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DAZNマネー、外国籍助っ人の存在、明暗分かれた監督人事。Jリーグを拮抗させた3つの要因

 横浜F・マリノスの優勝で幕を閉じた2019シーズンの明治安田生命J1リーグ。今季は昨年以上に優勝と残留の争いが激化し、最終節まで手に汗握る攻防が繰り広げられた。かつては勢力図がくっきり分かれていたが、近年では上位と下位の差が縮まる混戦模様となっている。なぜ、Jリーグは拮抗し始めたのか。スポーツライターの藤江直人氏はその理由として3つのポイントを挙げている。

■継続路線を貫くクラブの躍進

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▲試合後に会話するFC東京の長谷川監督と横浜FMのポステコグルー監督

 最終節の全9会場に詰めかけた観客数は、27年目を迎えたJリーグの歴史上で2番目に多い25万8915人に達した。横浜F・マリノスの15年ぶりとなる優勝で幕を閉じた2019シーズンの明治安田生命J1リーグは、覇権および残留を争う戦いがさらに拮抗し、多くのファン・サポーターの関心を引き寄せた。

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 首位のマリノスを勝ち点3差で追う、2位・FC東京との直接対決となった日産スタジアムには6万3854人が集結。Jリーグの主催試合では歴代最多となるファン・サポーターが、2006シーズンの浦和レッズvsガンバ大阪以来となる、最終節での頂上決戦に熱い視線を送った。

 今シーズンは序盤戦からFC東京が首位を快走するも、中盤戦から鹿島アントラーズとマリノスが猛追を開始。一時はアントラーズが奪首するスリリングな展開から、2節を残した土壇場で初めて首位に浮上したマリノスが、怒涛の7連勝と勢いをさらに加速させてフィニッシュした。

 一方で残留争いに目を向ければ、最終節を迎えた段階で清水エスパルス、名古屋グランパス、浦和レッズ、サガン鳥栖、湘南ベルマーレの5チームが、J1参入プレーオフに回る16位になる可能性を残していた。最終的には試合終了間際に痛恨の失点を喫したベルマーレが、16位になっている。

 優勝争いと残留争いで二極化した大混戦を注視すると、ある共通点を見出すことができる。前者ではマリノスのアンジェ・ポステコグルー監督が、FC東京は長谷川健太監督がともに昨シーズンから指揮を執り、ブレないスタイルのもとで戦ってきた。アントラーズは黎明期から“ジーコ・スピリット”という普遍的な土台の上に、時々の監督が彩りを加える戦い方を一貫して変えていない。

 ひるがえって後者を強いられた5チームは、いずれもシーズン途中で監督が交代している。最終節を残してJ2への自動降格が決まり、クラブ史上初の最下位でシーズンを終えたジュビロ磐田に至っては、監督代行を含めて実に4人の指揮官が采配を振るっている。

 シーズンは9カ月あまりにおよぶ長丁場だが、試合数そのものは34試合。一度リズムを崩せば建て直す作業が容易ではない現実が残留争いには反映され、逆に考えればフロントやファン・サポーターを含めた、クラブに関わる全員が共有できる哲学やイズムの有無が順位を左右することがわかる。

 昇格したシーズンで大分トリニータを9位に躍進させ、8日のJリーグアウォーズでJ1優秀監督賞を受賞した片野坂知宏監督は2016シーズンから指揮を執っている。JリーグYBCルヴァンカップ決勝で惜しくもクラブ史上における初タイトルを逃した北海道コンサドーレ札幌も、ミシャの愛称で知られるミハイロ・ペトロヴィッチ監督のもとで、新たな道を踏み出してから2年目になる。

■外国籍選手の存在感

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▲ティーラトンは最終節でも貴重な先制点を記録

 継続は力なり、という大原則を踏まえれば、昨シーズンから延べ4人の監督が指揮を執ったヴィッセル神戸が迷走した理由もうなずける。最終的に8位に食い込めたのは、昨夏からプレーするMFアンドレス・イニエスタ、今シーズン限りで引退するFWダビド・ビジャの元スペイン代表コンビをはじめとする、超大物と呼ばれる外国籍選手の存在および活躍に負う部分も大きい。

