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8日に行われたチャンピオンズリーグ(CL)準々決勝1stレグ、アーセナル対レアル・マドリーは3-0でアーセナルが先勝した。
歴代最多15回のCL優勝を誇るマドリーと、いまだ優勝経験のないビッグクラブ、アーセナルの対戦である。彼らがCLで対戦したのは一回きり、2005-06シーズンのベスト16でしかなく、その際にはマドリーの本拠地サンティアゴ・ベルナベウでの1stレグを0-1でアーセナルが制し、アーセナル旧本拠地ハイベリーでの2ndレグがスコアレスで終わっっている。マドリーを破ったアーセナルは最終的に決勝までたどり着き、黄金期を迎えようとしていたライカールト監督率いるバルセロナに敗れた。
この試合の前半、勢いを見せたのはホームのアーセナル。4-3-3のシステムを使用するアルテタ監督のチームは、バルベルデが右サイドバック、アラバが左サイドバックを務めるマドリーの両サイドをマルティネッリ、サカが切り崩して、1トップのミケル・メリーノらがゴールをうかがう。対して中盤に右からロドリゴ、モドリッチ、カマヴィンガ、ベリンガム、前線にエンバペ、ヴィニシウスを置く4-4-2のマドリーは速攻を仕掛けられるチャンスを待った。
アーセナルは機能的な攻撃によってマドリーを自陣に押し込んでいき、一方マドリーの速攻はヴィニシウスがこの日も低調のため、エンバペやベリンガムの閃きに依存する。マドリーは31分、ベリンガムのスルーパスからエンバペがDFラインを突破してペナルティーエリア内に侵入。だが放ったシュートはGKラヤの正面に飛んだ。
前半の終盤は、アーセナルが立て続けに決定機を迎え、アーセナル・スタジアムを沸かせる。まず37分、サカのグラウンダーのクロスがクルトワの正面を通り過ぎるも、これには誰も合わせられず。また40分には、再びサカの折り返しがマドリーのペナルティーエリア内を横切るが、こちらもファーに流れてしまった。アーセナルの攻勢は続き、45分にはライスがヘディングシュートを放ったものの、GKクルトワのまるで猫のような反射神経のセーブに阻まれ、さらにこぼれ球からマルティネッリが叩いたボールもマドリー守護神に弾かれている。前半はスコアレスで終了した。
迎えた後半、攻め続けるアーセナルは58分、ついにその勢いをゴールへと昇華している。ペナルティーエリア手前右からのフリーキック、ライスが右足で擦り上げるようにして蹴ったボールは、マドリーの4枚の壁の外側を通ってから急激にカーブして、枠の右隅に収まっている。クルトワの横っ飛びも届かない正真正銘のゴラッソだった(マドリーは壁にもう一枚置くべきだっただろう)。
ビハインドを負ったマドリーは堅守速攻のプランが崩れたが、その後も攻撃が機能しない。とりわけ、ヴィニシウスの低調ぶりは目も当てられないほどで、彼の絡めばすべての攻めが台無しになるほどだった。ドリブルのキレは影を潜め、プレーの選択も悪く、これまでも良好とは言えなかったエンバペとの連係は望むべくもなかった。チーム全体もそれに引きずられるように、その攻撃は著しく迫力を欠いている。
アーセナルは沈黙するマドリーをその後も攻め立てた。66分にはマルティネッリ、メリーノが立て続けにシュートを放ったもののクルトワがビッグセーブを連発し、メリーノのさらなるシュートはアラバが弾いた。ベルギー代表GKは、やはりそびえ立つような大きな牙城だったが、アーセナルは69分に再び彼を打ち破ることに成功。しかも……再びライスの直接フリーキックで!
今度はペナルティーエリア手前左からのフリーキックだった。マドリーの壁が4枚、その横にアーセナルの壁が3枚あり、ライスがシュートを放つ直前、アーセナルの3枚の壁がそこからいなくなる。右足で叩かれた強烈なボールは、そのなくなった壁のスペースを通り、クルトワの横っ飛びも空しく再び枠の右隅に収まっている。セットプレー戦術の巧みさもあったが、しかしライスの枠内右上の隅を突いたキックは、精度、スピードともに完璧だった。
2点のビハインドを負ったマドリーのアンチェロッティ監督はモドリッチとの交代でルーカス・バスケスを投入。L・バスケスを右サイドバック、そこに位置していたバルベルデをボランチとして反撃を目指した。しかし75分、アーセナルがノックアウトラウンドにおいて大きな意味を持ち得る3点目を決めている。
アーセナルは守備力に不安のあるルーカス・バスケスが入ったマドリーの右サイドを攻略。ルイス=スケリーのマイナスの折り返しにミケル・メリーノが左足で合わせ、三度クルトワを破っている。これでマドリーは、完全に沈黙。アンチェロッティ監督はブラヒムやフラン・ガルシアを入れるもほぼ効果なく、無力感を晒しながら、試合終了のホイッスルを耳にすることになった。
なおマドリーホームの2ndレグは16日に開催。この1stレグの試合内容と3ゴール差を考えれば、アーセナルが圧倒的に優位なのは間違いない。しかしマドリーが数え切れないほどの劇的勝利を成し遂げてきたベルナベウが舞台であるだけに、油断することは許されないだろう。





