ランパードはチェルシーの急激な衰退を説明はできても、阻止することはできない。それを証明した。
ランパードはクラブのアイコンだ。だが、成功をもたらす相応しい人物だとオーナーを納得させるために、少なくとも今シーズンは明確な改善の兆しを見せなければならなかった。
彼は間違いなく世界最高のアカデミーを持ち、ティモ・ヴェルナーやカイ・ハヴェルツ、ハキム・ツィエクら刺激的な才能を獲得するために2億2000万ポンドを許された。ランパードにとって、昨季は補強禁止ながらチャンピオンズリーグ出場権を獲得し、それのご褒美のような支出だった。だが、今の彼は強烈なプレッシャーにさらされている。そして、本人も理解している。
就任して1年半しか経っていないが、レトリックは劇的な変化を迎えた。彼は忍耐を嘆願し、ファンへ期待の再調整を求めている。だが、ランパードが話す度、チェルシーが再びメジャータイトルに挑戦する日々が先送りになっている。
そんな話、チェルシーでは通用しないだろう。成功のために2年以上与えられる監督はほとんどいない。
■履歴書はない
(C)Getty Imagesもちろん、ユルゲンクロップは失敗が続いたスーパークラブで成功するための青写真だ。ドイツ人指揮官は(就任後プレミアリーグで)8位、4位、4位と、メジャータイトル獲得までに4フルシーズンを必要とした。
しかし、彼にはオーナーの信頼を正当化するだけの履歴書があった。旅路は長く、途中で失敗もあったが、正しい方向に向かっていることは常に明らかで、クラブすべての人間が彼を信じていることも明らかだった。
チェルシーは、彼らの舞台裏の構造を信じている。彼らは自分たちのアカデミーが素晴らしいと知っているし、リクルート部門もこれまで以上に成功していると理解している。
だが、現在はランパードに対する疑念も理解している。上層部は指揮官について我慢したいが、19日のレスター戦(0-2)のようなパフォーマンスがそれを難しくしている。レスターに負けること自体が屈辱ではない。彼らはリーグ首位に立ったチームだ。だが、トップチームへの敗北の仕方が懸念を募らせる原因だ。今シーズン、トップ6に未だ勝っていない。そして、おもちゃのように扱われた試合もある。
そしてスタッツも、良い読み物にはならない。ロマン・アブラモヴィッチがオーナーに就任後、10位に終わったシーズンを除き、19試合終了時点での勝ち点は最低だ(29)。さらに、1992年のプレミアリーグ発足以降の監督としては、アウェイゲームでの失点数がワーストでもある。
■永遠のレジェンドだが…
Getty唯一ポジティブな点は、このような凋落の中でも、首位との勝ち点差が「9」に留まっていること。だが、現在8位の彼らには、まだまだ多くの試合が待ち受けている。
チェルシーは、今からでも前へ進んでいけるかもしれない。だが、新しい監督がいれば、それは簡単なのかもしれない。トーマス・トゥヘル、ユリアン・ナーゲルスマン、ラルフ・ハーゼンヒュットル、マッシリミアーノ・アッレグリ、そしてブレンダン・ロジャース……。多くの候補が挙がっている。そして、何人かはすでにスタンフォード・ブリッジのシートを狙っている。
ランパードは、永遠にチェルシーのレジェンドだ――しかし、長く監督でいることはないのかもしれない。
取材・文=ニザール・キンスラ(Nizaar Kinsella)/チェルシー『Goal番記者』
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