 昨シーズンは残留争いを強いられたマリノスが戴冠した理由は、ポステコグルー監督が掲げる、リスクを冒してでも主導権を握り続ける攻撃的なスタイルが継続されたことに加えてもうひとつある。ネームバリューこそイニエスタや8月に引退したフェルナンド・トーレス(サガン鳥栖)らに及ばないものの、ハードワークを惜しまず、チームのために献身的にプレーする外国籍選手の存在だ。

 センターバックのチアゴ・マルチンス、日本代表に選出された仲川輝人と得点王を分け合ったMFマルコス・ジュニオールはベストイレブンに選出された。夏場にエジガル・ジュニオが故障で長期離脱を強いられると、すぐにエリキをリストアップ。期限付き移籍で加入した25歳のブラジル人ストライカーは後半戦だけで8ゴールを挙げ、エジガル・ジュニオの穴を埋めてあまりある活躍を演じた。

 さらに、指揮官が掲げる戦術、偽サイドバックを機能させるうえで、タイ代表のティーラトンが左サイドバックとしてフィットしたことも大きい。FC東京との最終節では敵陣の中央にポジションを移す、まさに偽サイドバックと化して先制点をゲット。試合の流れをマリノスに引き寄せた。

 「僕にとってもチームにとっても非常に嬉しいこと。僕一人の力ではなく、家族を含めた周りの人たちがサポートしてくれたおかげだと思う」

 自宅で試合や練習の映像を何度も見直し、独特の動きを求められるマリノスの戦術を覚えた真面目さが実を結んだ。タイ人選手として初めてとなるタイトルを獲得し、試合後に感謝の思いで声を弾ませたティーラトンの姿は母国にも届けられ、マリノスのユニフォームに身を包んだファンたちを狂喜乱舞させている。Jリーグを東南アジアへ浸透させる意味でも、大きな役割を果たしている。

 マリノスの場合は2014年5月から資本参加しているシティ・フットボール・グループとのシナジー効果が大きく増し、緻密かつ膨大なスカウト網のなかから戦術的にも、そして性格的にもフィットする外国籍選手を獲得していることも見逃せない。そして、期限付き移籍で加入しているチアゴ・マルチンスやティーラトンを、完全移籍で獲得する動きがあるとすでに報じられている。

■DAZNマネーの象徴「理念強化配分金」

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▲横浜FMの黒澤社長

 そして、完全移籍の際に必要となる違約金の原資は、優勝チームを含めた上位にJリーグから支給される「理念強化配分金」となる。優勝チームには翌年からの3年間で15億5000万円が支給され、そこに優勝賞金の3億5000万円、J1均等分配金の3億円が加わる。

 インターネットの有料動画配信サービス、DAZN(ダゾーン)を配信するイギリスのパフォームグループと、10年総額2100億円の大型契約がスタートしたのは2017シーズン。いわゆるDAZN(ダゾーン)マネーの象徴となる理念強化配分金の使途は、日本サッカーの水準向上および普及促進、若年層からの一貫した選手育成、フットボールの環境整備などと定められている。

 理念強化配分金制度がスタートして以降、J1を連覇した川崎フロンターレは、クラブハウスなどの環境整備にまず着手した。一方で来年以降の理念強化配分金の使途を問われた、横浜マリノス株式会社の黒澤良二代表取締役社長は「できる限りチーム強化にあてたい」と明言している。

 常勝軍団アントラーズの強化の最高責任者を1990年代から務めている鈴木満常務取締役は、DAZNとJリーグの契約がスタートすることを受けてこんな言葉を残していた。

 「次のシーズンに勝って勝ち組に入るのとそうじゃないのとでは、どんどん差がついていく。その意味でも来年は少し無理をしてでも競争を激しくするような補強をして、上手く戦えば勝てるというチームから、力で勝ち取れるチームを目指していかなければいけない」

 言うまでもなく理念強化配分金を踏まえたビジョンとなる。マリノスを介して、いよいよ理念強化配分金が強化へも投資される来シーズン。継続性をもったチームビジョンの有無を大前提としながら、J1を戦う18クラブのなかで勝ち組とそれ以外の境界線が、明確に引かれる年になるかもしれない。

文=藤江直人

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「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です

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