アーセナルが最後に試合をした日から102日――。これほどまでに“おなじみの”心配はないだろう。試合に先立ちメンバーが発表され、メスト・エジルの名前はなし。この瞬間から、悲惨な序盤戦を送ったウナイ・エメリ前体制を思い起こさせた。
ミケル・アルテタは、12月にペップ・グアルディオラの下を去って以降、初めてのエティハド・スタジアム凱旋だった。しかし彼は、チームが“おなじみの”スタイルで自爆する姿を見ていることしかできなかった。
■重なった不運と悪夢
Getty確かに不運は重なった。わずか5分でグラニト・ジャカをケガで失い、24分には上手く試合に入っていたパブロ・マリも負傷交代。そして、ここから恐怖のショーが始まる。その中心がダビド・ルイスだった。
このブラジル人DFはアルテタ曰く「ここ数週間で起きた様々なこと」を考慮してスタメンに入っておらず、マリとシュコドラン・ムスタフィのコンビでプランを組んでいた。だが本人も認めたように、立て続けの負傷でプランの変更を余儀なくされた。そしてD・ルイスは、マンチェスターで悪夢のような夜を過ごすことになる。
彼がピッチに立っていた時間はわずか25分間。前半終了間際にはラヒーム・スターリングの先制点につながるミスを犯し、後半開始早々にはペナルティエリア内でリヤド・マフレズを倒し、PKを献上。自身はこの決定機阻止で一発退場となった。『Opta』によれば、プレミアリーグの1試合で「失点につながるミス、PK献上、一発退場」を同時に行ったのは5年ぶりのこと。また1シーズンで4回目のPK献上も3シーズンぶりのことだ。
D・ルイスはこれから20日の第30節ブライトン戦、25日の第31節サウサンプトン戦を欠場することになる。そして、彼の契約は今季限りで満了（6月30日まで）だ。もし23日までに延長に至らなければ、今シーズンはもうプレーすることは許されない。だが今夜示したように、それは悪いことではないのかもしれない。アーセナルにはもっと必要だ。もっともっと必要なのだ。
■窮地
Getty Imagesこの敗戦は、アルテタのチームを窮地に立たせるものとなる。アーセナルがプレミアリーグで自分たちの上位クラブ相手にアウェイで最後に勝ってから5年、試合の立ち上がりは非常に明るいものがあったが、この不名誉な記録を終わらせるには十分ではない。アルテタはもっと多くのことを要求していたはずだ。
D・ルイスやニコラ・ペペ、アレクサンダル・ラカゼット、メスト・エジル（不思議なことに帯同すらしていない）をスタメンから外し、エディ・エンケティアやブカヨ・サカ、ジョー・ウィロック、マッテオ・グエンドウジといった若い力を試していた。序盤は彼らが活発に走り回り、シティのバックラインに問題を引き起こすことにも成功していた。
だが彼らが落ち着きを手にし、ケヴィン・デ・ブライネとダビド・シルバが中盤を支配し始めると、アーセナルには答えがなかった。守護神ベルント・レノが孤軍奮闘し、9本ものセーブを記録したが、彼がいなければスコアは見るも無残なものとなっていただろう。
2020年のリーグ戦で初黒星を喫したアーセナルは、勝ち点40のままとどまった。4位のチェルシーとは8ポイント差。残り9試合での逆転は非常に厳しい。チャンピオンズリーグ出場権を4季連続で逃すことになれば、ただでさえ新型コロナウイルスによる財政難に悩まされるクラブに追い打ちをかける事態となる。最悪の場合、補強できないままピエール＝エメリク・オーバメヤンやラカゼットを失うこともあり得る。土曜日のブライトン戦では、何が何でも勝ち点3が必要な状況だ。
今夜の惨劇を見れば、希望はすでに打ち砕かれているかもしれない。だが、しがみつくには1つだけポジティブなことがあるかもしれない。そう、D・ルイスはもういない。
取材・文＝チャールズ・ワッツ／Charles Watts（『Goal』アーセナル番記者）
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