ここでは現地で密着取材を重ねたサッカージャーナリスト川端暁彦氏に、大会の総括と選手個々の今後の可能性、世界を勝ち抜くための「日本」の課題を紐解いてもらった。
■相手は、アジアの多様性
「アジアって本当に広いし、大きいし、いろいろな民族もいて……」
戦いを終えたあと、U-21日本代表の大岩剛監督はそう語りながら、少し感慨深げに大会を振り返った。
「アジアの中でも『強い』と言われる国々とやることでそのサッカーに触れることができた、選手もそうですが、私を含めたスタッフにとっても実のある大会だったと思う」
初戦でUAEを下し、第2戦ではサウジアラビアとドロー。続く第3戦では大胆なターンオーバーをしつつタジキスタンに快勝してグループステージを通過。準々決勝では韓国を3-0の大差で破り、準決勝は開催国ウズベキスタンに苦杯も、最後は3位決定戦でオーストラリアに快勝し、銅メダルを手にした。
中東、中央アジア、東アジア、そしてオーストラリアという「広い」アジアを象徴する多様性に富んだ対戦相手と、6試合にわたって矛を交えた。この事実自体が一つの収穫だろう。特にこの世代はU-20W杯が中止になった余波で、“アジア予選”を経験している選手自体が僅少だったのだから、なおさらだ。
ただ、大岩監督はこうした文脈で話すときにしばしば出てくる『経験』というワードを安直に使うことを強く避け続けてもいた。大会の年齢制限より2歳年少のU-21チームで参加した日本だが、大岩監督はことあるごとに内外双方へ向けて「経験を積みに来たわけではない。勝ちに来た」という発言を繰り返した。
勝ちに行った結果の副産物として得られる「経験」はありだが、負けを前提にした「経験」なんてあり得ない。そうしたスタンスは徹底されていて、次第に選手側のコメントにまでそうした“大岩節”の伝染が見られたほどだった。
■見せつけた選手層の差
AFCもう一つ、重ねて強調されたのは「23人全員で勝ちに行く」というチームとしての姿勢の部分だ。こうした大会が始まると、出場機会に恵まれる選手とそうでない選手の間に温度の差が生まれてくるものだ。代表に選ばれるようなプライドと実力を持った、血気盛んな若者達なのだから、当然と言えば当然だ。
「選手には感情があって、きれい事だけではいかないところが絶対にある」
大岩監督はそう言って選手たちの感情に理解を示しつつ、同時に「表現の仕方を間違えるなよ」と釘を差し続けた。そこに差が生まれることを口酸っぱく繰り返した。
「こういうのはね、『言わなくても分かってるだろ』ではダメなんです。戦術やスタイル、コンセプト以前の部分。それを言い続けるのが現場のボスの役割で、そこは言い続けなければいけないんです」
日中は40℃に迫る気温となるウズベキスタンの首都タシケントで中2日の6連戦となった今大会は、「タフさが問われる」という指揮官の言葉そのままの戦いだった。コロナ対応でホテルに缶詰状態の中、異国の地で過ごし続けるストレスは相当なものだったのも間違いない。控え組の「行動」次第でチームは簡単に崩壊していただろう。
その点で言えば、今大会の選手たちの振る舞いは良い意味でポジティブだった。もちろん、「人間なので感情はある」と言った指揮官の言葉どおり、きれい事だけで終わらないやり取りもあったことだろう。ただ、ピッチ上にそれが持ち込まれることはなく、最後の3位決定戦では「みんなずっと準備し続けてきていた」というMF佐藤恵允の言葉どおりのパフォーマンスを、出場機会の少なかった選手たちが発揮して勝ち切った。オーストラリアも出場機会の少ない選手たちを出していたからだと言う人もいるかもしれないが、逆に言えば、選手層の差を見せた試合だった。
■厳重な検査と隔離。日本は少数派
AFC総合的にポジティブな総括ができる大会だったと思う一方で、優勝に届かなかった要因、すなわち準決勝での敗因は何だったか。ウズベキスタンのような「狭い距離感を好む日本に対し、広げてくる」(大岩監督)欧州型のチームへの対応といった戦術的な課題を見出すことは可能だろう。ただ、そうした戦術的な側面を議論する以前に、「体が動かなかった」と選手たちが口を揃え、また指揮官が認めたようなコンディション面に問題があったのも明らかだった。
