まさに、“静学らしい”技巧派選手だ。ドリブルでスルスルと相手を翻弄し、攻撃の起点となり自らも決めてみせる。卒業後に加入したジュビロ磐田でも出場機会をつかむと、持ち前の攻撃力で相手を翻弄し、J1復帰に貢献した。「ずっと海外を目指していた」という思いを実現したのは今年の夏のこと。ポーランド1部のグールニク・ザブジェに移籍すると、ここまで10試合に出場し1得点を決めている。第100回高校選手権の会場を沸かせた静学の10番。あれから3年が経ち、海外組の選手となった今、母校が出場する選手権開幕を前に、改めて静岡学園時代の話を聞いた。(聞き手・文:川端暁彦)
■「この大会で名を売ってステップに」と話していた
——いよいよ全国高校サッカー選手権が開幕します。古川選手は静岡学園高校の出身ですが、元々は滋賀ですよね。その中で静岡学園を進路に選んだ理由はどういった点からだったのでしょうか。
両親に支えてもらって来たので、高校では(実家を離れて)寮生活をしたいというのがまずありました。小さい頃から親に甘えてきたので。サッカー面ではやはりテクニックを磨いてやってきましたから、それを発揮できるチームがいいなというのもありましたね。
——入ってみての印象はどうでしたか。
自分がいた時期は部員が300人近くいました。その競争がまず熾烈でした。全員が自分の良さを出そうとしていて難しい部分もありましたね。高校1年のときからルーキーリーグ(強豪校の1年生によるリーグ戦)があって、そこに出られるか競争しながら練習していました。能力のある選手、技術のある選手が他にもいたので、負けないように必死でした。
——そうした感覚も段々と変わってきたのでしょうか。
高校3年になるくらいから、段々と自分の形というものが見えてきて、「この学年の中心でやらないといけない」というのを感じるようになりましたね。
——最後の年はチームとしても実際強かったですよね。
選手権に入る前は本当に負ける気がしないというか、そういうチームになっていましたし、年間でもほぼ負けていないチームでしたから、優勝できると思っていました(※)。
※結果は準々決勝で惜しくも敗退。
——選手権はやっぱり特別でした?
正月にテレビをつけたらやっているイメージで、誰しもが観たことがある舞台。それにあのBGMと映像が流れる……。それにすごく家族が喜んでくれたし、良かったです。
——あの大会で相当「名を売った」選手だと思います。
あの大会の時期、高3なら大体進路は決まっているんですけどね。僕らはみんなと、悪い言い方に聞こえるかも知れませんが“売名”って言っていました。冗談っぽく優勝と同時にそれを狙おう、と。この大会で売名して、次のステップに注目してもらえるようになればいいなって。
——SNSなどでも「静学の古川って選手は相当上手いぞ」とかなり話題になりましたよね。
そうでしたね。でも今はそのイメージを塗り替えるくらいのことを為し遂げていかないといけないという危機感のほうがありますね。
——古川陽介というと、高校時代の映像が思い出される現状を変えたいという思いもあるわけですね。
もっと上のステージで活躍しているようなシーンを思い出してもらえるようにしたいですね。
■先輩一人ひとりのタレントが自分の憧れだった
©ASICS——静岡学園はOBや先輩でもすごい選手がたくさんいますが、そういう影響はありましたか。
ありました。入る前から大島僚太さん(川崎フロンターレ)とかのプレーは知っていましたし、天才と言われているような選手のプレーを間近で見ていました。自分が入ったあと、やっぱり高校3年生のトップチームを見ていたときに先輩たちにオーラがあって、一人ひとりのタレントが自分の憧れでした。
——いまは逆に在校生から憧れられる存在です。
自分をきっかけにしてサッカーを始めたり、(静岡)学園に入ったりする選手が増えているならうれしいですね。いまは自分たちの代のサッカーを見て入ってきていると思うと、ちょっと感慨深いものもあります。
——あの代の仲間たちはやっぱり特別な存在ですか?
あれだけ毎日真剣に向き合ってやってきて、一緒に悔しい思いをした仲間なので、かけがえのない存在だと思います。応援も行けたら行きたいですね。やっぱり気になりますよ。高円宮杯プレミアリーグのハイライトとかも観ています。
——あらためて静岡学園の魅力とは?
やっぱり個人技のところで相手を圧倒して試合を制圧していくところ。予想だにしないプレーを見せて、見ていて驚かせるようなプレーをするのが魅力ですね。
——それは古川陽介のプレーでもありますね?
そうですね。常に見ている人を釘付けにするような、そんなサッカーが魅力だと思います。
——そんな古川選手がスパイクを選ぶときにまず考えることは何でしょうか。
やっぱりフィット感と軽さですね。あとはタッチの感覚もすごく考えます。足に違和感のあるスパイクは履けないですね。そこは昔から気になる部分です。
——子どもの頃は見た目とか重視で選びがちですけども。
父がスパイク好きでマニアだったんですよ。「アシックスのスパイクは足に合いやすいぞ」と教えてもらっていました。いろいろなアシックスのスパイクを昔から履いていて、お気に入りも多かったです。
——今プレーするヨーロッパは日本と芝や土の質が違うので、そこでスパイクを悩む選手も多いですよね。
向こうは少し地面が緩いんですよね。だからミックスを履くなど、グラウンドによっていろいろと変えています。(芝の違いは)やっぱり意識しています。
———新モデルDS LIGHT X-FLY PRO 3は、アッパーに「SILKYWRAP(シルキーラップ)」という新素材が使われています。感触はどうですか?
やわらかい人工皮革の素材がすごく良いです。天然皮革だと蒸れたときとか、芝生が濡れているときにちょっとだけ違和感があることもあったので、そういうのも新しいスパイクに変わってどう変化していくかが気になります。
——あらためてオススメポイントは?
より素足に近い感覚でプレーしたい選手、自分の体をうまく使いたい選手にオススメできますね。フィット感はもちろん、履き心地が良いですから。ボールタッチもすごくやりやすい構造になっていると思います。
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