2021-01-28-chelsea(C)Getty Images

チェルシーでランパード政権はなぜ崩壊したか?補強失敗と選手との不和…

チェルシーのレジェンド、フランク・ランパードをもってしてもロマン・アブラモビッチによる粛清の鉈からは逃れることができなかった。

プレミアリーグで直近8試合のうち5試合に敗れたことで、スタンフォード・ブリッジでのランパード政権はついに終焉を迎えた。自身が最多ゴール記録を保持するクラブの指揮を任され、18か月が経ったところだった。

ニュース自体は月曜日の朝伝えられたものだが、そのもっと前から検討されていた。

FAカップでルートン・タウンに勝利はしたものの、その前にレスター・シティに0-2と敗れていたことがアブラモビッチにとって最後の一撃となった格好だ。

「クラブの期待にパフォーマンスで応えることができなかった。クラブは中位にまで落ち、状況を改善する明確な方針がない状態だ」

チェルシーの公式声明にはこのように記されている。ブルーズのロシア人オーナーと、ダイレクターであるマリーナ・グラノフスカイア、テクニカルダイレクター兼パフォーマンスダイレクターであるペトル・チェフがランパードとの関係を解消する決断に至った理由を説明するものであった。

■世界有数のスカッドを活かせず

Werner Lampard Havertz Chelsea GFXGetty/Goal

経験の浅いチームメンバーと、高額な移籍金で夏に獲得した新メンバーとの融合をはかる時間は確かに必要だった。ランパードのこの言い分に誤りはなかったが、チームはアブラモビッチ政権下に指揮を執った監督の中で最低平均の勝ち点(1試合平均1.67)を記録してしまったのだ。

ランパードの在任期間中、新加入選手たちの実力を最大限に引き出せなかったことが記憶に残るだろう。ドイツ人の2人、ティモ・ヴェルナーとカイ・ハヴェルツは特に西ロンドンにやってきて以来苦しみ続けていた。

この2人は2億2000万ポンド(約308億円)を注ぎ込んで獲得した選手たちの一部だ。だが、ランパードは彼らに最も合った役割を、自身の好む4-3-3の陣形の中で見つけようと最後まで四苦八苦した。

新戦力について議論された結果、ランパードに承認されて加わった2人だったが、もしこの42歳が再びやり直すせるのなら、自身の欲しい選手を獲得できるよう、もっと積極的に意見したかったと思っているかもしれない。

第一にランパードは、就任初年度の成功要因であった、イングランド人選手をチームの主軸に据えたいと思っていた。しかし、指揮官が契約したいと主張していたホームグロウン選手の中で、実際にチームに組み込めたのはベン・チルウェルだけにとどまった。

ウェスト・ハムMFデクラン・ライス、ボルシア・ドルトムントのウィンガー、ジェイドン・サンチョ、ブライトンDFベン・ホワイトらは高額な移籍金を理由にクラブから許可が下りず。代わりにクラブはヴェルナーをRBライプツィヒから、そしてハキム・ツィエクをアヤックスから獲得してきた。

ハヴェルツに関してもこの世代ではトップクラスの有望株。また、ブルーズが大陸中に張り巡らせた人員を活用したことで、移籍金のつかないチアゴ・シウバをパリ・サンジェルマンから期限すれすれで迎え入れることができた。

確かに彼らは獲得を希望した選手ではなかったが、チェルシーの戦力は申し分のないものだった。彼らを融合させることができなかったのはランパードの落ち度のひとつだろう。

■選手との不和

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だぶついたスカッドは不和をも巻き起こした。

ランパードは敗戦の責任を選手になすりつけていると感じた者もいれば、出場時間が足りないと考え、声を荒げる者もいた。

マルコス・アロンソとランパードはウェスト・ブロムウィッチ戦の3-3での引き分けた後に口論になった。一方、エメルソン・パルミエリ、アントニオ・リュディガー、フィカヨ・トモリのような選手が、夏に移籍が決まらなかったことでチームから外されつつあったことも摩擦の引き金になった。

そうした状況でクラブには多数のバックアッパーが控える形に。3人の左サイドバック、5人のセンターバックがスカッドにおり、さらには世界最高額のゴールキーパーが控えにいる。この状況で全員がハッピーになることはほぼ不可能だ。

在任最後の週には、クラブの中心選手の中には自身の不調をランパードのせいにする者もいたという。近い情報筋によれば、ロッカールームでは「異様な雰囲気」が漂っていたそうだ。

Thoma Tuchel, ChelseaGetty

その雰囲気の中、トゥヘルはやってきた。27日に迎えた初陣のウォルヴァーハンプトン戦では、820本のパスと78.9%のボール保持率を記録。新指揮官の初戦としては最多の数字をマークし、“劇的変化”を印象づけた。

だが、彼に課せられた使命は、これまでともに戦ったチアゴ・シウバやクリスチャン・プリシッチと、低調の続く同郷のヴェルナーとハヴェルツを融合することだ。同時にランパードに忠誠を尽くした選手もまとめなければならない。

元パリ・サンジェルマン監督はそういった選手たちに良く思われなければいけないだけでなく、クラブのアイドルがポストから引きずり降ろされる一部始終を見たサポーターに受け入れてもらう必要がある。

■苦い後味残した解任

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ここ最近、チェルシー最大の専門誌『CFC UK』は、クラブに対してランパードに猶予を与えるよう要求する声明を出している。また、「We Are The Shed」と呼ばれるサポーターグループは、スタンフォード・ブリッジに横断幕を掲出した。「ランパードを俺たちは信じる」と書かれていた。

ファンが反発することを見越してだろうか、アブラモビッチはランパードの解雇に合わせて前代未聞の声明を発表した。レジェンドの立場をクラブは理解している、ということを再確認する内容だった。

「クラブに関わる全員、役員、そして個人を代表して、フランクの監督としての仕事に感謝するとともに、彼の今後の成功を祈りたい。彼はこの偉大なクラブにとって重要な象徴的存在だ。彼の築いた地位は消えることはない。いつでもまたスタンフォード・ブリッジに温かく迎え入れよう」

スタジアムのファンは、ランパードの解任に対してどういうリアクションを取ればいいか、誰も分からなかった。しかし、彼がクラブから離れたという事実は多くのサポーターに苦い後味を残した。それがアブラモビッチの介入のせいであったとしてもだ。

ランパードは解任後「長い間、私の人生の大部分を占めてきたクラブであるチェルシーを指揮することは、大きな特権であり、名誉なことだった」とコメントし、以下のように続けている。

「まず、この1年半の間に受けた信じられないほどのサポートにファンの皆さんに感謝したい。それが私にとって何を意味するのかを知っていてほしい。私がこの役割を引き受けたとき、クラブにとっては困難な時期でもあった。私は、私たちが成し遂げた成果を誇りに思っているし、トップチームにステップアップし、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたアカデミー選手たちを誇りに思う。彼らはクラブの未来を担っている。私は今シーズン、クラブを前進させ、次のレベルに持っていく時間がなかったことを残念に思う。チームとクラブの今後の成功を祈っている」

トゥヘルならサポーターとクラブを立ち直らせることができるかもしれない。だが、ランパード同様、“次のレベルに持っていく時間”はそれほど与えられないだろう。前任者が続投してもできなかったであろうことを成し遂げたときにのみ、次のフェーズへ進むことを許される。

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