■平日のナイトゲーム、来場者は
カカ、ダビド・シルバ、ミチェル・サルカドなど、ワールドカップや欧州CLで活躍した世界のレジェンドたちを擁するワールドレジェンズと、岩本輝雄氏、大久保嘉人氏、松井大輔氏らを始めとするJクラシックが27日(火)19時に相対した。ある世代には「刺さる」選手たちの一戦は、ワールドレジェンズが4-3でJクラシックを破った。
大会関係者によると、この日は平日のナイトゲームにもかかわらず、約8,000人が来場。同じくニッパツで、5月22日(水)19時に行われた2024JリーグYBCルヴァンカップ1stラウンド横浜FC対名古屋グランパス(1-3)の一戦が、入場者数3,423人であることを考えれば、決して低くない数字だ。
試合前から、スタジアム周辺には往年のレジェンドたちを応援するファンが集まった。ジェフユナイテッド千葉で活躍した佐藤勇人のマフラーを首にかけるファンや、浦和レッズ元10番柏木陽介のユニフォームを着用した男性などのJリーグファン。また、選手入場入口前には多くの海外サッカーファンが詰めかけ、「カカー!」「ジーダ!」などと、レジェンドたちの集結に沸いた。
試合では、現役引退から長い年月が経った選手たちは歩いてしまったり、プレスをかけられなかったりする場面もしばしば。また、スタジアム実況の言い間違いなどもあって、バチバチの雰囲気を生み出すことはどうしても難しかった。
しかし、駆けつけた観客は、随所に観られた選手の現役時代さながらのテクニック、「らしい」プレーに熱狂。特に、昨年引退したばかりのシルバはひときわ目立つ存在だった。
ロベール・ピレスの先制点をアシストすると、その後は得点も記録。極め付きは3-3の場面で迎えた試合終盤だ。シルバはボックス内左に侵入すると、相手DFを見事な切り返しで交わし、最後はダヴィド・トレゼゲにパスを出して、決勝点をお膳立てした。
試合後、Jクラシックの選手たちやファンからは「シルバはまだ現役みたい」「シルバはやばい」などといった声が聞かれ、元スペイン代表MFのプレーは「観に来て良かった」と思わせてくれるものだった。
Masahiro Ura■「来年はどうなるんでしょうか」
試合前後には選手たちからサインボールが投げ込まれたほか、試合中に流れ続ける音楽など、普段のサッカースタジアムではあまりない試みは新鮮でもあり、サッカー観戦というよりも、アイドルイベントに近い新しいスタイルの試合だったと言える。選手たちは、記者の目の前で子どもたちとの写真撮影やサインに応じるなど、気さくに対応するレジェンドたちとの交流は、横浜に集まったファン・サポーターにとって、特別な体験になったことだろう。
だからこそ、こういったサッカーを多角的に楽しめるイベントがさらに発展してほしい。
8,000人の観客は集まったが、15,442人を収容するスタジアムは満員にはならなかった。チケット料金を見ると、最低価格の6千円は集まったメンツの凄さを考えれば良心的ではあったが、メインスタンド側は1万円から2万5千円、最高価格のダイヤモンドVIP席は25万円と、なかなか手が出せる金額ではない。また本イベントの各種SNS、例えばXのフォロワーが2千人強にとどまっており、集客には課題が残ったとも言える。
「来年はどうなるんでしょうか」。開催に尽力した岩本氏は、試合終了後のインタビューで含みのある回答をしている。動画配信サービス『FOD』などによる生配信もなされたが、試合の開催自体が届くべき層に届いていなかったのかもしれない。
サッカー人気が下火になっていると嘆かれる昨今。世界を相手にしたレジェンドたちと往年のJリーガーによる戦いは、新たな可能性を感じさせた。ゲームやTVの中でしか見たことのない選手のプレーに接する高揚感はもちろん、シルバのような現役引退直後の選手を呼べるのならば、スポーツ観戦としての盛り上がりもさらに増大するだろう。「一生に一度観られるかどうか」ではなく、この大会がサッカー界を盛り上げる一助にもなってほしいとの期待を抱かせる一戦でもあった。(取材・文=浅野凜太郎)
