カタールで開催中のU-17ワールドカップは、18日(現地時間)にラウンド16の戦いを迎えた。U-17日本代表はU-17北朝鮮代表と対戦。1点を先行しつつも追い付かれる苦しい流れになったが、迎えたPK戦では5人のキッカー全員が成功。5-4のスコアで北朝鮮を退け、8強進出を果たした。
取材・文=川端暁彦/写真=佐藤博之
■「PK戦に弱い」日本代表
©Hiroyuki Sato
「反町さんも喜んでくれるんじゃないかな」
U-17日本代表のチームスタッフがそんな言葉を漏らしたのは、試合後に帰りのバスへ向かっていく最中のことだった。
U-17ワールドカップのラウンド16の北朝鮮戦は、いわゆる“PK戦”での決着となったが、このPK戦については、同じカタールで開催された2022年のワールドカップから、日本代表の主要テーマの一つとなってきた。
日本は同大会でドイツ、スペインを破ってグループ1位通過を果たすも、ラウンド16でPK戦の末にクロアチアに敗退の憂き目を見ることとなった。その直後、反町康治技術委員長(当時)は今後の課題として「PK戦の強化」を真っ先に挙げることとなる。
「PK戦は運に任せるで終わってしまうのではいけない。もちろん、運の要素もあるが、少しでも勝率を上げる方法はあるはずで、そこを突き詰めないといけないんじゃないか」
実際、世界大会における日本代表が「PK戦に弱い」と言われてしまうのは否めないところだろう。
FIFA主催の世界大会においては、A代表が直近のクロアチア戦に加え、2010年W杯のパラグアイ戦でも同様に16強で苦杯。年代別代表では2007年のU-20W杯の16強でチェコにPK負け。U-17W杯でも 2017年にイングランド戦で、やはり16強でのPK負けを経験してきた。
唯一の例外が、準優勝を果たした26年前の1999年ワールドユース(現・U-20W杯)の16強でポルトガルにPKで勝った試合となる。
またFIFA主催大会ではないが、五輪においては2021年の東京五輪の準々決勝でニュージーランドに勝利しており、2000年のシドニー五輪では同じく準々決勝にてアメリカにPK戦で敗れている。
いずれにしても、主要な世界大会でのPK戦の勝率が低いことは否めず、しかもちょうど16強くらいでPK戦が回ってくるという点も共通している。
そうした流れを踏まえ、「トーナメントで上を目指すなら、PK戦は避けて通れない要素。ここに手を付けないわけにはいかない」(反町委員長・当時)という結論に達したわけだ。
完全な余談になるが、この話を伝え聞いた浦和レッズのスコルジャ監督は「だから日本人はすごいんだ!スペインとドイツに勝って満足するのが普通なのに、すぐにもっと良くなるための戦いを始めている」と絶賛したそうである。
■始まった“PK強化”
©Hiroyuki Sato
委員長の大号令の下、2022年の12月に南米遠征中だったU-17日本代表にまでその指示は伝わり、たとえ親善試合であっても相手国に「PK戦までやろう」と申し出て、まずは数をこなすことを目指すこととなった。
実際、この遠征から各年代別の日本代表では、練習試合で(引き分けでなくとも)PK戦を実施するようになり、今回のU-17代表も同様にこなしてきている。今大会直前に行われた大学生との2度の練習試合でも、PK戦まで行っている。
もちろん「親善試合のPK戦と本番のPK戦が違うものだというのは当然わかっている」(反町委員長・当時)。ただ、トレーニングとして味方同士で行うPK戦よりも緊張感が高いのもまた事実。データの乏しい未知の相手にどう対応するかという点が問われるのも好材料だ。
また蹴り方そのものを含めて、映像分析を交えてノウハウの蓄積もできるようになった。もっと単純に「誰にキッカーを任せるべきか」という命題についても、蓄積ができた意味は実際に小さなものではなかった。
今大会に入ってからも、廣山監督は「PK戦はどこかであるもの」と想定していることも明かし、その練習は継続して行ってきた。ラウンド16の前日練習でも入念な確認を実施。指揮官が「誰を何番手に蹴らせるか」を決断する上での材料はかなり揃っていたように思う。
PK戦にエネルギーを割くことについて、ポジティブでない指導者も少なくない。ただ、カタールW杯以降「PK戦は運だから」とか「PK戦で負けるのは仕方ない」という、日本サッカーにおいて一定の市民権を得ていた考えではなく、「PK戦で勝てる国にする」という方向へ舵が切られていたのは確かだ。
もちろん、「PK戦に力を入れたら勝てるようになる」などという甘い世界では決してないのだが、それでも確率は上げられる。「しっかり練習からやってきたんだから」という選手個々が持つ自信のベースも付けられる。その意義は小さなものではない。
■PK勝ちも未来への布石
当然ながら、90分で良いゲームをして勝てるのがベストではあるが、そうでない試合も出てくるもの。キャプテンのGK村松秀司(ロサンゼルスFC)の言葉を借りれば、「みんな人間だから、常に100点とはいかない」。逆に言うと、チャンピオンになるチームは、そういう試合をPK戦であっても拾っていくものである。
指揮官はPK戦についてこう語る。
「PK戦については、かなり想定をしていた。オーダーについても、最後の交代で小林柚希(大宮U18)を入れたのもその一環。『PKでも勝ちにいく』というのはミーティングから話していたし、(PK戦が)始まる前は『信じて思い切り蹴ってこい』と言って、短く終わりました」
結果として相手の一番手が枠を外したのに対し、日本は指揮官が指名した5人全員が成功。1-1の同点からPKスコア5-4で北朝鮮を下し、8強進出となった。
廣山監督は「今日蹴って決めた選手は自信にしてほしい。サムライブルーとして同じPK戦の舞台になったとき、『同じような場面で1回決めている』となれる選手はだいぶ強いですから」と、PKを決め切った自信も将来への財産になると強調する。
その上で、さらにこうも語った。
「PKは本当にサッカーの大きな要素。PKを蹴ることは選手としての価値としても大きい。まずそこで日本人のプレゼンスを高めたい。ヨーロッパの主要リーグで見た時に、日本人がPKを任されて蹴る風景が当たり前になってほしい。やっぱりそのメンタリティーとか決定力を持つことが、最後にW杯で優勝するためのピースだと思っている」
PK戦の末に悔し涙ばかりを残した2022年のカタールW杯。それから3年後に同じ国で行われている17歳以下のW杯にて、日本サッカーは違う姿を見せることになった。


