Lionel Messi Pep Guardiola PSG Man City GFXGetty/Goal

なぜメッシ獲りに動かなかったのか?マンチェスター・シティが争奪戦に加わらなかった理由

リオネル・メッシがバルセロナを離れることがあれば、キャリアをエティハド・スタジアムで終えるだろう、という希望的観測がマンチェスター・シティの中にはあった。

気候以外の面では、メッシの愛したカタルーニャと同じ条件がマンチェスターにはすべて揃っていた。熱意に合ったチーム編成、期待に沿えるだけの年俸…そして最も重要なのが、自身の才能を最大限に引き出してくれる監督だ。

プレッシャーが少ない環境という魅力もある。ペップ・グアルディオラが街の中心でディナーをしていても、サポーターに囲まれることがないような環境なのだ。

Despedida de Messi 08082021Getty

だが、涙に暮れた記者会見によって、メッシがバルサを離れることが確実になっても、すでにシティは6度のバロンドール受賞者と契約することに興味を持たなかった。メッシの獲得に奔走する代わりに、ジャック・グリーリッシュの獲得のために英国新記録となる1億ポンド(約152億円)を投じたのである。

セルヒオ・アグエロが逆にカンプ・ノウに移籍した影響で空き番号になった10番は他の誰かに譲ることなく、加入したばかりのグリーリッシュに引き継がれた。グリーリッシュ本人にとってもこれは驚きだっただろう。

シティは究極のスーパースターと契約するという夢を諦め、注意深く練り上げた今夏のプランを実行することに専念したのだ。

■なぜメッシ獲りに動かなかったか?

Jack Grealish Manchester City debut 2021(C)Getty Images

「グリーリッシュ獲得には自信があったし、レオがバルサに残るという確信もあった。今の私たちは、彼のことは考えていない」

グアルディオラは今シーズン最初の記者会見でこう明かした。

1年前は状況が違った。メッシはバルサを去りたいと思っていたし、それが実現に近づいていた。そして、シティは争奪戦レースの最右翼にいた。

だが、メッシは『Goal』のインタビューで残留を表明。当時の会長であったジョゼップ・マリア・バルトメウに裏切られたという気持ちがある一方で、13歳から所属しているクラブと法的闘争をしたくないという理由からカンプ・ノウに残ることになると打ち明けたのだ。

しかし、今回は逆だった。メッシは残留したいと思っていたため、バルサの財政に問題があり契約が締結できないと知ってショックを受けていた。同時に、新天地を探す必要性が生まれた。パリ・サンジェルマンの動きは速かったが、イングランドから争奪戦に加わるクラブは現れなかった。

2020年冬に話を戻すと、シティは34歳のスーパースターの獲得について熟慮していた。物議を醸した契約の終了が残り半年に迫っており、メッシの将来は不透明になっていたからだ。

だが、会長選がバルサの状況を一変させた。最も成功を収めていた時期にクラブを率いていたジョアン・ラポルタが会員の投票により選出され、ファンと選手に新たな希望が生まれることとなった。

メッシも自ら投票を行った。これは、自分が選んだ候補者が会長になった場合、クラブに残るという意思表示になった。

この時点で、バルサの元幹部であるフェラン・ソリアーノとチキ・ベギリスタインを含むシティの幹部は、メッシがトップレベルのキャリアをカタルーニャで終えるものと信じて疑わなかった。メッシサイドからの動きもなかった。

そこで、重要な夏の移籍ウィンドーを控えたシティは、メッシにとってのオプションとなることをやめ、他の候補選手の獲得に集中することにしたのだった。

■未来に目を向けたチーム作り

Pep GuardiolaGetty

アグエロは10年間に渡って目覚ましい活躍を遂げた、クラブ史上最も偉大なストライカーだったが、3月末にクラブを離れることを公表している。

昨シーズンのアグエロは怪我と病気に泣かされたが、新しいFWを加えることはチームにとって最優先事項だ。それが簡単ではないことはシティも分かっている。

アグエロは過去9シーズンのうち8シーズンで23ゴール以上を記録している。昨シーズンのシティは偽9番のシステムを駆使してリーグタイトルを獲得したが、グアルディオラ就任以来最低の得点数に終わっている。

だが、2021-22シーズンのスカッドにワールドクラスのセンターFWを加えることができないままウィンドーが閉じてしまいそうな状況だ。これはシティにとって不安の種だ。

アーリンク・ハーランドの獲得を目指していたが、異常に高い移籍金を払わない限り交渉に応じないとボルシア・ドルトムントが発表し、シティは手を引くことに。トッテナムからハリー・ケインを獲得しようと躍起になっているが、現時点で難航しているようだ。

たしかに、30得点以上できて、前線をけん引できるセンターフォワードの補強は最重要事項だった。メッシはいずれの条件も満たす選手であり、少なくとも移籍金という観点で支障をきたす存在ではなかったが、グアルディオラは未来に目を向けていた。そこでチームに加えたのが、昨季からペップが熱視線を送っていたグリーリッシュだ。

他にも、ケヴィン・デ・ブライネ、フィル・フォーデン、イルカイ・ギュンドアン、ラヒーム・スターリングなどのテクニシャンをシティは抱えている。彼らの状態もベストに近い。グリーリッシュ、フォーデンはまさにスーパースターになる階段を駆け上っており、ギュンドアンやスターリングに関してもキャリアのピークに差し掛かっている。そしてデ・ブライネは悲願のCL制覇に燃えていることだろう。

このように考えれば、メッシはチームに果たして必要なのかという疑念さえ生まれてくる。才能は知っての通りだが、年齢は34歳。数年の活躍に疑いはないが、将来的なプランを考えたときにメッシがチームの成長を阻害させてしまうことも考えられる。

メッシ獲得の可能性について、CEOのソリアーノ氏は2016年に「ドアは開いている」と言っていたが、本当に移籍の可能性が出てきた段階になっても門戸を開くことはなかった。シティにとってメッシとの契約はずっと夢だったが、実現するにはあまり良いタイミングではなかったということだ。

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