酒井宏樹と川島永嗣、フランスで対峙した2人が抱えるそれぞれのチャレンジとは?

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マルセイユのレギュラー、メスの守護神として再びフランスで相まみえた2人。試合後に話した談話から見えてきた次なるチャレンジとは一体何なのだろうか。

2月2日に行われたマルセイユ対メスの対戦は、マルセイユが試合開始後わずか6分の先制点を皮切りに大挙6得点。気が緩んだのか、後半ディフェンスに隙が出て相手に3得点を許したが、6-3で快勝した。

試合後ミックスゾーンで顔を合わせたマルセイユのDF酒井宏樹とメスのGK川島永嗣。酒井は開口一番、「あの3点、なんなんだあれ〜?」と終盤の3失点に苦笑。

続けて「メス、ラインがむちゃくちゃ高くないですか? エイジさん、マジきついんじゃ…」と言いながら尊敬してやまない大先輩に、丁寧にクラブの紙袋に入れた自分のマッチシャツを手渡した。

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お返しに川島もカバンの中からユニフォームを取り出す。仲睦まじい日本代表2人の様子をおさめようと、地元メディアのカメラも集まってきた。

今季のリーグ・アンは、念願のネイマールを手にいれたパリ・サンジェルマンが独走状態で、優勝争いに面白みはないのだが、その分、昨年の王者モナコにマルセイユ、リヨンが加わった三者による2位争いが白熱。もっぱらファンの興味はこちらに集中している。3クラブが同じ勝ち点で並ぶ節も多く、最終的には得失点差で順位が決まるかもしれないほどの接近戦だから、マルセイユは迂闊に3失点もしている場合じゃないのだ。

「(三者争いでリーグが)盛り上がることはとてもうれしいし自分たちが盛り上げているんだな、という実感はあります。向こう(他の二者)がつまずくのを期待していますけど、僕らが勝たないと意味がないので今日みたいな試合でしっかり勝つことができれば。逆に、6-0、6-1で勝って(気が)抜けてしまう、ということがないように今日は6-3で勝ったんだと思えれば、結果として良かったんじゃないか…と思えるようになればいいんですが…」

ディフェンダーとしてはやはり73分からの3失点は相当悔しかった様子。しかしドイツのハノーファーで降格争いを経験している酒井は、「単純にサッカー選手として、自分がそこの(上位を競う)ポジションにいるというのがうれしいです」と充実した表情を見せた。

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このメス戦もそうだが、ここ最近酒井は左サイドバックでプレーしている。正左SBで、フランス代表にも招集されている若手のホープ、ジョーダン・アマヴィが負傷中、パトリス・エブラは昨年11月の観客への足蹴り事件で脱退、控えのアンリ・ベディモも長期療養から復帰の途中と、緊急の人材不足に陥ると、ルディ・ガルシア監督は本職右SBの酒井を左で起用した。

この冬のメルカートでは新戦力を獲得する話も上がったが合意には至らず、酒井が左、右サイドで酒井のバックアップを務めるブナ・サールが右を担っている。

この日は5-0で勝利がほぼ確定した60分、ガルシア監督は試合勘を取り戻したいベディモを左サイドバックに送り出したため、そこからラストまで酒井は久々に右サイドでプレーした。

「楽しかったです。いままでやっていた人たちが近くにいたのでストレスなくいつもどおり試合に入ることができたし、(勝っていたので)会場の雰囲気も良くてすごく楽しい時間でした」と本職での楽しさを満喫したという酒井。

「左は『勉強』と思ってやっています。どこで出ようがプロの世界では結果を出さないと。『普段右だから左では…』ではしょうがない。そこでどれだけ結果を出せるかなので毎日100%でやってます」

相手チームの川島も「(左でも)そんなに遜色なかった。逆にもっと攻撃をしてこないかと思っていたけれど、がんばって左でも上がってきて、攻撃にも絡んでいた」と感想を口にし、メスのアンツ監督も、特に本業でない右SBが守る左サイドから攻めようという戦術を施すことはなかったという。

この経験でユーティリティープレーヤーになる?というのは「自分にはあんまり似合わないですけどね(笑)。そういうのは器用な選手がやることであって」と彼らしく謙遜したが、「このレベルでやれたら将来に役立つ」と手応えは感じている。

アマヴィが復帰しても、本職のベディモを差し置いて、左SBの控えは酒井になるというから、自己評価以上に周囲からは認められているということだ。

入団1年目の昨季はわずかな順応期間を経て正右SBに定着、そして2年目の今季はプレーの幅を広げている酒井。自身のマルセイユでの経過を振り返り、「周りのレベルは(ドイツと)比べて非常に高いですね。それによって自分のモチベーションやコンディションが上げられているのは確かです。今のように順位が高ければサイドバックは評価される。僕がうまくなっているとか才能とかではないです。ただ誇れるとしたら、自分のプレーをわかってくれるようにチームメイトとコミュニケーションをとれたということ、そこを早くすることができたのが、僕が唯一した努力かな」と話す。

ガルシア監督のサッカー観にも強く影響を受けている。具体的には「それは教えられないですよ!」と秘密だそうだが、彼のもとで酒井は、試合中なにが起きても冷静に対処できる術が身についているという。

