日本代表は現地時間16日、カタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選でオマーン代表と対戦する。
■日本を上回った前回のオマーン
(C)Getty imagesグループBの全10試合中5試合を終えた折り返し地点。日本は首位・サウジアラビア代表(勝ち点13)、2位・オーストラリア代表(勝ち点10)に次ぐ勝ち点9で3位につけている。2位以上がW杯本大会にストレートで進むこととなるが、日本は上位2チームとの直接対決を来年に1試合ずつ残しており、状況は好転しつつある。
もちろん、日本が望んでいたことは最終予選のスタートから全戦全勝で突き進むことであり、現状はやや持ち直したに過ぎない。次戦では、ホームでの初戦で敗戦を喫して当初の目論見を崩されることとなった相手、4位・オマーン(勝ち点7)とのリターンマッチを迎える。
前回の直接対決において、オマーンは日本戦の前に約1か月間の合宿を組んで対策を徹底。当日に雨が降っておりピッチ上でボールが止まるような状況となったが、相手指揮官はそれについて試合直前にも微調整を加えたことを明かしており、戦術・コンディション面ともに日本を上回る戦いを披露した。
そこから10月シリーズも初めのサウジアラビア戦に敗れ、勝利した3試合でも1点差という紙一重の戦いが続いている。背水の陣で臨んだ10月の2戦目オーストラリア戦からは[4-3-3]の新システムを導入したが、森保一監督は対戦相手が日本をリスペクトして「非常に研究してくる」点がアジアの難しさに繋がっていることを強調。その決断を、オマーン戦の苦い記憶が後押ししていた部分は少なからずあるだろう。
一方のオマーンは日本に勝利後、サウジアラビアには0-1、オーストラリアには1-3で敗れたものの、日本が1点差の勝利にとどまったベトナム代表には3-1で快勝。中国戦では先制点を奪われる厳しい展開となったが、セットプレーから追いついて勝ち点1を積み上げた。
得失点差の関係で日本に勝利すれば3位に浮上することができるだけに、今回もオマーンの士気は高く、一度は撃破した相手に気後れもないだろう。ブランコ・イバンコビッチ監督下で地に足のついた戦いを継続し、堅守速攻というベースはそのままにW杯出場という目標を追い続けている。
■“徹底分析”の打破に必要な変化
(C)GOAL前回対戦では、オマーンは中盤がひし形の[4-4-2]の布陣を採用し、日本は[4-2-3-1]で戦った。あくまでスタートポジションに限った問題ではあるものの、プレス時に日本が2トップ気味になった際にはオマーンの中盤の特にアンカーに対して十分な圧力をかけることができず。ミスマッチが起りやすい状況を作られてしまっていた。
一方、インサイドハーフを2枚にする[4-3-3]であれば、より高い位置に人数を密集させることも可能だ。オーストラリア戦とベトナム戦のスタメン変更が1名のみ、それも負傷を抱えていた右サイドバックの酒井宏樹が山根視来に代わっていただけということを考えれば、[4-3-3]において森保監督が考えるファーストチョイスは明白。その中では、中盤が田中碧、遠藤航、守田英正の3枚で構成され、プレースタイル的に3ボランチのような形となり、中盤の推進力を欠いてしまうという点は課題に挙げられる。
しかし、今回のオマーン戦に向けては守田が累積警告により出場停止となっており、クラブ事情による一足早い離脱が発表。引き続き[4-3-3]で臨むのであれば、必然的に中盤のトリオは新しい組み合わせでスタートすることとなり、選択肢には鎌田大地、柴崎岳、原口元気、堂安律がいる。柴崎はボランチ時にはゲームメイク約を担うが、IHでは「ゲームメイカーというよりフィニッシャーやラストパスを供給する役割」を意識すると語った。
柴崎以外の選手であっても、鎌田は本来トップ下の選手であり、原口もIHとしてクラブで攻撃的な役割を担う。純然たるアタッカーである堂安も、より攻撃的な選手が入ることでの変化をこう語る。
「出るなら右のIHかWGかなと思っています。今は3ボランチみたいに外から見えるので、僕が出ればプレースタイルは違います。よりWGの近くでプレーするような、トップ下みたいな感じになると思うので。出たら変化が生まれると思います」
さらに「(必要なことは)一対一で関わっている間に三人目が動き出すとか。単調な攻撃に終わってしまっているのは見てて分かると思うので、色んな選手が湧き出るような攻撃がしたい」とも口にした堂安。ベトナム戦後には得点力不足や内容に対しての批判も聞こえたが、選手もひしひしと感じていた課題だったようだ。
繰り返しになるが、前回はオマーンの徹底した“日本対策”にはめられた。裏を返せば、日本が同じシステムで同じ役割を選手たちに与えてきたことの弊害とも読み取れる。とはいえ、分析が緻密であればあるほど確かなデータが必要となり、それを打破するための有効な策はシンプル。試合ごとにこれまでと変化をつけていくということだ。
歴史的にも、最終予選ではヒーローが現れるかエースが圧倒的な力を示すことによって乗り越えてきた。それは大黒将志や中村俊輔、本田圭佑、そして前回大会の原口などだ。それは“対アジア”で分析を上回る実力を発揮するか、分析を出し抜くプレーを披露するかの戦いになるということだが、これまで苦しめられてきた森保ジャパンに必要なのは新たな風だろう。
オマーン戦に向けたメディア対応で堂安は、勝利への意欲を強調したうえで「エンターイナーとして見ている人々を楽しませるのも僕らの仕事の一つ」と語った。多くの選手とは別種のメンタリティを有する若武者が、大きな仕事を果たす予感を漂わせている。
取材・文=上村迪助(Goal編集部)
