Wataru Endo Stuttgart 2020-12-23

バイプレーヤーから中核として。シュトゥットガルトで堂々たる進歩続ける遠藤航のいま

今季、ブンデスリーガ1部初挑戦に臨んでいるシュトゥットガルトの遠藤航。今やドイツでひときわ注目を集めるトッププレーヤーとなっている。それはスタッツからも明らかだ。

2020-2021シーズンのドイツ・ブンデスリーガ第17節終了現在で、17試合全試合に出場。第15節のアウクスブルク戦で3点のセーフティリードを維持した後半アディショナルタイムの90分に途中交代した以外は全試合フル出場し、ドイツのサッカー専門誌である『キッカー』誌の採点ではFWニコラス・ゴンザレス、GKグレゴール・コベル、FWサイラス・ワマンギトゥカに次いでチーム内4位の平均2.97(1が最高、5が最低)をマーク。そして、ブンデスリーガ公式のスタッツで1対1の勝敗を示す『Duels won』の回数は総計262回で、2位のダニエル・カリジューリ(アウグスブルク)の239回を大きく引き離して首位に立つ。

遠藤は2019年の夏にベルギーリーグのシント=トロイデンからシュトゥットガルトへ期限付き移籍した。ただ、彼が移籍した当時は2019-2020シーズンのブンデスリーガがすでに開幕していて、ティム・ヴァルター監督指揮下でブンデスリーガ2部を戦うチームの中で試合出場のチャンスを得られないでいた。

2021-01-22-endo(C)Getty Images

しかし、チーム成績が安定せずにクラブの至上命題である1部昇格に暗雲が生じた2019年11月下旬、カールスルーエとのダービーマッチで初先発を果たすと、その後はヴァルター監督からペジェグリーノ・マタラッツォ監督へと指揮権が移譲されたのも伴って20試合連続スタメンフル出場を記録し、2部2位で1シーズンでの1部復帰を果たすチームの原動力になるとともに先述の『キッカー』誌が選出する2部の年間ベストイレブンにも名を連ねた。

すると、ドイツ国内では突如表舞台に躍り出た27歳のセントラルミッドフィルダーに注目が集まり、若手の部類ではないにもかかわらず、ビッグクラブへのステップアップも取り沙汰されるようになった。シュトゥットガルトが昨季途中に遠藤との契約を急遽期限付き移籍から完全移籍へと切り替え、今季途中にはさらに契約期間を2年延長する2024年6月までの再契約を交わしたのも、彼の“素材”の確かさを再認識したからに他ならない。

■Jリーグ時代は意外にも…

2021-01-22-endo(C)J.LEAGUE

シュトゥットガルトのマタラッツォ監督が採用する4-2-3-1、もしくは3-4-2-1システムの中で、遠藤が担うポジションはダブルボランチの一角である。しかし、そのポジション取りには独自性が見られる。遠藤の相棒はオレル・マンガラで、チームがゲームの主導権を握って攻勢を仕掛ける際はマンガラが前方、遠藤が後方の縦関係になる。つまり遠藤の役回りは船舶を適切な場所に留め置く錨(いかり)を意味するアンカーであり、今季2部から1部へ返り咲いたシュトゥットガルトにとって、その存在は俄然重要性を帯びている。

しかし意外にも、彼はこれまでのキャリアで中盤のポジションをほとんど与えられてこなかった。彼がプロデビューした湘南ベルマーレでは反町康治監督(現・現日本サッカー協会技術委員長)や曺貴裁監督(現・京都サンガ監督)から3バックのストッパーを任され、2016年から2018年途中までプレーした浦和レッズではミハイロ・ペトロヴィッチ監督(現・北海道コンサドーレ札幌監督)が採用する3-4-2-1システムの中でリベロや右ストッパー、そして堀孝史監督(現・東京Vコーチ)体制時の4-2-3-1ではセンターバックと、やはりバックラインに組み込まれるのが常だった。日本でのキャリアに限れば、彼にMFの任を与えたのは2016年のリオデジャネイロ・オリンピックで遠藤がキャプテンを務めたU-23日本代表を指揮した手倉森誠監督(現・ベガルタ仙台監督)しかいなかったのである。

当時の遠藤が様々なチームでディフェンダーの役目を任されたのには理由があると感じる。それは所属チームの事情もあるだろうが、群雄割拠のミッドフィルダーと比してディフェンダーの人材難が顕著な日本のサッカーシーンにおいて、彼のハイフィジカルと卓越した戦況把握能力は守備組織を形成するうえで得難い存在だったのだ。ちなみに浦和在籍当時に遠藤自身がボランチでのプレーを所望した際、時の指揮官だったペトロヴィッチ監督はこう言って彼を諭したという。

