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【徹底分析】“不透明”なレアル&シティ、今季苦しむ最大の要因は?屈指の大一番を西紙分析官が占う

■ラウンド16屈指の大一番

チャンピオンズリーグ(CL)は決勝トーナメント1回戦ファーストレグの6試合を消化した。残るはリヨン対ユヴェントス、そしてレアル・マドリー対マンチェスター・シティだ。そして26日には、サンティアゴ・ベルナベウでマドリーがシティを迎え撃つ。

CL史上初の三連覇を達成し、最多優勝回数を誇るマドリーと、ジョゼップ・グアルディオラ監督到着以降、イングランド記録を次々と塗り替えたシティ。ラウンド16屈指の好カードだが、現在両チームが抱える問題は多岐にわたる。

そんなスペインでの大一番を前に、今回はスペイン大手紙『as』で試合分析官を務めるハビ・ジジェス氏に注目のポイントを聞いた。世界中が注目する一戦を、大国スペイン屈指の分析官はどのように見ているのだろうか。

文=ハビ・シジェス(Javi Silles)/スペイン紙『as』試合分析担当
翻訳=江間慎一郎

■ぼやけた顔の両陣営

Karim Benzema Real Madrid

いったい全体、自分たちはどうなっちまったんだ……。そうやって激しい不安に襲われたとき、実際はどういった状態にあるのかを診断するように、チャンピオンズリーグがやって来る。レアル・マドリーとマンチェスター・シティは、不透明に不透明を重ねたぼやけた顔で、決勝トーナメント1回戦のリングに上がるのだ。

コパ・デル・レイでレアル・ソシエダに敗退を強いられ(準々決勝:3-4)、リーガではレバンテ戦で15試合ぶりに土をつけられ(第25節:0-1)、バルセロナに首位の座を献上……。ジダン率いるマドリーは、ずっと抱えてきた決定力不足の問題は依然変わらず、加えて堅牢な守備が綻びつつある。

ジダン第二体制における彼らの進歩は、精力的なプレス、攻守のバランス取り、自己の犠牲を厭わぬカバーと守備に基礎を置いたものだったが、少しずつ足取りが軽くなっていき、道の途中で忘れてしまったようだ。

彼らが鼻歌まじりでスキップし出したのは3週間前からで、そんな状態なもんだから、派手にコケた。そしてマドリーが本拠地ベルナベウに迎えるシティも、前ほど洗練されたチームになり切れていない。相手のトランジションへの対応にいつも苦慮していて、攻撃も昨季より漲ったものにはなっていない。

■マドリーを脅かす毒

2020_02_09_Kevin_De_Bruyne(C)Getty images

不透明なチーム同士の対戦は、システム的にも不透明だ。マドリーはアザールが再び負傷離脱となり、それがジダンの迷いを深めている。彼が使用する可能性があるシステムは、三つ。ウィングをワイドに使う定番の1-4-3-3か、中央のプレーを太らせる1-4-5-1か、第一体制で多くの成功をもたらした中盤ダイヤモンドの1-4-4-2か。同様にジョゼップ・グアルディオラだってシステムを変更する可能性がある。それは3バックだったり、今季何度か使用している基本システム1-4-3-3のマイナーチェンジ、1-4-2-3-1だったりするだろう。しかし、どのようなシステムを最終的に採用しようと、この試合ではどういったフットボールを展開するか、というコンセプトの方が重要であるのは間違いない。

今季ここまで鳴らしてきた守備力を取り戻すことこそ、マドリーがこのノックアウトラウンドを突破する鍵を握る。ただでさえ得点力が低い状況で、レアル・ソシエダ戦やセルタ戦、そしてレバンテ戦の終盤のように再びピッチ上で各ラインが間伸びしてしまうとすれば、彼らはシティに対抗できないだろう。ここ最近の試合ではDFとMFラインにスペースが空いてしまい、かてて加えてCBヴァランとセルヒオ・ラモスが連係を取れずと、マドリーの守備陣系は見るも無残な綻びを見せた。

言ってしまえば、マドリーが今季序盤に葬り去ることのできた欠点が、ここに来て力強く蘇ってしまったわけだ。だが、シティとの大一番でその欠点をまた晒すことになれば、それはチーム自体の死に直結してしまう。ジダンは今季のチームの強みを守備たらしめたハイプレスに、再び注力することになるはずだ。シティのビルドアップをしっかりと阻害できるか否かが、肝要となる。

シティのビルドアップは、両センターバックと前方のロドリゴのトライアングルに前へ上がる両サイドバックも含めたパス交換と、これまで用いてきたものがベースとなる。今季はボールの前にいる人数を増やそうとセンターバックの1枚を上げることもあるが、ベルナベウのような舞台でそれを行うのはあまりにリスクが高いだろう。

