Taichi_fukui_20231201(C)GOAL

福井太智が名門バイエルンで燃やす負けん気。同世代がトップ昇格も「自分の方が良い」【若武者たちの現在地】

 バイエルン・ミュンヘンでチャレンジを続ける福井太智。パリ五輪世代でも頭角を現しつつあり、将来の日本代表としても期待を背負う19歳MFは、名門クラブで強烈な個性を磨いている。【取材・文=藤丸リオ】

■9月にトップチームデビュー

 昨年の9月、サガン鳥栖から驚きの移籍が発表された。ユース時代から大きな注目を集めていた福井がバイエルンに完全移籍することになったのだ。18歳でビッグクラブへ移籍。「チャンスがある限り行くという判断をした」福井は、世界の有望なる若手たちと切磋琢磨する日々が始まった。

 今年の1月にドイツへ渡って以降、そこから福井は確かな道のりを歩んでいる。ドイツ4部相当のレギオナルリーガに在籍するバイエルンⅡからスタートした福井は、さっそくシーズン途中からコンスタントにプレー。そこで試合を追うごとに存在感を発揮し始めると、今季はトップにケガ人が続出したこともあり、9月15日のブンデスリーガ第4節レヴァークーゼン戦では初めてベンチ入りを果たした。

 また、その翌週に開催されたDFBポカール1回戦では、ドイツ代表の主軸であるヨシュア・キミッヒに代わって出場してトップデビュー。27分間の出場ではあったが、アンカーポジションでの巧みなボール捌きと、ボール奪取からゴールを狙うプレーで印象的なパフォーマンスを残すに至った。

 ただ、やはりトップで生き残ることはそう簡単ではない。そこから出場機会が増える可能性も考えられたが、リーグ戦でベンチに人数が足りていない試合がありながらも、福井はトップのメンバーに入ることができず。DFBポカール2回戦ではベンチ入りしたが、展開も相まって起用されることはなかった。

 11月10日のレギオナルリーガ第20節ヴュルツブルガー・キッカーズ戦ではフル出場を果たした。ダブルボランチの一角でプレーした福井は、後方でうまくボールを捌きながら機を見て前線に出ていきシュートを狙うなど、難しい展開の中でもチャンスを創出しようとチャレンジしていた。結果、ゲーム終盤に追いつかれて悔しい引き分けに終わったが、「もっとボールに絡みたいですけど、ゲーム展開的に持たれる中でディフェンスの時間が長くなってしまったところはある。そういう意味では割り切ってできたかなと思います」と一定の手応えを明かした。

■「“自分”を持つことが大事」

taichi-fukui(C)Taisei Iwamoto

 ドイツに来て1年も経たないうちにトップデビューを飾ったのは称賛されるべきことではある。だが、レギオナルリーガでまだ大きな結果を残せていない福井は、現状にまったく満足していないと前を向く。

「トップでデビューさせてもらいましたけど、もっとトップに絡んでいないといけない。レギオナルリーガの試合に出ている時点でまだまだだなと感じています。上がある限り、上を目指していきたいので満足はしていないです」

 19歳で世界トップクラスのチームに絡む。「日本人」の枠組みで考えれば、類を見ない成果を残していると言えるが、世界で見ればそうではない。今季、同世代の選手がすでに二人トップに昇格。さらに18歳のマティス・テルは今季公式戦で18試合6ゴール3アシストを記録しており、そういった選手たちとポジション争いをしていかなければいけないと考えれば立ち止まっているわけにはいかない。

「(トップに上がった選手たちには)負けられないですし、上がった選手より自分の方が良いと思っているところはある。そこは悔しいですけど、変に思わず、自分がやれるべきことをやるだけかなと思います」

 それでも、変に焦ることなく、しっかりと一歩一歩進んでいこうとしているのは福井の良さだろう。もともと「自分の成長に繋がるので、新しいことにチャレンジするのが僕自身好き」という性格もあって、これまでとは違った環境に適応しようと積極的に努力を続けている。難しいドイツ語も先生についてもらい定期的に勉強。「できることが増えると嬉しい」と話すように、最近は周りとのコミュニケーションも少しずつ増え、信頼も掴みやすくなってきている。

 加えて、トップチームの練習への参加も少しずつ増加。「世界のトップの選手がいるので毎練習が刺激ですし、練習に行った時にはその1回の練習で自分が何を得られるか、何を吸収できるかというのは常に意識しています」と語るように、さまざまな刺激を受ける日々を送っているようだ。

 そんな福井に聞いてみた。バイエルンの地で数カ月やってみて、ここから生き残っていく、のし上がるために必要なことは何なのかと。すると、目をギラつかせながら素直な思いを口にした。

「“自分”を持つことが大事だと思います。周りに左右されないこと。本当にこっちの選手は強い個性を持っているので、その個々の部分に負けないことが大事だと思う。自分に自信を持つことは意識しています」

 下を向いている時間はない。日々、トレーニングを重ねて自分の力に自信を持ってプレーする。そうすることで、福井はトップへの道を切り開こうとしている。

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