「君が中盤でプレーしたい希望を持っていることは分かっている。しかし今のチーム構成の中ではボランチでプレーできる選手は何人かいるが、君以上に3バックのリベロやストッパーを務められる選手はいないんだ」

■欧州で中盤起用されるまでの経緯

2021-01-22-endo(C)Getty Images

それでも遠藤自身はMFでのプレーを熱望していた。それは彼が、かなり早い段階から海外でのプレーを想定していたからである。ヨーロッパのトップシーンでは178センチ、75キロという自身の体躯はハンディになる。しかし中盤ならば、その不利を相殺できる手段がある。彼には確信があったのだ。ボランチならば勝負できると……。

2018年夏に勇躍移籍したベルギーのシント=トロイデンでは、遠藤自身が加入前からクラブに対してボランチでのプレーを所望した。実際に彼は中盤でポジションを勝ち取るが、実はシント=トロイデンでも純粋なボランチとしてプレーし続けたわけではない。彼は時に攻撃的なトップ下のポジションでも起用されていたのだ。その理由は明確だった。彼が備え持つプレースキルは様々な項目が高水準を保つため、いわゆるユーティリティ選手として重宝されてしまうのだ。

遠藤はシュトゥットガルトに加入した直後も同様の問題に直面している。出場機会を得られないでいた時期、ヴァルター前監督は4-3-3の中盤を形成する中で指揮官自身がキールを指揮していた時代に重宝していた22歳のアタカン・カラゾールをシュトゥットガルトへ呼び寄せ、彼をアンカーの絶対的レギュラーに据えていた。一方で、新参者である遠藤は右MFの2番手として捉えつつ、チーム状況によっては異なるポジションでの起用を考慮していたという。当時の遠藤は自身の立場をこんなふうに語っていた。

「サイドエリアの選手層が薄い事情があって、右サイドバックでプレーする可能性もありました。右サイドバックは、ほとんどプレーした経験がないですけども、まあ、起用されれば仕事は果たせると思いますけどね」

しかし、カラゾールのパフォーマンスが上がらないことで、ヴァルター監督は先述のカールスルーエ戦で遠藤をアンカーに抜擢した。その後は周知の通りだ。彼は周囲の期待に応え、そのポジションと自身のキャラクターの相性を自らの力で認知させた。カラゾールはその後、マタラッツォ監督体制下ではセンターバックが主戦ポジションとなっている。つまり当初はドイツ国内でも、遠藤の本質的な素養は見出せていなかったのである。

■見出した新たな武器

Wataru Endo Stuttgart 2020-12-23

アンカー、もしくはボランチでプレーする今の遠藤のプレースタイルを分析してみる。試合中の彼は360度の視野を確保するために頻繁にポジションを微調整している。味方からボールを受ける前に二次、三次のプレーを予測し、巧みなトラップ精度で味方からのパスを足元に収める。バックパスは他の味方選手と比べて頻繁だが、現況のチーム下ではそのバックパスが事態を好転させる手段であることを自ら証明し、味方選手もそれを認知している。ショートパスの精度が高いのは言わずもがな。そもそも遠藤は日本でプレーしていた時代から30メートルから40メートルほどのミドルパス精度が抜群に高く、振り幅の短いクイックステップは四方からプレッシャーを受けるプレーエリアでひときわ効力を発揮し、相手はパスの出処となる彼へのマーキングに苦慮している。

そして、シュトゥットガルトでの彼はこれまで隠し持っていた新たなる武器をも標榜しつつある。それは機敏な判断と正確無比なパス精度を駆使して放たれる相手バイタルエリア付近への縦パスだ。彼の縦パスは攻撃のスイッチとなり、その劇的な場面転換からチームは相手ゴールへと迫る。ゴンザレス、ワマンギトゥカ、ゴンサロ・カストロ、マテオ・クリモヴィッツらの味方攻撃陣が高らかに躍動する影には、常に遠藤の影響力が及んでいる。

こうして客観的に遠藤のプレーパフォーマンスを観察すると、中盤中央のポジションこそが彼の天職であると思えてしまう。そして、それを最も確信していたのは他ならぬ本人だった。

今では頭の中で容易に思い浮かべられる。普段から沈着冷静で、物事に一切動じず、達観した佇まいの彼がしたり顔で、「だから言ったでしょ。俺の最適ポジションはボランチだって」と言い放つ姿をーー。

威風堂々。自信をみなぎらせる彼は、世間の風評を鮮やかに吹き飛ばし、その異端なキャリアを、胸を張って歩み続ける。日本人フットボーラーの遠藤航が、バイプレーヤーではなく中核として、ドイツ南部の伝統クラブ、VfBシュトゥットガルトを深く重厚に牽引する。

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