アーセナル(C)Arsenal

ワクワクするアーセナルが帰ってきた:頼もしい若手とアルテタが見せる“今”と“未来

“今”

「我々の計画には時間が必要だ。忍耐が必要だ。だからこそ良い基盤を作るために決断を下さなければならない。このチームの未来のために」

メディア、ファン、OBからの重圧と批判が最高潮に達していた昨年9月頭、テクニカルディレクターを務めるエドゥは『スカイスポーツ』の独占インタビューでこう語った。

昨年夏の移籍市場、アーセナルはリーグ最高額となる総額1億6500万ユーロもの資金を投じ、6選手を加えた。いずれも23歳以下の若手たち。イングランドで名が知れていたのはベン・ホワイトやマルティン・ウーデゴールくらいなもので、冨安健洋を始め、多くがプレミアリーグでは「これからの選手」たちだった。エドゥの言葉からも、クラブのメッセージは明確だった。

では、“今”は?

厳しい時期だっただけに、当然のように批判の声は上がった。ご意見番、ギャリー・ネヴィルは「(補強戦略は)よくわからない。多分あるんだろうけど、はっきりしない。どこから来たのかわからないような選手がかなりいる」と指摘。1億6500万ユーロすべてを若手に投じる大胆な戦略は、ビッグクラブらしい補強を求めるファンやOB、そしてメディアからは懐疑的に見られていた。

しかし、自信と確信があったのだろう。上記のインタビューでエドゥは「言い訳はしないが、全選手が揃ってから判断してほしい」と語っている。「ミケル(アルテタ)とこのチームを信じている」と。

信頼

アーセナル1(C)Arsenal

そうして4カ月が経過した昨年末、アーセナルは前半戦を4位で折り返した。リーグ最年少の平均年齢24歳のチームは、エドゥの自信を裏付けるような結果を残し続けている。

最後方に構えるアーロン・ラムズデールはリーグ3位のクリーンシート数(8)を記録する他、チームメイトを鼓舞し続ける。冨安は前半戦のタックル数(27)、空中戦勝利数(43)、デュエル勝利数(87)、タッチ数(1085)がすべてチームトップ。最大限の献身を持って右サイドを不動のものとした。エースナンバーを背負うエミール・スミス=ロウは、チームトップのゴール関与数(8ゴール2アシスト)を記録。11月末までは出番に恵まれなかったガブリエウ・マルティネッリも、ニューカッスル戦で途中出場から美しい初ゴールを奪うとそこから6試合で4ゴール2アシスト。どんな試合でも溢れ出るハングリーさは貴重なエネルギーをもたらしている。そしてブカヨ・サカ。強烈な重圧にさらされたEURO2020決勝戦、PK失敗で人目をはばからず涙した20歳だが、今季は吹っ切れたように躍動。立ち姿からも自信が満ち溢れ、ボックス付近で前を向けばほぼ確実にチャンスを作ってくれる。彼も10ゴールに関与(6ゴール4アシスト)し、今やリーグ屈指のアタッカーと言ってもいいだろう。

勢いのあるプレーとそれを支える自信、強烈な野心を持つ若手選手たちによって、エドゥやアルテタの言う「良い基盤」は出来上がった。元旦のマンチェスター・シティ戦(1-2)では逆転負けを喫しはしたが、世界のトップチーム相手に戦えることを証明してみせた。“未来”を見据えて獲得した選手たちだが、確かに“今”も見せてくれている。

アルテタ&エドゥが本格的にフットボール部門の実権を握ったことで、明確な意図を持ってクラブは進んでいる。アルテタは就任100試合目の記念インタビューで、「我々のアイデンティティを定義しなければならない。そしてそれは『団結』の一言に尽きる。すべてにおいて同じ目標を目指す1つの生命として戦うんだ」とあるべき姿を説いた。

そしてその計画を、アルテタ&エドゥを、選手たちは心から信じている。冨安はこうメッセージをくれた。

「アーセナルでの全ての瞬間を楽しんでいます。監督やチームメイトは僕が慣れるまでサポートしてくれましたし、ファンのみなさんも素晴らしいです。とても情熱的で、僕を特別に歓迎してくれたことは一生忘れません」

