試合終了のホイッスルが鳴り響いた瞬間、8万人以上を集めたジグナル・イドゥナ・パルクは爆発的な歓喜に包まれた。土壇場の勝ち越しゴールは、ドルトムントのサポーターにとって、これ以上ないドラマチックな幕切れだった。
だが、その喧騒の渦中で、ピッチ上に目を向けると、仰向けになり、動けずにいる男がいた。藤田譲瑠チマだ。前節のヴォルフスブルク戦に続き、またしても終了間際の失点で連敗。今季の新加入選手ながら、すでにザンクトパウリの心臓を担う男が、その責任を一身に背負っているのは明らかだった。デビュー戦を終えたばかりの安藤智哉に手を貸され、ようやく立ち上がっても、藤田はしばらくその場を動こうとはしなかった。
ミックスゾーンに現れた藤田は、現地メディアの問いかけに対し、流暢な英語で毅然と答えた。
「僕たちは勝ち点1を得る価値があったと思う。でも、立ち直らないといけない。次の試合が僕たちにとって最も重要な試合。そこに向けて準備するだけです」
確かにゲームを振り返れば、内容は決して悲観するものではなかった。この試合のために用意してきた守備戦術はドルトムントを苦しめ、攻撃でも鋭いカウンターを中心に好機を作った。だからこそ、藤田はあと一歩を埋めるための細かい部分に目を向けている。
「(新年を迎えて以降)今のところは戦い方がはっきりしている。あとは勝ち点がついてくるかどうか。でも、こういうところを落としていたら難しい。本当に小さいところで失点してしまっている。今日もそうですけど、そこはやっぱり直していかないといけないと思います」
敗戦の痛みを引きずっている暇はない。次節、ザンクトパウリにとって「最も重要な」ハンブルガーSVとのダービーマッチが控えている。試合後、誰よりもサポーターの近くまで歩み寄り、その声を真っ向から受け止めていた藤田の視線は、すでに前を向いていた。
「どんな時でもサポートしてくれる、すごく熱いサポーターたちなんです。本当に彼らに勝利を届けられるようにやりたい。次はダービー、頑張ります」
熱いサポーターと、歓喜の瞬間を共有するために。ドルトムントの夜に味わった悔しさは、次戦の歓喜を掴み取るためのエネルギーへと変わっている。藤田は確かな決意を胸にスタジアムを後にした。



