U-20日本代表は15日、AFC・U-20アジアカップ準決勝でU-20イラク代表とPK戦までの死闘を演じた末、ベスト4で大会を去った。それでも、若きサムライは今年5月開幕のU-20ワールドカップ(W杯)の出場権獲得という大きな収穫を手にしている。【取材・文=川端暁彦】
■手にした世界大会への切符
©AFC【提供:DAZN】「U-20W杯に行けず、『悔しさを持ってここから頑張ろう』と解散するわけではない。W杯に行ける権利を勝ち取ったからこそ、悔しい思いを糧にして挑戦できる。その舞台が残されているのは物凄く大きいと思っています」
冨樫剛一監督は「敗退の原因は自分の采配にある。選手たちは本当によく頑張ってくれた」とした上で、U-20W杯出場権を勝ち取った上で味わった悔しさが選手たちを成長させてくれるはずだと強調した。
その上で3月31日に行われる抽選会では「とにかく強い国を引きたい。全部強い国が入ってくれという気持ちでいる」とも言う。「ポット1からフランス、ポット2からブラジルという感じになってくれればいい」と言い切った心も、「それが彼らを成長させてくれるから」という確信ゆえだ。
ちなみに日本はポット3に入る見込み。一番タフそうな組み合わせは、「フランス・ブラジル・日本・チュニジア」といったパターンだろうか。あるいは「ウルグアイ・イングランド・日本・ガンビア」なんて形もあるかもしれない。この世界大会に向けた権利をつかみ取ったのは、間違いなく今大会における最大の収穫だった。
■空転し続けたイラク戦前半
©AFC【提供:DAZN】ただやはり、この世界大会出場権を得られるかどうかという重い命題のある大会ゆえに、出場権をつかみ取った直後の試合である準決勝にはある種の難しさがつきまとった。別に急にやる気がなくなるわけではないが、連戦や長旅による心身の疲労もある中で、もう一度体に鞭を入れるのはやはり簡単ではない。
そこで冨樫監督は「疲労度の大きい選手を先発から外し」フレッシュな選手を多く先発メンバーに加えてイラク戦に臨んだが、考えていたような効果は出なかった。
「思っていたよりも全体的に疲労感があって、『何か重いな』という感覚があった」(冨樫監督)
2トップで激しく圧をかけるプランだったが、技術的に秀でるイラクの選手に持ち出されてしまうことも多く、思うように機能せず。立ち上がりにCKから「安い失点」(冨樫監督)をしてしまったこともあり、前半のチームは空転し続けた。失点直後の雰囲気も含め、リーダーシップの取れる選手がピッチに不在だった影響も出てしまったのは否めない。
また開催国ウズベキスタンと3万人の大観衆を相手に戦う、あるいは隣のライバル・韓国と激突するファイナルに向けての期待感も高まっていたが、ある選手は試合後に「『まあ決勝には行けるだろう』的な考えになっていたのかも」とも漏らした。優勝するためには決勝のことも考えたほうがいいのは当たり前だが、目の前の一戦がまずタフな試合になるという思いが薄れてしまったのかもしれない。実際、この大会のイラクは侮っていいような相手ではなかった。
■日本が抱える根深い課題
©AFC【提供:DAZN】大会を通していくつかの課題も浮き彫りになった。ビルドアップのところでスムーズにいかないことが多かったのはピッチコンディションの問題も大きかったのでここでは保留するが、守備面ではとにかくCKからの失点が多かった。5試合4失点という結果は悪いものではないが、そのうち3つはCKから。さらに2つが試合の序盤に決まっているとなると、明らかな課題だ。
イラク戦のCKでは守備の約束事が徹底されていなかった結果であることを指揮官は明かし、「そこは世界大会に向けて修正しないといけない」と言う。またMF佐野航大(ファジアーノ岡山)は大会中に「失点した場面だけじゃなく、そもそも試合の序盤にCKを与えすぎているのが問題」とも指摘しており、立ち上がりに相手の勢いに対して押し込まれてしまうことが多かったのも大きな課題だろう。これは年代を問わずに国際試合で日本が陥りがちな傾向でもあり、育成からの問題とも言えるので根は深い。
また、純粋な高さ不足という指摘もできる。今大会は両サイドバックに小柄な選手が多く起用されているが、世界大会では確実に狙われる部分だ。CKの守備要員を確保し切れていないのも明らか。本大会までの人材発掘もそうだが、あるいはCBタイプの選手を3枚起用する形も視野に入ってくるかもしれない。
もちろん、個々の選手の成長を感じた大会でもあり、国際経験の空白があった世代が、アジアのタフな国際試合を体感して学びを得た意味は間違いなく次代に繋がる。
ただ、5月の世界大会はすぐにやって来る。少しでも多くの経験値をつかみ取るためにも勝ち残りを狙うのは当然のこと。主力メンバーが再び集まるのは大会直前となるため、各人が所属クラブで自分自身をブラッシュアップできるかどうか。そしてJリーグや海外に散らばる新たな“日本代表候補生”たちの台頭にも期待したい。