また『DAZN』のインタビューでは、「(今後行きたいクラブは?)ないですね。本当にアーセナルが一番上だった時代に一緒に戻ることができれば、今いる場所が世界最高の場所になるので。それが今の僕にとってはベストですね」と話す。それ以外にも、ラムズデール、サカ、スミス=ロウ、マルティネッリと、様々なインタビューでクラブへの愛情と信頼を公言している。「望まれ続ける限りここにいたい」。引く手あまたであろう選手たちが、他でもないアーセナルでの成功を願っているのだ。

今と未来

アーセナル3(C)Arsenal

もちろん不安要素はある。この1年間でアーセナルは21人もの選手が入れ替わった。直近で言えば、負傷者や新型コロナウイルスでまともにメンバーを組めない上に、アルテタ就任後14人もの退場者を出している。

そして、アルテタが衝突してきた選手は少なくない。その結果クラブを後にした選手もいるし、今後もこれは起こり得る。

だがこれは、アルテタを中心にチームが構築されていることの証拠だ。衝突のあった選手も一方的に構想外としたわけでもない。基準は明確だ。本人はこう語る。

「私が求めるのはたった1つ、敬意と献身だ。このレベルでもしそれがないのであれば、荷物をまとめて出ていくだろう。私が求める最低のラインだ。クラブで働く全員にそれを期待している。まずは自分がやるんだ。それができないなら、ここを離れて他のことをする。それは確かだよ」

「成功するためには何かに熱中し、この歴史あるクラブを代表したいと思わなければならない。最低限の基準だよ。誰に対しても『シュートは必ずゴール隅に突き刺せ』なんて言わないさ。だが、このクラブのために毎日正しいことをするように求めるのは間違いない」

規律と団結、献身を何よりも優先する彼の考えが全体に反映されている。言ってみれば「誰のチームなのか」がはっきりしている。だからこそ、彼の役割はアーセン・ヴェンゲルと同じマネージャーなのだろう(前指揮官ウナイ・エメリはヘッドコーチだった)。今のチーム方針にはブレがない。

アルテタとエドゥ。現在のアーセナルを形作った偉大な名将の教え子たちによる、本当の意味での新たな時代。まだまだマン・シティ、リヴァプール、チェルシーと世界のトップランナーとの差は歴然であり、優勝は当分先のことになるだろう。当面の目標はチャンピオンズリーグへの復帰だが、群雄割拠のプレミアリーグではそう簡単に実現できるものでもない。事実、2022年は未だ勝利もない。

しかし少なくとも、“今”のアーセナルからは“未来”を感じることはできる。だからこそエミレーツ・スタジアムに詰めかけるファンは(時には厳しく)声援を送り続けているのだろう。死力を尽くしながらも後半アディショナルタイムの逆転弾で涙をのんだ元旦のマン・シティ戦後、ピッチに座り込んでうなだれる選手たちをチャントで鼓舞する姿は、それを象徴するものであった。エミレーツには感情がある。ファンの共感を得られることほど、チームの力になるものはない。

これからも、エドゥの求める忍耐は必要だ。だが(良くも悪くも)ワクワクするアーセナルが帰ってきた。それは間違いない。

文=河又シュート(Goal編集部)

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アラブ首長国連邦・ドバイを拠点とするエミレーツ航空は、これまでにサッカーをはじめ、テニスやモータースポーツ、競馬など様々なスポーツチームやイベントのスポンサーを務めてきた。

そんなエミレーツ航空とアーセナルの関係は2004年にスタートし、サッカー史上稀に見るこの巨大契約は2024-2025シーズン終了まで継続することが決定している。また、エミレーツ航空はアーセナルのホームグラウンドの命名権も取得しており、6万人を収容する最新鋭のアリーナは、2028年まで「エミレーツ・スタジアム」として呼ばれることになる。

2021年10月にはミケル・アルテタ監督がコロナ禍の影響で1年延期となった『2020年 ドバイ国際博覧会(ドバイ万博)』のエミレーツ館を訪問。エミレーツ航空・グループ会長兼最高責任者であるシェイク・アハメッド・ビン・サイード・アル・マクトゥーム殿下の歓迎を受け、航空業界の未来をテーマとしたデジタル体験施設やインスタレーションを巡った。

アーセナルの指揮官はドバイ万博を「素晴らしい体験だった、本当にユニークな体験ができるので、今後数カ月の間にドバイを訪れる人々にぜひお勧めしたい(ドバイ万博は2022年3月31日まで開催中)」と振り返った。

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