今夏のパリ五輪、なでしこジャパンは準々決勝でアメリカ代表に敗れ大会を去った。大会終了後に池田太監督が退任し、パリを目指してきたチームは解散。26日の国立競技場での韓国代表戦はパリ以来、最初の活動となる。パリ五輪の10番を背負った長野風花(リヴァプール)も新生・なでしこジャパンに名を連ねている。
■五輪で感じた勝負強さの差
「目が覚めると悔しさが蘇ってくるんです」
優勝を目指しながら、準々決勝で敗退。五輪から時間が経っても、その悔しい思いは長野風花の心に深く刻まれている。8月3日のアメリカ戦は90分で決着がつかず、延長前半のアディショナルタイムに失点。諦めず攻勢をかけるもそのままタイムアップ。試合後、120分を戦った長野は人目を憚らず涙を流した。
「本当に何が起こったのか自分でもわからないくらい涙が出てきました。チームを勝たせられなかったという悔しさと、この舞台で終わりたくなかったという気持ちが混ざっていました」
「正直、失点する気はしなかったんです。自分たちのほうが体も動いていたし、守備もうまくいっていました。でも、あの一瞬で試合が決まってしまったんです。だからこそ、自分たちが点を取れなかったことが本当に悔しかった」
日本は試合中、優位に立つ場面もあったが、決定的な瞬間に勝負を決められなかった。痛感したのはアメリカとの「勝負強さ」の差だ。「アメリカがあの時間帯にあのプレーをして、決めてきた。本当に強い。私たちにはまだその部分が足りていなかった」。アメリカは延長前半終了間際に、センターサークル付近からロングボールを前線に送り、右サイドで受けたロッドマンがDFを交わすと左足でコントロールショットを決め、均衡を破っていた。
■新生・なでしこへの期待
Getty Images「でも、絶対に無理だとは思いません。私はもう一度、なでしこジャパンを世界一にしたいんです」
そのために目指すべき未来は明白だ。「試合を支配するだけでなく、決定的な場面でしっかりと得点を奪う強さを持つこと」が今後の課題となる。「これからは、もっとボールを持つ時間を増やして、チャンスを作り出す必要があります。守備はもちろん、攻撃のクオリティも上げていかなきゃいけない。次に向けて、全員が同じビジョンを持ってプレーしていきたいと思います」と話す。
18日のメンバー発表会見で、佐々木則夫女子委員長が「年内には決めたい」と語ったように、新チームの監督・スタッフはまだ正式には決まっていない。今回の活動期間は佐々木委員長が監督代行、9月のU-20女子W杯で準優勝を果たしたU-20女子代表監督の狩野倫久氏、そして元日本代表DFの内田篤人氏がコーチを務める。
チームとしての新たな挑戦が始まる中、長野もその変化に期待を寄せる。「(今後決まる)新しい監督がどういうサッカーを目指していくのか楽しみですし、私たちもそのビジョンに合わせてさらに成長していきたいと思っています」。そして、「韓国戦は重要な試合になりますし、全力で臨むつもりです。次に向けて、一歩一歩成長していきたい」と決意を込めた。
韓国戦のメンバーはパリ五輪を戦った選手に加え、U-20女子代表からも、W杯で主将を務めたDF小山史乃観(ユールゴーデンIF)やFW松窪真心(ノースカロライナ・カレッジ)ら複数人が招集されている。メンバー発表会見で佐々木監督代行は「単純な前試合のみならず、2027年W杯ブラジル大会、2028年ロサンゼルスオリンピックに向けての準備として意義のある試合にしたい」と述べた。3年後、そして4年後へ。個人として、そしてチームとして世界の頂点に立つために、彼女たちの戦いはまだ終わらない。
◎取材=佐々木バーンズ千尋 構成=吉村美千代(GOAL編集部)
【試合情報】
「MIZUHO BLUE DREAM MATCH 2024」
日時:10月26日(土)14:20キックオフ
会場:国立競技場
対戦カード:なでしこジャパン(日本女子代表)vs 韓国女子代表