ボルシア・メンヒェングラットバッハのセカンドチームに所属する19歳FW福田師王。Jリーグを経ずに渡独して話題を集めた男が、現在直面している課題とは?【取材・文=藤丸リオ】
■順風満帆とはいかず
(C)Taisei Iwamoto今年の1月、一人の若武者が日本からドイツへと渡った。全国高校サッカー選手権大会で3年連続で優秀選手となり、高校3年生時に迎えた2022年大会で得点王に輝いた男。神村学園の福田師王だ。
加入から約8カ月。福田はドイツの地で日々鍛錬を続けている。
もともとボルシアMGのセカンドチームであるボルシアMGⅡに加入した福田だったが、ドイツに来た当初はU-19のチームでプレー。そこではさっそくゴールを量産し、公式戦8試合で7ゴールを奪う活躍を披露した。
今季のプレシーズンにおいてもトップチームの練習や試合に参加。プレシーズンマッチでも得点を奪い、確かな能力を示すに至った。この勢いでボルシアMGⅡでも活躍し、一気にトップチームへ。そう考えたくなるのは誰しも同じだろう。
ただ、やはり現実は甘くない。ドイツの4部リーグにあたるレギオナルリーガでプレーする福田は、ドイツに来て最初の壁にぶつかっている。
「(U-19に比べて)U-23のチームになってフィジカルのレベルがアップしました。相手のフィジカルが強くなった中で、僕はまだ得点を決められていない。そういう感覚を忘れた感じになっている。いろいろな面で成長していると思いますけど、今は本当に壁にぶつかっていると思っています」
■セカンドチームでの苦難
(C)Taisei IwamotoボルシアMGのセカンドチームは“U-23チーム”という名目ではあるものの、決して23歳以下の選手だけで構成されているわけではない。福田のように10代の選手もいれば、なかなかトップチームに上がれない20代中盤の選手も在籍。また、ケガから復帰までの過程としてセカンドチームでプレーするトップの選手もいる。そういったチームの中で、主力の座を手にするのは思った以上に簡単ではない。
加えて、福田が言うように周りのフィジカルレベルが一段階アップ。チームの信頼も再びイチから積み上げていく必要があり、新たな場所に来て数カ月ということもあり難しい時期が続いていると言っていいだろう。
それは数字にも表れている。ここまで6試合に出場して0ゴール、1アシスト。数字がモノをいう世界であることをストライカーとして重々承知しているからこそ、不甲斐なさを常に抱いている。
「点数という部分で全然決めることができていないので悔しさしかないです。個での打開力やゴールへの意欲も全然足りないなと。やはりフィジカル面のアップや個で打開できるドリブル、ラストパスの質、チャンスメイクもそうだし、シュート本数も増やしていかないといけないと思っています」
一方で、最近は他のポジションでのプレー機会も増えているという。サイドハーフやボランチ気味のポジション、「4-1-4-1」システムでの2列目の真ん中。さまざまなポジションでプレーする中で、確かな経験を積んでいる。
もちろんFWとしてプレーしたい気持ちもある。だが、いずれにせよ必要なのは「やはり点数というのが自分には絶対に大事」。どのポジションでも得点を取ることで自分の価値を証明しなければならない。福田にとってのストライカーとしての矜持がそこにある。
■現在の目標はA代表主力とのプレー
(C)Taisei Iwamoto9月22日に行われたパターボルンⅡとの試合は81分からの出場となったが、短い時間の中でもゴールに貪欲な姿勢を見せる福田がいた。その日はゴールという結果を残すことはできなかった。しかし、セットプレーの場面では武器である高い跳躍力を見せてヘディングでゴールを脅かしたり、高い位置から守備で奔走したり、目の前には確かに高い壁がそびえ立っているかもしれないが、それを乗り越えようと懸命に戦う姿がある。
「壁を乗り越えた時にどれくらいレベルアップしているのかが楽しみなんです。ちょっと落ち込む時はありますけど、落ち込んでいる暇はないと思っている。しっかり乗り越えてグラットバッハのために戦いたいですし、結果を残してもっと認められる選手になりたいと思います」
U-23で結果を残してトップチームへ。その先にはパリ五輪や日本代表の舞台も待っている。そんな目標を掲げる上で、モチベーションをより高めてくれる存在となっているのが板倉滉だ。トップチームでプレーし、日本代表でもレギュラーを務める選手が身近にいることは大きな活力となっている。
「早く滉くんと一緒に試合に出たいですね。滉くんのパスから点を決めるのは頭の中にいつもあるんです。練習前に『よっしゃ今日も頑張ろう、滉くんとプレーするために』みたいに気合いを入れています。トップで滉くんとプレーするためにも、ここで結果を残さないといけないですね」
ぶつかっている壁を乗り越えられるタイミングがいつになるかはわからない。それでも、「失敗したとしても『じゃあまた挑戦しよう』みたいにいろいろなことに挑戦するのが好きなんです」と笑顔で話すストライカーは、そう遠くない未来に再びゴールを奪い出すはずだ。
もがきながら一つずつ経験を積み重ね、さらなる成長を遂げる。そうしてトップチームの舞台に立つ日を楽しみに待ちたい。


