試合終了の笛が鳴った瞬間、彼はシャツをギュッと力任せに引っ張った。溢れ出しそうな悔しさ、歯痒さ、そして不甲斐なさ。その行き場のない感情を、必死に押し殺そうとしている姿が印象的だった。
ブンデスリーガ第20節ケルン戦。今冬の移籍市場でヴォルフスブルクに加入し、前節のマインツ戦で初出場を飾った塩貝健人は、1点ビハインドを追う後半のスタートから投入された。起用されたのは、本来の最前線ではなく「10番」のポジション(トップ下)。だが、役割が何であれ、彼がやるべきことは明確だった。「チームを活性化させる」。その言葉通り、投入直後には鋭い寄せでボールを奪取。そこから一枚剥がしてラストパスを狙うなど、停滞していたチームに火をつけた。
後半、ヴォルフスブルクのプレースピードが一段上がったのは、間違いなく塩貝が起点となったからだ。しかし、ストライカーを自認する男にとって、プロセスの充実は求める”結果”の代わりにはならない。88分のミドルシュートは力んで枠を越え、アディショナルタイムに持ち前のパワーを用いて前を向いた決定機も、股下を狙ったシュートはGKの壁を破れなかった。
プレー全体を振り返れば、決して悪い内容ではなかった。それでも、この状況でゴールを決められるかどうかでストライカーとしての価値は変わってくる。
「攻守ともに慣れないポジションだったけど、試合に関わることはできていた。あとは点を取るところ。終盤にあったシュートチャンスは、何回も来るわけではない。簡単なシュートではなかったですけど、ああいうのをしっかりモノにできたら、また一個上のステージへ行けると思う。問題なくやれるなという感覚はあるので、あとは結果だけついてくればという風に思います」
今回の移籍を、塩貝は「本当にワールドカップだけを意識した移籍だった」と言い切る。だからこそ、滑り込みのメンバー入りへ一分一秒を争う状況であることを、彼は誰よりも自覚している。
「一回も招集歴がないので、もう誰も文句が言えないぐらい結果を残さないといけない。同世代の選手が何人も(日本代表に)入っていて、すごく悔しさや焦りはあります。でも、自分も結果は出してきた。ドイツでも変わらず結果を出していければ絶対にチャンスが来ると思う。本当に、あとはゴールだけです」
ドイツの地でも自身の武器である走力や守備面での力強さが通用することは証明した。残されたピースは、目に見える数字のみ。大逆転の代表入りへ、塩貝健人の”結果”を求める挑戦はここからが本番だ。
取材・文=林遼平


