■ダービーの快勝
アーセナルが躍動している!
ノリッジ戦とバーンリー戦の勝利(共に1-0)が礎となったとすれば、トッテナム戦のスリリングが3-1の勝利が、アーセナルのシーズンに完全に火をつけたことは間違いない。
2週間前、アーセナルは最下位で、トッテナムはリーグトップにいた。それから3試合後、ミケル・アルテタのチームはスパーズを上回った。リーグトップ10に入り、首位リヴァプールとの差はまだ「5」だ。わずか2週間の間に目覚しい変化を遂げた。アルテタは、開幕3連敗の悪夢を乗り越えたと願っているだろう。
この勝利は、結果だけでなくその内容も含めて、アーセナルにとってもアルテタにとっても大きな意味を持つものだった。スペイン人指揮官は今季強烈なプレッシャーにさらされており、ノリッジとバーンリーを下したことで多少和らいだものの、疑念を持つ人々を味方につけるきっかけを必要としていた。
ノースロンドン・ダービーの勝利ほど、それを解消してくれるものはないだろう。
■フレッシュな力
Getty Images前半の45分間、アーセナルは大暴れだった。アルテタが望んだ若いチームは、彼らが正しい道を歩んでいると確信できるようなパフォーマンスで、ハーフタイムまでにスパーズを吹き飛ばした。
この試合のアーセナル平均年齢は24歳、30歳以上の選手はピエール=エメリク・オーバメヤンだけだ。そしてそのフレッシュなエネルギーは、スパーズに扱えないものだった。
スパーズのブロックを飛び越え、12分にはヘイル・エンド・アカデミー(アーセナルアカデミーのこと。先制点に絡んだブカヨ・サカとエミール・スミス=ロウは同組織出身)から生まれたようなゴールで先制に成功。27分にはオーバメヤンが見事なチームプレーでゴールを決め、リードをさらに広げる。ホームチームはまだ終わらない。6分後にはサカが決めた。エミレーツでは、パーティータイムが始まったのだ。
シーズン序盤のブレントフォード(0-2)、チェルシー(0-2)、マンチェスター・シティ(0-5)相手の完敗とは大違いだ。最後の15分でソン・フンミンに1点を返されたが、その時点ですでにゲームは終わっていた。
■動き出した歯車
Getty Imagesアーセナルにとって最も重要なことは、これをさらに発展させることである。
現在公式戦4連勝中、トップとの差はまだ5ポイント。わずか2週間前には危機的状況に陥っていたガナーズは、今では生まれ変わったクラブのように見える。
夏に加入したアーロン・ラムズデール、ベン・ホワイト、そして冨安健洋を中心としたフレッシュな選手たちが、新たなディフェンススタイルを作り上げている。ケガから復帰したトーマス・パルティはアトレティコ・マドリー時代のように力強く、マルティン・ウーデゴールはファイナルサードを操っている。
この試合の後半にサンビ・ロコンガとヌーノ・タヴァレスも出場したことで、アーセナル夏の新加入組全員が出場したことになる。アーセナルの長期的なプロジェクトが実現するという、最初の兆しを目の当たりにすることができた。
まだまだ道程は長く、多くの困難が待ち受けることは間違いない。だが、再び明確な方向性を手に入れたことも間違いない。
新加入選手がチームに新たな息吹を吹き込み、スミス=ロウとサカは力強く成長し続ける。ほんの2週間前には完全な混沌に陥る危険性もあったシーズンが、今では全く違うものとなっている。
アーセナルが動き出した。
取材・文=チャールズ・ワッツ/『Goal』アーセナル番記者