「彼のもとでプレーできてよかったです」

ガルシア監督の方も、素直にどんどん監督の教えを吸収し、本職以外のポジションでも懸命に努力する酒井のような選手がいてくれてよかったと思っていることだろう。

ここからの終盤戦、取りこぼしの許されない超接近戦に挑むマルセイユにとって、酒井は欠くことのできない戦力だ。

一方、川島永嗣が後半戦に挑むのは、リーグ・アン残留をかけた戦いだ。

スコットランドのダンディー・ユナイテッドやベルギー時代のリールセではやはり残留争いを、スタンダール・リエージュでは上位争いを経験している川島は、「自分自身は与えられたところで最善のことをやるしかない。上にいるチームと下のチームは難しさが違うので、下にいるチームの難しさはあるとは思いますけど、GKとしては難しいシーンで絶対に自分がいいパフォーマンスを出さないといけないし、それだけでなくチームをより引っ張っていけるようにやらないといけない」と話す。

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ただ、このマルセイユ戦は大敗したが、12月中旬のモンペリエ戦を皮切りに5試合無敗を続けたメスは、序盤の頃とは見違えるほどプレー内容も自信も向上している。

酒井も、11月に対戦した前回と比べて(0-3でマルセイユが勝利)、「特に攻撃陣がすごく自信を持ってやっていて一体感があった。最近ずっと負けていないし自信を持っている感じがするので、いつもだったら取り切れるのに結構取り切れないところが多くて、数的同数だとかなり難しい」と変化を感じていた。

序盤はゴールが枯渇していた新加入のFWノラン・ルーが、12、1月の2カ月で6得点と当たりが出始めたのも朗報だ。

「前からプレッシャーに行ったり、ゴールに向かう強さというのは以前よりあると思う。そして、そういう意識があるから、(ストライカーが)ゴール前に行ったときにボールが出てくるようになった」(川島)

11月の12節から指揮をとるフレデリック・アンツ監督は、ルマン時代は可愛さあまって松井大輔をしごいていた指揮官だが、その後もバスティアやモンペリエなど、窮地にあるチームを立て直した経歴をもつ。彼がより厳しい姿勢で、試合ごとに細かく指示を出す指導をしていることも奏功しているようだ。

「やることは今までよりも全然厳しくやっているしディフェンスの部分でも攻撃の部分でも、試合前は結構はっきり言ってくれるのでそういう意味でのやりやすさはあると思う。どうプレッシャーにいくか、どういうふうに自分たちがボールを奪いにいくか、攻撃の部分でもどう自分たちが組み立てていくかを含めて試合前にはきちんとそういう話があるので」

このマルセイユ戦でも、川島は「今日の試合に関しては点をとれたとしても自分たちがポジティブになれる内容はなかった」と話したが、相手の守備が緩んだとはいえ、マルセイユというチームを相手に、彼らの本拠地で5、6点ダウンという展開で、終盤になっても気持ちを切らさず3点取り返したのはポジティブな兆候だ。

「こういう上のクラブに少しでも自分たちがポイントを稼いでかないと追いつかない。とにかく今の流れを自分たちは続けないといけないし、こういう厳しいゲームをしていかないと難しいかな、と思います」と川島は現実的に現状を見据える。

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今季の前半は若手のトマ・ディディヨンと交代でゴールを守ったが、12月から正GKに定着。1月にヘルニアの手術を受けたディディヨンは、3カ月はプレーできないとのことで、GKコーチも「我々スタッフは川島に全幅の信頼を置いている。我々の使命は残留だ。そのためにリーグ戦を最優先する。カップ戦では休ませることも考えるが、リーグ戦はラストまで彼がゴールを守る体制でいくだろう」と話す。

「ストラスブール戦以降、エイジもさらに強さを増して自信をもってプレーできているし、失点が減り、勝ち試合も増えていることでアタッカーを含めたチーム全体が自信をもってプレーできるようになってきた」とコーチの信頼は厚い。

「ゲームの中で自分が決定的な仕事ができなければ残留というのは絶対にないと思うし、自分自身に課された役割というのは大きいもので、1試合1試合やっていくしかない。プレー的には良い目的をもってやれているので、それを続けないと…。今日はちょっと全然ダメでしたけど……(苦笑)」

正GKとして残留争いに挑む覚悟を語った川島は、最後は少し笑顔も見せた。

6失点というGKにとってことさら厳しい結果のあとでも、丁寧にメディアに応じる川島はやはり器が大きい。その姿を見て酒井も「エイジさんは大人ですからああやって対応してくれていましたけど、僕がエイジさんだったら絶対に誰とも話したくないです…さすがプロだと思います」と思わず感嘆していた。

川島の寛大さや包容力、そしてキャリアで様々な苦難を乗り越えてきたタフさは、今のメスがまさに必要としているものだ。

マルセイユの酒井とメスの川島。それぞれ置かれている状況、立ち向かうチャレンジは違うが、この現状の中でどう結果を出していくか、何を追求していけるかというところに選手としての成長がある部分では共通している。

そしてそれが、ワールドカップに挑む日本代表の力にもなる。フランスで奮闘する彼ら2人の後半戦に期待したい。

取材・文=小川由紀子

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