展望的には、マドリーは高い位置に守備ブロックを置いて、彼らが侵入しようとするコースを極力狭めるようにゾーンで守ることになる。そうした場面で、絶対に見失ってはならないのが、デ・ブライネだ。今季のベルギー代表MFはグアルディオラの意図によって、高い位置から下りて来る回数が減っているが、それがマドリーにとっては厄介となるのだ。シティはマドリーが相当に苦しんだソシエダ戦の再現を狙ってくるはずで、そこでデ・ブライネが重要な役割を果たす可能性がある。

ソシエダはビルドアップの際、GKアレックス・レミーロをフィールドプレーヤーの一人として数え、マドリーはもれなく彼にもプレスを仕掛けたが、そのために本当のフィールドプレーヤーを一人、特に左インサイドハーフのミケル・メリノをフリーにしてしまっていた。メリノは自陣ゴールよりもピッチ中央付近にいることが多く、マドリーは試合を通して彼を補足し切ることができなかったのだ。

ソシエダ戦のようにバルベルデとカセミロが自分の守備範囲を守り、ヴァランもS・ラモスもDFラインにとどまり続けるならば、デ・ブライネはメリノと似たような役割を担うことができる。その役割はマドリーにとっては毒以外の何物でもない。それも、死に至らしめる、毒だ。

■シティの穴とマドリーの鍵

Vinicius Junior Real Madrid 2019-20Getty Images

さて、マドリーが守備でうまく立ち回り、毒への抗体を持ったとして、攻撃はどうなのだろうか。もちろん、彼らの攻めは輝かしいものではない。設計的に問題があり、決められるゴールはごくわずか。クリスティアーノ・ロナウドはベルナベウのどこを探したっていないし、スタジアム角のガラス張りにスタンドを見やったら、アザールがまたそこに座っていて、鳴り物入りの自分がプレーしていないチームをもどかしそうに見守っている。

無論、アザールの不在は攻撃における創造性を欠くことを意味するわけだが、それより憂慮すべきはラインを突破するようなアグレシッブな動きがなく、相手を混乱させられないことだ。そうした動きを見せるのはバルベルデだけで、あとはボールを足元で受けて、そこから打開の方法を探って、ボールは取られないものの意外性のないプレーに終始して……の繰り返し。ヴィニシウスかベイルがスタメンとなって、もし冴えた状態にあるならば、彼らの切り込むプレーが突破口になる可能性はある。

ただ、ジダンが期待をかけて起用するのは、イスコとなりそうだ。イスコはロドリゴ、ギュンドアン(もしくはフェルナンジーニョ)の背後に回り込み、そこからサイドに抜けてペナルティーエリア角付近からチャンスメイク、フィニシュを狙うだろう。ベンゼマもそうしたプレーをお手の物とするストライカーだが、しかし今回はペナルティーエリアの中で待ち構える彼が、フィニッシャーとしてのフランス人FWが、かつてないほどに必要となる。

ポジショナルな攻撃があまり機能していないマドリーは、その問題をトランジションからの攻撃で解決できるかもしれない。というのも、今のシティはカウンターに苦慮しているからだ。守備へのトランジションの不安定さを確認するために、大きく時を遡る必要はない。プレミアリーグの直近の試合、レスター・シティ戦(第27節:1-0)では、運、もしくはヴァーディの決定力に助けられる形で大事には至らなかったが、彼らはじつに17回もカウンターを許してしまっていた。

両サイドバックを高く上げる、リスクあるポゼッション攻撃が確実な後退を妨げている、というのが彼らの現状である。フェルナンジーニョはセンターバックとしては不完全で、彼の代わりを務める可能性もあるオタメンディも、心もとないことに変わりはない。そればかりか、チーム最高のセンターバックであろうラポルテも、ミスが少ないとは言い難い。

結局のところマドリーは、たとえ誰がプレーしたとしても、ボール奪取からの速攻の鋭さを十分に磨いていなければならない。モドリッチの冴えに冴えたスルーパス、バルベルデの足の長さを生かした長距離ラン、ベンゼマの気の利いたサポート、ヴィニシウスの稲妻の如きドリブル(このドリブルに関して、ここまでは派手なわりに効果性が薄いが)と、そのための道具は揃っている。反対に、ボールとともに生きる道から外れることのないシティは、後退するときにチームが二分されるのをいかに防ぐのかが課題となる。

不安と疑いが充満がする両チーム。チャンピオンズという舞台は、彼らが今度こそ正鵠を射ることを求めている。

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