EAFF E-1サッカー選手権2022決勝大会の第2節で、中国代表と0-0で引き分けた日本代表。続く27日の韓国代表戦は、カタール・ワールドカップ(W杯)メンバー入りを目指す国内組の多くの選手にとって、最後のアピールの場になると目されている。
カタールW杯では基本布陣の大部分を今回呼ばれていない選手が占めると考えられる中、通常の23名から26名に登録枠が増やされた本大会に食い込むためには、チームに新たなオプションをもたらす“ラスト3ピース”の役割を担うにふさわしい持ち味の発揮が求められる。【取材・文=河治良幸】
■中国戦でチーム共有の不足が露わに
(C)Ayano Miura結論から言えば、今回の日本代表はE-1メンバーが気持ちよく、自分たちの持ち味を発揮するための活動ではない。森保一監督の求めるスタンダードを満たし、さらにスペシャルなものを出していかないと26人のテーブルにすら乗ることはできない。あくまで基準はフルメンバーの代表チームにあり、そこに一枚でも二枚でも食い込めるかということになる。
ただ、大前提として結果を求めるには無理のある中国戦のメンバー構成だった。U-23ベースの中国が、守備的に引いてくることは想定できた試合。香港戦からガラリと代わったスタメンはサンフレッチェ広島から5人が先発、さらに終盤には満田誠が投入された。延べ6人が広島だった訳だが、システムも配置も組み合わせも違う中で、所属チームのように機能しろというのに無理がある。
5-4-1で、しかもラインを低くして縦の侵出スペースを消してきた中国に対し、オフザボールの選手と反対サイドからのアクションの少なさというのは、“対5バック”というビジョンをチームとして明確に共有していなかった影響だろう。その中でもライン間で受けて侵入しようとする脇坂泰斗のトライや野津田岳人の中距離パス、同僚の右サイドバック小池龍太を起点とした、宮市亮の右からの飛び出しといった個人やユニットでのトライは目に付いた。
少なくとも小池と宮市、中盤の脇坂と野津田、この4人に関しては急造チームの中でも、積極的なチャレンジが目立ったし、韓国戦で何かしらの起用が期待できる選手たちだ。左サイドバックの佐々木翔も広島の3バック左のような躍動は無かったが、不用意なミスも無く、アウトサイドをタイミングよく駆け上がってのクロスも見られた。
中谷進之介も、名古屋が3バックといっても元々4バックの中央でやってきた選手なので、守備対応に関しては問題ない。攻撃面ではもっと左に大きく振る展開を入れたり、高い位置まで持ち運んで縦パスをつけて欲しかったが、そのための事前のコンセンサスが無く、どうしても無難になってしまったかもしれない。
香港戦は力関係の影響が指摘されるが、何より相手が4-3-3で中盤からの組み立てにしてくれたので、ボールを奪って早く攻めるという日本代表のコンセプトが出しやすかった。その意味でも中国戦のメンバーの方がハードルも高かった。それでも20本以上のシュート、手元の集計で7本の枠内シュートを記録していた事実を考えれば、1本、2本は確実に仕留めたかった試合でもある。
■次戦は香港戦の布陣が中心の見込み
(C)GOALおそらく韓国戦は香港戦で先発したメンバーに未出場のGK谷晃生を加えたような編成だろう。ただし、中国組から中谷と後半途中に下がった佐々木が加わるかもしれない。筆者の評価としては小池にチャンスを与えてもらいたいが、“真打ち”の山根視来がいることを考えると、オプションである左サイドバックで起用する手もある。
韓国戦で最も悩ましいのは中盤の構成だ。韓国は4-3-3をベースに、幅広いパスワークからタイミングよく縦パスを通してくる。そうした相手に、強度の高い守備からショートカウンターの起点になれるセットが望ましい。脇坂や野津田に加えて、中国戦で2ボランチに入った橋本拳人も4-3-3(森保監督は4-1-4-1と表現)のアンカーで起用すれば、より持ち味を発揮すると想定できそうだ。ただし、香港戦の“マリノス・トリオ”は対韓国で連係の良さをそのまま生かせる。
韓国に勝つと言うテーマもあるが、やはりカタールW杯の最終メンバーに滑り込める選手を探り出すと言う意味で悩ましい。スタートのシステムも香港戦、中国戦と継続してきた4-4-2(あるいはトップ下が高い位置をとる4-2-3-1)を使うか、フルメンバーのベースなっている4-3-3を使うかの判断も含めて、森保監督がどう見極めるか非常に気になるセクションだ。
左右サイドは香港戦で良いパフォーマンスを見せた相馬勇紀と水沼宏太が、そのままファーストチョイスだろう。相馬は中国戦でも終盤から流れを変えて、短い時間でゴール迫った。カタールW杯で三笘薫がスタメンだった場合に、相馬がベンチに入れば心強いし、逆もまたしかり。常連の山根と谷口彰悟を除けば、今回のE-1メンバーで最もカタールに近い存在ではないか。
水沼も右足の正確なクロス、セットプレーのキックというフルメンバーに無い特長があり、26人への増枠となる中で“ラスト3ピース”にふさわしい選手だ。何よりベンチでの影響力は外からも目に見えるものがあり、たとえ試合に出なくてもチームにプラス効果をもたらせる選手だろう。
■相馬、水沼、宮市、西村に光明か
(C)GOAL特長という意味で、その水沼に勝るとも劣らないのが宮市だ。中国戦では結果こそ出なかったが、小池との縦ラインは一番の脅威になっていたし、前田大然や伊東純也にも引けを取らないスピードと体格的な迫力は明確なオプションになりうる。しかも、宮市の場合は左右で起用できるので、“ラスト3ピース”をアタッカーに割くなら、韓国戦のパフォーマンス次第では9月の欧州遠征に割って入る可能性もある。
もう一人、面白い存在が西村拓真だ。4-2-3-1のトップ下がメインになるが、タイプ的にはFWの選手。90分間の走行距離が14kmとも言われる運動量と、多くの局面に幅広く関わりながらフィニッシュの局面ではボックス内かペナ幅に必ずいるという規格外の機動力は、フルメンバーにも無いものがある。香港戦で2ゴールを記録した決定力を韓国戦でも証明してチームを勝利に導くことがあれば、カタール滑り込みへの世論も高まっていくだろう。
町野修斗については結果でアピールするしかない。1トップを張る選手という基準で、欲を言えばサイズを生かしてもう少し深みのあるポストプレーを見せて欲しいが、そこは今日明日で向上する要素ではない。韓国戦はおそらく相手にボールを持たれる時間も比較的長くなる。攻守の切り替わりで、素早い裏抜けからスルーパスはもちろん、水沼や相馬の速いクロスに飛び込んでいくようなシーンも出てくるかもしれない。
追加招集の岩崎悠人も香港戦は慣れない右で躍動したが、フィニッシュのところで焦りも見られた。カタールの可能性を考えれば両サイドできることが条件になってくるはずだが、韓国戦でより決定的な仕事を期待する意味で、チャンスを与えるならぜひ得意の左サイドで起用してもらいたい。
優勝のかかった韓国戦で、森保監督が中盤や最終ラインで誰を選ぶかも気になるが、カタールという基準で見ると、相馬、水沼、宮市、西村らに生き残りの可能性はあるか。西村のようなアタッカータイプはさておき、中盤は欧州組で埋まる可能性が高い。それでも脇坂、野津田、岩田智輝、藤田譲瑠チマ、そしてスペイン2部ウエスカへの移籍が決まった橋本にも、序列を覆すような活躍を期待したい。