中2日の連戦で、第3戦ではほぼ完全なターンオーバーを実施。選手を入れ替えながら戦う態勢が整いつつあったチームにとって最大の誤算は、やはりコロナ禍である。
グループステージ突破後から検査で陽性判定を受けて離脱する選手が続出。最終的には選手5名、スタッフ2名が陽性となって戦線を離れることとなってしまった。単純に交代要員が欠落したというだけではなく、練習の強度も下がれば、予定も変わる。スタッフが減ったことでGKの練習やウォーミングアップなどにも問題が出ることとなってしまった。
「昨日まで一緒に行動してた選手、スタッフが突然いなくなる。まだ顔も見えてないんですよ。すぐ部屋に隔離になるから。何とも言えない寂しさがあった」(大岩監督)
一人、また一人と減っていく中で、「次は自分ではないか」と思わない者はいなかっただろう。単に欠員が出るというだけでなく、「精神的な負担は相当なものだったと思う」と指揮官は選手たちを慮る。監督も選手もその点を言い訳にしたりは決してしないが、そうした中で迎えた準決勝に難しさがなかったはずもない。
世界がアフターコロナに大きく動き出していく中で、今大会は参加各チームでそれぞれのスタンスがバラバラだった。厳重な検査と隔離を行う日本のようなチームは少数派で、そうでない考え方がもはや主流である。
そもそも陽性・陰性の基準となるCT値についても日本のような厳格派とそうでない国の差は大きい。今回、陽性となって離脱となった中にも、現地の基準では「陰性」だった選手たちがいた。大会のルール上は出場も可能なわけだが、日本基準で隔離を行っている。現地では「日本人と韓国人だけが未だにマスクを付けている」と言われて不思議がられたものだが、そもそも病気の定義からして違うわけだ。
その良し悪しについて専門外のサッカー人が軽々しく論じるべきではないと思う一方で(国としては議論するべきだろうが)、こうした環境に対して日本代表がどう対応するべきかについては真剣に考えていく必要がある。
たとえば、今回は5名の陽性者が出たが、仮にGK3名が陽性となっていたら戦うまでもなく敗退は確定的である。五輪予選やU-16、U-19の予選で起きたらと考えるとゾッとする。コロナ感染時の選手入れ替えはレギュレーション上は可能なのだが、開催地ウズベキスタンへの移動は2日かかる。陽性になってからでは間に合わない。
対策として年少の年代、U-21代表であれば高校生の選手を第4GKとして帯同させる手はあるように思う。先輩GKたちとの練習、アウェイの環境での集団生活は経験にもなる。またGKコーチ、フィジカルコーチといった専門性の高いスタッフについてはアシスタントスタッフを帯同させて、「いざ」というときに備えておくのも一案だろう。
■大岩監督から森保監督に伝達済み
AFC3位での終幕となったU23アジアカップは、この時代ならではの課題を突き付けられる場となった一方、多くの収穫もあった。選手個々についても、次なるステップに臨めるような選手がいることは明らかだ。
7月にはA代表の参加するEAFF E-1選手権(旧・東アジアカップ)が日本で開催される。今回のU-21代表の試合は森保一監督もDAZNを通じて観戦し続けていたそうで、大岩監督から選手個々のプレーについても既に報告済みだと言う。
「招集するかしないかはもちろん森保さん次第ですが、できるだけたくさんの選手が選ばれてほしい」
大岩監督がそう言ったのは、A代表の選手たちと一緒にプレーする中で感じられるものがあり、それが彼らの成長に繋がることを知っているからだ。
「簡単にこっちで『A代表が基準だよ』、『日常を変えろ』と言っても、実行できる選手はなかなかいないですから」
今年1月のA代表の候補合宿に参加したMF鈴木唯人が、そこで得た「基準」を糧にして大きく成長したように、成長への切っ掛けになる可能性は十分にある。そしてもちろん、「そうなってほしい」と大岩監督が願う、今冬のカタールW杯で戦力となる選手が出てくる可能性を示すチャンスでもある。
もちろん、「どんなにここ(U-21代表)で活躍していたも、これからチームに戻ってパフォーマンスが悪ければ選ばれない。当たり前のことが当たり前にできる選手の集まりがA代表」(大岩監督)である。Jリーグのピッチに戻った若武者たちが、異国の地でタフに戦い抜いた成果を表現できるかどうか。まずはそれを楽しみにしておきたい。
