Niko Kovac - Bayern MunichGetty Images

避けられなかったコバチ解任。明らかな失敗もバイエルンが踏みだした新たな一歩

急転直下の発表だった。

一部報道によると、ニコ・コバチは教え子たちに別れを告げることもできず、練習中の選手たちもこのニュースに驚いたという(後に練習場で正式な別れを告げる場が設けられた)。

バイエルン・ミュンヘンが3日にコバチ監督の解任を発表した。今季はリーグ戦10試合で5勝にとどまり、中でも守備面が問題に。解任が決まるまで、直近の公式戦8試合のうち7試合で複数失点を喫するなど、不安定さを露呈していた。ロベルト・レヴァンドフスキの開幕10試合連続ゴールや上位クラブの苦戦といった外的要因もあり、首位とは4ポイント差であったが、首脳陣は日曜日に三役(ウリ・ヘーネス会長、カール=ハインツ・ルンメニゲCEO、ハサン・サリハミジッチSD)で相談の上、決断を下すに至った。

■なぜ解任に追い込まれたのか?

GERMANY ONLY FC Bayern Eintracht Frankfurtimago

昨シーズンから火種は燻っており、解任騒ぎは何も初めてのことではない。昨季序盤の2018年10月、公式戦4試合勝利なしなど不振に陥った際にはメディアから執拗に攻撃され、クラブ首脳はそうした動きを牽制するために会見を開いたし、シーズン終盤の5月にも突如解任報道が流れて、クラブは否定する声明を出す羽目になった。火のないところに煙は立たない、ではないが、昨季を2冠で終えたところで、バイエルンがコバチ体制に諸手を挙げてサポートしているわけではないことは明らかだった。

パフォーマンスに関して、攻撃でのバリエーションの少なさはずっと気がかりであった。その中で、チーム内外からの逆風が強まったのが昨季のチャンピオンズリーグでの早期敗退。のちに頂点に立つリヴァプールとラウンド16で当たったのは運が悪かったが、初戦をスコアレスで終えて迎えたセカンドレグは疑問が残る采配だった。勝利が必要な試合で先制され、すぐに追いついたものの、そこからはカウンターに怯える及び腰の戦いぶり。最終的には3失点で敗れ去り、ロベルト・レヴァンドフスキやチアゴ・アルカンタラといった主力がそのアプローチに不満を示したことで、5月の解任報道へとつながっている。

今季はリーグ戦10試合で25ゴールを生みだし、リーグ最多得点を記録。しかし、レヴァンドフスキやニャブリら強烈な個を持つ選手の好調ぶりに牽引されているだけで、再現性は低く、練習で準備していたものが試合で披露できているとは思えない。ニャブリやキングスレイ・コマンのスピードを活かし、レヴァンドフスキの決定力に頼るやり方は強力かもしれないが、クリエイティブと言える代物ではなく、トップオブトップに通用しないことは昨季のリヴァプール戦で証明済みだ。

さらに、数字の上で明らかに改善が必要となったのが守備。ニクラス・ジューレ(前十字靭帯断裂)やリュカ・エルナンデス(足首の靭帯損傷)といった最終ラインの柱が大ケガを負ったのは不運であったが、リーグ戦10試合で16失点を喫しているのは王者のそれではない。コバチ自身も「昨季と比較して、守備が悪くなった」と自覚していたが、最後となったフランクフルト戦で5失点を喫しているのだから改善の兆しは見られなかった。この試合に関しては開始10分で10人となっており、情状酌量の余地はあるにせよ、「5失点は許せない」とはマヌエル・ノイアーの言葉。遅々として進まない守備の改革に誰もが不満をためていた。

Niko Kovac Bayern Munich 2019-20Getty Images

つまりピッチ上のあらゆるところで抜本的な変化が必要だったわけだが、毎試合後のコバチの記者会見には誰もが首をかしげた。

10月19日のアウクスブルク戦(△2-2)では、終盤に追いつかれる痛いドローで、選手たちは口々に反省の言葉を語った。その一方で、コバチは「本当にいい試合をしたと思っている」と切り出している。翌週のウニオン・ベルリン戦(◯2-1)では勝利したものの、昇格組を相手に2得点にとどまり、守備では2度PKを献上。それでも、コバチは「チームが見せたパフォーマンスには満足している」と総括した。指揮官はあえてポジティブな言葉を発信することでチームに発破をかけていたのかもしれないが、選手やサポーターとの溝は深まるばかりだった。

■大胆路線変更へ

Hans Dieter-Flick Bayern Munich 2019-20Getty Images

振り返れば、コバチ就任の経緯も引っかかる。2018年に、コバチはフランクフルトでのDFBポカール制覇というタイトルを引っさげて古巣へと帰還。当時のバイエルンはトーマス・トゥヘルのような劇的な変革をもたらせる指揮官を求めていたが、トゥヘルがパリ行きを決めたためにお鉢が回ってきたのがコバチだった。フランクフルトでの手腕を見れば、改革が期待できないわけでもなかったが、結局取り立てて大きな変化を残すことなくチームを去ることになっている。

シーズン中の解任という結果を見れば、意味するのは失敗以外の何物でもない。だが、アイデンティティの構築を目論むバイエルンとすれば、コバチを切り捨て新たな道へと歩みだしたに過ぎない。解任時のコバチの言葉を借りると、「正しい決断」だったのだ。

「ボールを持っていても、いなくてもイニシアティブを握りたい」

暫定監督に就任したハンジ・フリックはそう語った。コバチの隣に座り、今季からやってきた元アシスタントコーチが皮肉にも前指揮官以上にバイエルンの哲学を理解していたようだ。

むしろバイエルン首脳陣はこの機を待っていたのかもしれない。ヘーネス会長は常にコバチの後ろ盾となってきたが、ルンメニゲCEOがスペクタクルを提供しないチームにストレスを溜めていたのは周知の事実。新指揮官の最有力候補と目されているのは、アヤックスで魅力的なスタイルを構築したエリック・テン・ハーグであり、守備的なアプローチから入るコバチとは似ても似つかない。

誰とともに新たな航海に挑むかは不透明だが、その前にバイエルンには重要な一戦が待つ。9日のドルトムント戦だ。近年、「デア・クラシカー」と称されるようになった戦いは、クラブにとってリーグ戦の1試合以上の意味を持っている。

発表は突然、変化は一歩ずつ――。ホーム、アリアンツ・アレーナで相手はドルトムント。再スタートを切るのにふさわしい状況は整った。フリック暫定監督には、最低限納得のできる結果と新路線の芽吹きを感じさせるようなパフォーマンスが求められる。

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「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です

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