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長野風花が語るワールドカップ。「サッカーに興味のなかった人も応援しているのを見ると、とても嬉しい」

なでしこジャパンMF長野風花はこの夏、マイナビ仙台レディースから米国NWSLのノースカロライナ・カレッジへプレーの場を移した。8月13日のカンサスシティ戦で交代出場しNSWLデビューを飾ると、翌節のシカゴ・レッドスターズ戦で初先発初ゴール。2022シーズンは11試合出場2得点の成績を収めている。

10月、なでしこジャパンの強化活動のために日本に帰国し国際親善試合2試合をこなすと、11月のスペイン遠征にも参加。そして、今度は「観戦者」としてカタールに飛び、ワールドカップの空気を現地で体験した。女子W杯オーストラリア・ニュージーランド大会を来年に控える女子日本代表選手として、長野はカタールで何を感じたのか。【取材協力=アディダス ジャパン】

■ドイツ戦は一ファンとして全力で応援

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――長野選手はU-17、U-20女子W杯に選手として参加されましたが、今回は観戦者としてのW杯訪問です。

私たちも来年の夏に女子W杯を控えています。そういう真剣勝負の雰囲気を体感できる機会はとても貴重です。世界一流の選手が国の威信を懸けて戦う “本当の勝負”を見ることができる。それはファン・サポーターもそうです。母国のチームへの熱がすごい。日本だとあんまりないような「サッカーがすべて」といった熱がファンの方々にもあると感じました。

選手としてピッチでプレーしている時は、スタジアムで応援してくださる方々しか目に入りません。でも、自分がいざ開催地に来て見ると、部屋を出る時からユニフォームを着て、街中でもショッピングモールでも応援する各国のファンを目の当たりにしました。こういう体験をすると、選手としてプレーできる喜びや幸せをあらためて感じます。だから、私たちはもっともっと強くならないといけないし、どの試合でも勝つ姿を見せなくてはいけない。それがファンの方々への恩返しになるのだと思います。

――男子代表のグループステージ第1節・ドイツ戦を観戦されました。下馬評を覆す歴史的な勝利を目にして何を感じましたか?

すごくワクワクして、自分が試合をするよりも緊張していました。完全に日本ファンとして全力で応援していました! あんなにボールを持たれていたのに、日本の決め切る力…本当に感動しました。あと、ドイツのギュンドアン選手はやはりすごかったです。

毎日テレビでW杯のニュースをやっていますし、今までサッカーに興味のなかった人も応援しているのを見ると、とても嬉しいです。一人でも多くの人に興味や関心を持ってもらえることが、選手にとって本当に大きなパワーになります。今まではプレーする側で、応援してくださるサポーターの状況は分かっていませんでした。でも、今回カタールに来てみて、選手は本当にたくさんの方に応援されているということ、そして、みんな本当にサッカーが好きなんだと言うことがよく分かりました。

■世界と戦うためにアメリカに行った

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――選手としての立場から少しお話を聞かせてください。11月のなでしこジャパンのスペイン遠征では、イングランド(0●4)とスペイン(0●1)と対戦し連敗しました。この試合を振り返ってください。

フィジカルやプレー強度はすごいものがありました。相手のほうが決め切る力、一発を逃さない力もありますし、チームとしてもやることが整理されていました。でも、日本もチームとしてやることを整理してさらに質を上げていけば、もっともっとやれると率直に感じました。

――7月にアメリカのクラブに移籍したことで、欧州のチームのスピードや強さに慣れた部分もありますか?

個人としては、アメリカに行ってとんでもなく速い選手との対戦を経験したこともあったので、イングランドにもあまり驚きませんでした。ただ、チームとしては、もっともっと質や精度を上げていかなくてはいけないです。来年W杯で勝つためにはイングランドのような相手を倒していかないといけないわけですから。

課題も結構あります。中盤で相手にボールを持たれるシーンもかなり多くて。中盤でボールを奪う、あるいは中盤で(コースを)制限してディフェンスラインにボールを取ってもらうといったことをもっと増やしたかった。あとはボールを取ったとしても、すぐに奪われてしまい繋げず、またイングランドの時間になるという形がすごく多くて。ボールを取った後にどれだけ失わずにゴールに向かえるか。ボランチとしていいサポートをして、前に繋げる。そういった精度をもっと高めていきたいです。

――対戦したイングランドは今年女子ユーロで優勝して大いに盛り上がりました。今、長野選手がプレーするアメリカでも女子サッカーは人気があります。日本との違いで感じる部分はありますか?

