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トゥヘルとヴェルナーにとって理想のストライカー。ルカクがチェルシーにとって完璧な補強である理由

2021-22シーズンのプレミアリーグに激震が走ることになりそうだ。その中でもトーマス・トゥヘル率いるチェルシーが最大のサプライズになるかもしれない。

過去1年半に渡って、新型コロナウイルスがフットボール界に大きな打撃を与えてきた。我々の愛したスポーツは魂を抜かれてしまった。無観客のスタジアム、過密日程、ロックダウン…。それに伴う精神的な影響のせいでスペクタクルは損なわれていた。

クラブはその状況に適応せざるを得なかったが、チェルシーのように大転換ができたチームは多くはなかった。戦術的柔軟性やハードプレス、素早いトランジションがトレードマークだったが、安定したポゼッションや、ディフェンスと中盤が織りなす精密なビルドアップを駆使し、遅攻を中心とした3-4-3のスタイルに転換させたのだ。

だからこそ、チェルシーがロメロ・ルカクと9800万ポンド(約146億3000万円)で契約したことについて、不可思議に思っているサポーターがいることも理解できる。「ルカクはブルーズを活性化し、タイトルを獲得できるチームに押し上げるために適した人材なのだろうか?」と思っていることだろう。ルカクが最後にプレミアリーグでプレーしていた頃は、ジョゼ・モウリーニョ率いるマンチェスター・ユナイテッドでターゲットマンとしてプレーしていたが、あまり効果的な働きはできていなかったからだ。

だが、プレシーズンを通じてルカクの動きをチームに浸透させることができれば、新生チェルシーをシーズンでは見ることができるだろう。縦方向へのインテンシティが上がり、緩急の変化が激しく、常に様々な戦術を使いこなし、ドイツ式のハイプレスを活用するチームになる。この変化によってカイ・ハヴェルツ、ティモ・ヴェルナーにとってはもってこいの環境になりそうだ。そして誰よりも、ルカクにとって最高の環境となる。

28歳のルカクはインテルに在籍した2年間で著しい成長を見せた。円熟味を増し、自信を備えたプレイヤーになった。今やボックスの外でつなぐプレーでも評価され、ピッチを離れても頼られるリーダーとなったのだ。

ルカクはトゥヘルにとって完璧なストライカーなのだ。

■ルカクがチェルシーに及ぼす好影響とは?

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昨シーズン、アントニオ・コンテが採用した3-5-2では、ルカクとラウタロ・マルティネスの関係こそがインテルの象徴であった。カウンターを仕掛ける際によく見られたが、中盤でボールを奪ったときにも、2人は協力してゴールに全力で襲い掛かった。

このパターンはまさに、トゥヘルがハイプレスによって構築したい動きだ。理屈上は、ユルゲン・クロップがリヴァプールで成功を収めたときのものに近い。

RBライプツィヒ時代のヴェルナーはユスフ・ポウルセンやパトリック・シックのような大型ストライカーたちと相性が良く、ルカクにしてみれば自身を得点しやすいポジションに付かせてくれる適切な相棒とも言える。

Romelu Lukaku Thomas Tuchel Timo Werner Chelsea GFXGetty/Goal

ルカクと相互に高め合えるFWはまだいるはずだ。ルカクは昨シーズン、キャリアハイの90分平均0.34アシストを記録。これには柔軟なポジショニングが大きく影響している。頻繁に右に張り出す形をとるルカクは、ディフェンダーを定位置の外に誘導することができる。ハヴェルツ、マウント、クリスチャン・プリシッチたちにスペースを提供することになるだろう。

ルカクは様々な場所を動き回り、プレーに影響を与えたり、アシストの機会もうかがえる。チェルシーが戦術的にフレキシブルでエネルギッシュなチームになっていく中で、ルカクはトゥヘルにとって貴重な存在になるだろう。

トゥヘルが前線の選手に求める主なプレーは、3人が絡む攻撃だ。ワンタッチのバックパスが重要な役割を果たし、3人目の選手が走り込んで最終ラインを素早く切り裂くのだ。

そうしたプレーをする上で、ヴェルナーはゴールを脅かすチャンスを今より多く得ることができるはずだ。ルカクが後方に下がれば、前線にボールを供給することができる。ルカクがトランジションで見事に相手を切り裂く攻撃を演出することが分かれば、チェルシーファンも期待に胸をふくらませるだろう。

ルカクはターゲットマンではないが、トゥヘルが指摘したように、チェルシーではゴールを背にしてプレーする選手がいるとさらに良い効果を生み出すだろう。このベルギー代表はディフェンダーを見事に抑え、ボールを運んでポジションを取り直したり、素早く攻撃するためにシンプルに裏を狙って、スペースを広く作ったりできる。

これは昨シーズンのチェルシーに明らかに欠けていた部分だ。ヴェルナーのファーストタッチは質が悪く、ハヴェルツはゴールを背負ってボールを受ける技量に乏しい。これができるオリヴィエ・ジルーは裏抜けができなかった。

さらに、ハイプレスを敢行する相手に対してはロングボールを前線に供給することをトゥヘルは好んでいる。この手を使ってトゥヘルはマンチェスター・シティをFAカップ準決勝で下し、さらにチャンピオンズリーグ決勝でも出し抜いている。見事なパスでグアルディオラのチームを後退させ、陣地を広げることができたのだ。

言わずもがなルカクの空中戦は大きな武器のひとつだ。スピードとフィジカルを駆使し、バウンドしたボールを奪ってディフェンダーを翻弄する。チェルシーは想像以上にこの力を活用するだろう。トゥヘルはシステムを非常に頻繁に変える監督であり、試合が混乱に陥った時はダイレクトなアプローチを駆使することに躊躇がないからだ。

■得点能力に不安なし

Romelu Lukaku Inter 2020-21Getty Images

結局、ルカクは得点を取れる選手であるという、シンプルな事実がある。

昨シーズンは全コンペティションで44試合30得点を記録した。その前のシーズンは51試合で34得点と、この2年はキャリア最高得点を記録したシーズンとなっている。つまりヴェルナーやジルーと違うのは、ルカクが信頼の置ける得点源であるということだ。2018-19シーズンのユナイテッドでの困難をきたした期間を除けば、キャリアを通じて毎年90分で0.5ゴール以上を記録しているのだ。

ルカクは自力でもゴールを量産するだろう。ドリブルで独走してのゴール、タイトなスペースを切れ味鋭いタッチで抜け出してのゴールなど得点パターンは多彩であるが、チェルシーのファンが最も注目しているのはクロスからのフィニッシュだろう。

トゥヘルがアグレッシブに攻めるであろう今シーズン、ベン・チルウェルとリース・ジェームズはゴール前に多くの良質なボールを提供することが期待されている。彼らの優れたクロスの能力を見れば、ヴェルナーが失敗した多くのシュートに取って代わり、新たな9番がゴールを量産するだろう。

トランジションや、カウンターでのスプリントで得点やチャンスを作ることもできる。味方とのコンビネーションでチャンスも作り出せる。いずれにせよ、ルカクはトゥヘルの様々な攻撃手段にうまく対応することができるだろう。

チェルシーのチーム作りを完成させるために、プレミアリーグ王者に返り咲くために、ルカクは完璧な存在だったのだ。

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