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絶望から栄光へ。グアルディオラはどのようにしてマンチェスター・Cを王者へと導いたのか?

マンチェスター・シティはここ4年間で3度目のプレミアリーグ制覇を決めた。

だが、ここまで至る道のりは決して平坦なものなどではなかった。ジョゼップ・グアルディオラ監督がこれだけの短期間でチームを復活させ、王座奪還へと導いたという事実は特筆すべきことだ。

Pep Guardiola Man City 2020-21Getty Images

昨年12月、マンチェスター・Cは優勝争いという目標を見失っていた。グアルディオラ監督はコーチのフアン・リージョ、ロドルフォ・ボレル、マヌエル・エスティアルテともに、フットボール・ディレクターのアイトール・ベギリスタインとの会議を行わなければならなかった。

当時はリーグ戦12試合で半数も勝つことができず、チャンピオンズリーグ出場圏外に。マンチェスター・ユナイテッドと陰鬱で生気のないスコアレスドローだった次の試合では、2部降格圏内のウェスト・ブロムウィッチと1-1の引き分けに終わっていた。

本来の姿を見失っていたチームに、グアルディオラは「基本に立ち戻るべきだ」と伝えた。それまでの数シーズンで成功していた、4-3-3のシステムで、ボールを支配し、攻撃的なフットボールを展開しようとしたのだ。

すると、マンチェスター・Cはプレミアリーグ15試合を連勝し、全公式戦で28試合負けなしを達成。最終的には、レスター・シティがマンチェスター・Uを2-1で下したおかげで、3試合を残してリーグ優勝を決めたのだった。

「あのときから我々はチームの立て直し、再構築を開始した」とグアルディオラ監督は言う。

「我々は過去に成功したポジショナル・プレーに立ち戻った。それはボールを素早く動かし、もっとパスを増やし、ポジショニングをしっかりして無駄な走りをしないというものだ」

■契機はディアス加入

Jamie Vardy Leicester vs Man City Premier League 2020-21Getty Images

昨シーズン、マンチェスター・Cはリヴァプールの独走に全くついていけなかった。リーグ戦を諦め、焦点をカップ戦に切り替えて手の届くFAカップとチャンピオンズリーグの2冠の可能性に懸けていた。

だが、どちらも勝てなかった。

特にチャンピオンズリーグで、リヨンに負けたショックはとてつもなく大きかったはずだ。準々決勝敗退で茫然自失になってから24時間後、選手たちは、ポルトガルの贅沢なキャンプ地を去っていった。夏中、徹底的な反省をしたり脆弱な信念を立て直したりする時間はなかった。

2か月があっという間に過ぎ、マンチェスター・Cは準備不足と修正の時間がないまま今季を迎えることになった。すると、当然のごとく序盤は出遅れる。

ホーム開幕戦でレスターを相手に2-5と敗れたのは印象的な一戦だった。高い最終ラインを何度も破られ、ジェイミー・ヴァーディのスピードによってずたずたにされたのだ。

ruben_dias(C)Getty Images

そこでベンフィカから6200万ポンド(約95億円)で迎え入れたのがルベン・ディアスだった。

そのわずか4日後、リーズ戦でディアスは先発すると、すぐに大きなインパクトを残した。それまで12か月以上チームに欠けていた、勇気あるプレーとリーダーシップをもたらしたのである。

当初ディアスはアイメリク・ラポルテとコンビを組んでいたが、復調したジョン・ストーンズと見事にマッチし、これがマンチェスター・Cのシーズンの巻き返しに役立つこととなる。

ストーンズは辛抱強くチャンスを待つことを余儀なくされていたが、2020-21シーズンになってそのチャンスが巡ってくると、両手でがっちりとつかんでディアスとのコンビが完璧であることを証明してみせた。ストーンズはディアスについて「母国を離れて新しいクラブに加入し、すぐに今までどおりのプレーができる。信頼に値する選手だ」と全幅の信頼を置いている。

