼は自撮り写真の時には”#ジドリ―”、仲間と撮る写真では”#ナカマ―”というタグを使いはじめ、瞬く間に広まった。
ファンサービスでは彼に「#ジドリ―して下さい!」と頼むサポーターも出てきたという。
そこからサポーターでもInstagramで自撮り写真を投稿する時に#ジドリ―のタグを使う人が増えているらしい。
■Instagramの最新機能を活用する選手とは距離感が近くなる
最近は、若手・新加入選手のInstagramも人気だそうだ。
通常の投稿に加え、ストーリー機能やライブ機能も活用しており、時にはリアルタイムでサポーターの質問に答えてくれるのだと言う。
このように選手とサポーターの距離感がInstagramを通して変わってきている。
■Jリーグ界Instagramの帝王・槙野智章選手
ユキナさんは浦和レッズ槙野智章選手のInstagramを奨めてくれた。
同じ埼玉同士、敵対関係にある身としては悔しい思いもあるが、「癖になってしまう」ようだ。
その魅力はどこにあるのだろうか。
「投稿数が多くてバラエティに富んでいるところです。
時にはイラッとすることもありますが(笑)段々『今度はどんなネタを飛ばして来るんだろう…』と待っている自分がいます。ついつい動画を見ながらひとりで突っ込んでいます(笑)森脇選手のことも苦手意識があったのですが、槙野選手の投稿のおかげで好感度が上がってきてしまいました。」と話す。
因縁のダービーの相手サポーターも虜にしてしまう槙野選手の実力を見せつけられた、恐るべし。
槙野智章Instagram https://www.instagram.com/makino.5_official/
■Instagramは女性向けツールではない
「スポーツの情報を得るのにプライベートを見る必要性はない」「選手は試合に集中してそれ以外の事にリソースを割かないで欲しい」という意見があることも理解している。しかし今回のインタビューでは、情報を得ることでクラブや選手への思い入れが深まり、さらに応援したいという気持ちになること、Instagramがコミュニケーションツールとしての役割を果たし、サポーター生活が豊かになることも分かった。
もしInstagramアカウントを持っているのであれば、応援チームのホームスタジアムの名前で検索をかけてみて欲しい。笑顔の子供たち、チームカラーのフラッグ、おいしそうなスタジアムグルメ…そこには今にも応援に行きたくなるような気持ちが湧いてくる投稿に溢れているはずである。そう、文字情報よりもダイレクトに感情に訴えかけるのがInstagramの魅力なのだ。そこに性差はなく、誰もが同じように楽しめるツールだからこそ人気が出たのだろう。今回話を伺ったのは女性サポーターだが、Instagramを使ったことがない男性もきっと「自分なりに」「サポーター生活を充実させる」ツールとして活用してみることが出来るはずだ。
応援チームの違うサポーター同士、男性・女性、生活属性の違う人たち。お互いを無理やり理解しようとすれば混乱するのは当たり前である。クラブ、選手そしてサポーターが自分に向いたSNSの使い方をして、それぞれの楽しみ方でInstagramを活用すれば未来のJリーグの発展に直結すると確信した。
文=ささゆか(@sassa_yukka)
