チーム内序列:中心選手
ノルマ: シーズンを通して安定した出場・パフォーマンス
目標:チームの1部残留
文=山口裕平
■名門の主将を務める重責
酒井高徳のキャプテン2シーズン目が始まる。昨季の序盤、最下位に沈んでいたクラブのキャプテンに就任すると、最終節の土壇場で残留を勝ち取ってみせた。ハンブルガーSVはブンデス創設から1部を守り続けている唯一のクラブで、日本人選手がそんなクラブのキャプテンを務めることは非常に誇らしいことである。
しかし、それは同時に、途絶えさせてはならないクラブの歴史を背負うという非常に大きな重圧と戦うことになる。昨季終了後、今季のキャプテンを誰が務めるかオープンな状態になっていたが、マルクス・ギスドル監督は再び26歳の日本人を指名した。酒井も「非常に名誉なことで、またそんな重要な役割を担うことができて喜ばしい」と快諾した。
昨季の後半戦、ハンブルガーSVはリーグ7位の成績を残した。今季も降格候補として名前が挙げられているが、集中力を切らさずにシーズンを戦うことができれば残留争いに巻き込まれる事態にはならないだろう。それだけのポテンシャルは持っている。
しかし、「集中力を切らさずに」というミッションをやり遂げることは簡単ではない。平均年齢24.3歳というリーグ3番目の若さゆえか、一度リズムが狂うと崩壊を食い止めることができないからだ。
シーズン最初の公式戦となったDFBポカール1回戦では、3部オスナブリュックに退場者が出ると、慎重になりすぎてペースを崩してしまった。ワンチャンスから先制を許すと、失点を重ねて最終的には1-3で敗戦。個人としても改めてキャプテンに就任し、契約更新の話も出始めている中で不安なスタートとなってしまった形だ。
もっとも、そんな状況でこそ、キャプテンのキャプテンとしての働きが求められてくる。ギスドル監督からは「昨シーズンも多くのことをすでに上手くやってくれたが、今季はより多くの責任を担ってくれることを期待している」と伝えられた。まずは残留という最低限の目標をクリアするために、チームをけん引していかなければならない。
オスナブリュック戦後、酒井はこんな言葉を発していた。
「より深くコミュニケーションを取ろうかなと思うし、こういう状況だからこそ何かしゃべらないといけないこともあるのかなと思うので、選手とはいろいろコミュニケーションを取ろうとは思います。だけど、それ以外は特に変えようとは思っていません」
シーズン途中に主将に就任した昨季と違い、今季は開幕からその役割を与えられている。チームを残留に導いたスタンスを継続しつつ、新しいシーズンでどのような“主将・酒井高徳”の姿が見られるのだろうか。注目点の一つであることは確かだろう。
■昨季以上のフレキシブル起用に?
キャプテンを務めていることもさることながら、プレー面でもギスドル監督の酒井へ対する信頼は絶大だ。基本的なポジションは右サイドバックだが、左サイドに不安があれば酒井を左に配置し、ボランチに満足がいかなければ今度はボランチで起用するほど。昨季は試合中に一度のみならず、二度ポジションを変えることがあった。
単純に右サイドバックのポジション争いだけ見れば、デニス・ディークマイアーが酒井のライバルとなる。もっとも、酒井が様々なポジションで起用される可能性があることを考えれば、ライバルというより貴重なバックアッパーという表現のほうが適切かもしれない。
今季を迎えるにあたり、酒井本人は「ボランチではあまりプレーしたくないですね。どちらのサイドでもいいけど、サイドバックとしてプレーしたい。僕らにはいいボランチがいるから、今季もまたボランチでプレーしなければならない心配はしていません。(ただし)シーズン中にディフェンスラインの前でプレーしなければならないことになれば、その時は喜んでチームを助けます」とボランチ起用には消極的な態度を示している。
しかし、今季の守備陣はレンタルで加入していたセンターバックのキリアコス・パパドプーロスを完全移籍で買い取った以外は若手選手の補強を行ったのみ。左サイドバックのレギュラーだったマティアス・オストルツォレクが去ってサントス一枚になったことを考慮すれば、やや戦力ダウンしたとさえ言える。ボランチはワラシとギデオン・ユング、ケガがちのアルビン・エクダルに18歳ヴァシリエ・ヤンジチッチが下部組織から正式昇格したのみで顔ぶれが変わらない。チームの状況を加味すれば、今季も酒井がフレキシブルに起用される可能性は十分にあると言っていいだろう。
キャプテンとして、一人の選手として、昨シーズン以上にハンブルガーSVで重要な役割を担っていくことになりそうだ。
文=山口裕平
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