2人はコンビを組んだ最初の13試合でわずか1失点に抑え、逆に2人で5回もゴールネットを揺らしている。ディアスの統率力と決断力がバックラインの意思統一を容易にし、リスクを冒した攻撃に必要な安定感をマンチェスター・Cにもたらしたのだった。

■新主将がまとめあげた方法

Fernandinho

ただし、指揮官が必要とするリーダーシップと決断力を持っていたのは何もディアスだけではない。

昨シーズン末まで、マンチェスター・Cのキャプテンはダビド・シルバだった。元スペイン代表のシルバは普段寡黙な性格ゆえにパフォーマンスで仲間を鼓舞し、チームをまとめあげていた。

今季からキャプテンマークを受け継いだのはベテランのフェルナンジーニョ。このブラジル代表MFはシーズン当初、シルバとは異なるアプローチをとり、チームメイトと直接対話を行っていた。フェルナンジーニョは『ザ・プレイヤーズ・トリビュート』の中でこう明かしている

「全員が集まれるときには、キャプテンとしてみんなにオープンに話をした。練習でやったことが、後で試合に出るんだとね。とても率直で、正直なことだ。僕から聞いた後、みんなは自分の心に言い聞かせていた。『僕たちは変わらなければならない』とね。みんながすでにわかっていたことだけど、それを誰かにはっきり言われることが必要だった。まだシーズンの途中で、僕はここから事態を改善できると思っていたし、手をこまねいていることはできなかったんだ」

この言葉通り、フェルナンジーニョはチームでのミーティングを2度実施。その成果が最も表れたのは、1月3日、チェルシーに快勝した試合だろう。これによりチームの思考がポジティブとなり、自分たちにはトロフィーを獲得できる力があると再び自信を持てるようになったのだった。

■コロナ禍の中で最高のチームを形成

Pep GuardiolaGetty/GoalAr

グアルディオラ監督はバルセロナでもバイエルン・ミュンヘンでも、そしてマンチェスター・シティでもタイトルを獲得してきた。だが、今回の優勝についてペップは「このシーズンとタイトルは他に類を見ないものだった。最も難しいものだ」と語る。

「私たちは、このシーズンの優勝をずっと覚えているだろう。私はこのチームの監督であること、そしてこの選手たちを誇りに思う。今シーズン、様々な制約や困難に直面しながらも、このように一貫性を保つことができたのは素晴らしいことで、絶え間ない努力ができた。毎日、成功のために戦い、常に上を目指そうとしている。彼らはとても、とてもたくましかった」

確かに、コロナ禍のシーズンはすべてが異例だった。

チームでのミーティングやトレーニングは禁止され、試合のスケジュールも滅茶苦茶に。チームは週に2試合戦わなければならず、さらにパンデミックによる中断で、クリスマスが終わってすぐにトレーニング施設が閉鎖された。こうしたすべてが、グアルディオラ監督が立ち向かうべき“困難”に加わっていたのだ。

だが、グアルディオラ監督は、チームを今後何年も優勝が望めるようにするスタートが切れただけでなく、ストライカーがいなくても機能するような新たな素晴らしいチームを作った。つまり、セルヒオ・アグエロやガブリエウ・ジェズスを欠いても、大きな問題にはならなかったのである。

さらに、グアルディオラ監督は、他のアタッカーの多くをベストコンディションに導いた。

ケヴィン・デ・ブライネ、リヤド・マフレズ、ベルナルド・シウバは進んで新たな責任を負い、イルカイ・ギュンドアンは今シーズン、自己最多の得点数を記録。マンチェスター・Cの監督の頭脳としてピッチで躍動した。その間、フィル・フォーデンは、将来性豊かな若手から主要な先発メンバーへと躍進し、ラヒーム・スターリングをレギュラーから追い落とすほど、コンスタントに活躍している。

今シーズンのマンチェスター・Cはチャンピオンズリーグの決勝でさらに素晴らしい栄誉を手に入れられる可能性がある。獲得できればクラブ史上初の快挙であり、グアルディオラ監督の名前はこの先もずっと歴史に刻まれることとなるだろう。

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