試合二日前に告げられた新ポジション
J1柏レイソルの新シーズンはこの男にかかっているかもしれない。
第30回ちばぎんカップが1月31日に千葉県の三協フロンテア柏スタジアムで行われ、柏はJ1ジェフユナイテッド千葉と対戦した。
2連覇を目指す柏の左ウィングバックには、昨季途中にアルビレックス新潟から完全移籍で加入したFW小見洋太がスターティングメンバーに名を連ねた。
トップ下やシャドーを主戦場に世代別の日本代表にも選ばれていた背番号15だが、柏ではここまでリーグ戦で先発出場の機会がなく、途中出場の7試合にとどまっていた。
「悔しかったですね。でもそれが評価ですし、チーム状況も良かったから仕方がないと受け止めていました」
加入当初はリカルド・ロドリゲス監督のサッカーへの適応に苦しみ、戦術理解に時間を割いた。そして、「オフで一回サッカーから離れて、頭がクリアになった状態で、良くないところをそぎ落とすことができた」と今シーズンへ入った。
1月10日から始まったトレーニングキャンプでは右ウィングバックを任されるも、先発では一度も使われなかった。このポジションはちばぎんカップでもスタメンだったMF久保藤次郎が定位置をつかんでいたが、試合の二日前に左ウィングバックでの起用を告げられた。この起用について小見は「モチベーション高く取り組んできたことが、こうやってスタートで使ってもらえたことにつながっている部分があると思います」と振り返る。
昨シーズンにおける柏の左ウィングバックは、リーグ戦37試合に出場していたMF小屋松知哉が任されていた。しかし小屋松は今オフに名古屋グランパスに完全移籍。昨季のちばぎんカップMVPにも輝いた男のポジションを誰が務めるかは、この日の注目ポイントでもあった。
左ウィングバックはリカルド・ロドリゲス監督のサッカーを体現する上で重要なポジションだ。
小見は「コヤくん(小屋松)はコヤくんなので、彼を目指すことはできませんし、諦めています」としつつ、「だから与えられたポジションで自分の良さを発揮していくことをどこまでできるのか。チャレンジしていきたい」と語る。
©Hiroto Taniyama
いい競争、より激しい競争ができている
小見はこの日、左サイドでボールを受ければ、積極的な仕掛けで千葉のディフェンス陣を翻ろうした。推進力のあるドリブルと強烈なシュートで脅威となり続け、守れば素早い切り替えで攻撃の芽を摘んだ。
「ウィングバックなので、よりスペースのある深い位置でボールを受けてからスタートできる。自分のドリブルを生かすスペースは、シャドーのときとは違った形で生かせると思う」
小見の躍動が好影響をもたらしたと語るのは、逆サイドの久保だ。
久保は「小見ちゃんがすごく生き生きとやっているなと感じていました。逆サイドが押し込んでくれると、自分もゴール前に入っていけますし、逆サイドからも高い位置でボールを受けられる。すごくいい状況だと思います」と手ごたえを口にした。
試合は柏が圧倒し11分に中川敦瑛のゴールで先制するも、65分にヘディング弾を決められて1-1の同点に。しかし、83分に左サイドからのボールを相手ボックス付近で受けた久保が中央に切り込んで左足一閃。これが決勝点となり、柏が2-1でちばぎんカップを制した。
シーズンの前哨戦で存在感を放った小見だが、「僕が二日前にスタメンを知らされたように、誰が出るかは分かりません。いい競争、より激しい競争ができている」と慢心はない。
目指すは今年1年間での二ケタ得点だ。そのための通過点として、来週8日に初戦を迎える半年間の明治安田J1百年構想リーグでは5ゴールを目指す。
「監督からはウィングバックが仕掛けることを強く求められています。右には日本代表にも入っている藤次郎くんがいるので、右サイドは対策される。僕も負けないようにしたいですし、そのなかで僕がどこまでできるのか。今シーズンのチームがどこまで行けるのかを占うポジションだと捉えています」
昨季の悔しさは、与えられたポジションで晴らす。試合を終えた小見の首元には、相手選手との競り合いで負った傷が「戦った証」として光っていた。
取材・文=浅野凜太郎