シンプルに女子サッカー人気は不動ですね。応援に来てくださるファンの方々の年齢層も異なります。日本では男性が多いのですが、アメリカでは若い女の子、少女、子どもも女性がすごく多いです。本当にいろいろな世代の女性から愛されているのがアメリカの女子サッカーだなと感じます。

――選手たちについては?

すごくかっこいい! あと、一人ひとりが意見をハッキリと口にします。意見があって、それを内にとどめておかず、積極的に良くしていこうとしています。日本だと「それは決まったことだから」みたいになってしまうところを、自分たちから良くしていこうという意志を強く感じます。「私はこう思うけどどうだった?」としっかり聞いてくれます。感じ方が違ってもいいんです。とにかくピッチ内もピッチ外もすごく積極的です。

――ご自身が変わった部分はありますか?

元から細かいことをあまり気にしないタイプだったんですが、さらに気にしなくなりました。アメリカでは誰かがミスをしたら「Next one, Next one、次だよ」とそういう掛け声をすることが多いんです。みんながポジティブであれば、さらに良くなると感じました。本当にアメリカに行って良かったと心から思います。

――アメリカへの移籍はW杯を見据えて決断したのですか?

もちろんそれもあります。対戦相手として戦うのは海外の選手なので。でも実はずっと海外でプレーしたいという思いが強かったんです。まず日本で何ができるかと数年やってきて、今だな、というタイミングが来ました。

――なでしこジャパンは東京五輪で悔しい思いをして、そこを覆すためのきっかけとなるのが来年のW杯になると思います。女子サッカーを次の世代に渡すためにも、選手としてどう見据えていますか?

私たち自身のためにも、女子サッカーの未来のためにも、もちろん頑張らなければいけないし、勝たなければいけない大会だというのは強く思っています。

実際私も海外に行って、「日本の選手は丁寧で細かくて、最後まで頑張れて」といった印象を持たれていることが分かりました。でもそれは今までプレーしてきた先輩方がそういうプレーをして、その印象がそのまま私たちにもついているということなので。本当に感謝していますし、私たちももっともっと頑張って世界に広めていけたらという思いがあります。そういう意味でも勝つことが一番ですから、結果を求めてやっていきたいですね。今いる場所で成長してまずメンバーに入ること、入るだけではなくしっかり活躍してチームのため、日本のために戦いたいと思います。

Profile
長野風花(ながの・ふうか)
1999年3月9日生まれ、23歳。東京都江戸川区出身。160cm/53kg。FCパルティレ→浦和レッズレディースJr.ユース→浦和レッズレディースユース→ 浦和レッズレディース→仁川現代製鉄レッドエンジェルス(韓国)→ちふれASエルフェン埼玉→マイナビ仙台レディースを経て22年7月ノースカロライナ・カレッジ(米国)に完全移籍。女子日本代表16試合出場1得点。幅広い視野を持ち、精度の高いパスを繰り出すボランチ。

▶女子中学生のチーム創設支援adidas「HER TEAM」プロジェクト募集中!

アディダスとJFAとのパートナーシップのもと、中学生年代の女子プレーヤーの環境づくりをサポートするadidas「HER TEAM」プロジェクト2022の募集が始まっている。2020年に立ち上げられた本プロジェクトは、今まで全国18自治体・計20チームの創設をサポートしてきた。

本年度の募集に際し、長野風花がプロジェクト支援チームの女子選手たちに向けて、オンライントークセッション『Fuka Talk』を16日に実施する。セッションでは、今回のカタール訪問とW杯観戦、来年の女子W杯、そして日本の女子サッカーの未来について語り合う予定だ。

●2022年度Her Team プロジェクト募集中! 締め切りは12月31日
●詳細および特設ページはこちら

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