現在25歳のレオン・ゴレツカはプロのフットボーラーとして活躍するだけでなく、ピッチの外で起こる様々な問題にも頭を悩まし、それを公に発信している。
2月末にはホッフェンハイムとバイエルンの一戦が物議を醸した。敵地に乗り込んだ一部の過激なバイエルンサポーターが、ホッフェンハイムの実質的なオーナーであるディートマー・ホップ氏に対し、侮辱的なメッセージのバナーを掲出したのだ。それにより、試合は中断される事態となっている。
この“事件”が起きる少し前、『Goal』ドイツ版ではゴレツカにインタビューを行い、その人物像に迫った。インタビューでは社会的な問題に深く踏み込んでいる。
■「自分の影響力を利用したい」

――ゴレツカさん、アウシュヴィッツ強制収容所の解放75周年に当たる1月27日にホームで行われたシャルケ戦の際に、FCバイエルンのファンは元クラブ会員だったフーゴー・ライリングに敬意を表するコレオグラフィーを掲げましたね。ライリングはユダヤ人であったために国家社会主義の犠牲となって亡くなった人物です。あなた自身もツイッターで、記念サイトの公式アカウントをフォローするよう呼びかけました。こういった“記憶にとどめる活動”は大切なことですか?
当時起こったようなことが僕たちの歴史の中で二度と繰り返されてはならない。だから、そういう問題に注意を払って、繰り返し記憶を呼び覚ますことが重要なんだ。その意味で、この前のコレオのような行動が起こるのはありがたいことだと思う。この点でファンも僕たち選手も大きな責任を負っている。かつて、フリッツ・ヴァルター(ドイツ往年の名選手)は「国を代表する選手は皆短いズボンをはいた外務大臣だ」と言っていた。とてもいい言葉だと思う。僕たち選手は自分たちに向けられる注目を利用して、そういう問題に対して人々の注意を喚起するべきだ。
――十分にそういうことが行われていると思いますか?
最近の傾向を見ると、たぶんどちらかと言えば“ノー”だね。
――あなたはフットボール以外の様々なテーマについて、非常にはっきりと公に意見を表明していますね。
僕は自分の影響力を使って考え方を人に伝え、うまくいけばフットボールファンの若者たちの間に広めることができるし、手本のような役割を演じることができる。そうやって僕は、問題の解決に対する自分の責任を果たすことができるからだ。
■刺激を与える人物は…
getty Images――あなたは他のプロフットボールの選手たちにも同じように明確な態度表明を勧めたいと思っていますか?
それどころか一緒にやろうと呼びかけたいね。
――公の態度表明という点で、お手本としてあなたを刺激した人たちはいますか?
さっき挙げたフリッツ・ヴァルターの他に、“人種差別にノー”キャンペーンの取り組みに関わっているすべての選手たちもお手本だ。それから女子アメリカ代表でキャプテンを務めるミーガン・ラピノーもいる。彼女は政治的・社会的テーマに対してものすごくはっきり自分の態度を表明している。
――今までに公の場での自分の発言を後悔したことがありますか?
確かに僕はカメラの前でたくさんバカなことをしゃべってきたけど、真面目な問題について後悔するような失敗はないね。
――アウシュヴィッツの解放記念日についてあなたがツイートしたとき、どんな反応がありましたか?
身の回りにいる人たちからの意見が一番多くて、例外なくポジティブな反応だった。だけど全体として、世の中の人たちは公的生活を送る人間が信頼できる形で態度表明することを喜んでいるという印象を受けたね。ソーシャルメディアではそういう発言に対して炎上が起こりがちだ。それにどう対処するかは慣れの問題だよ。
――あなたはどう対処してるんですか?
本当によく考えて公正な批判をしているのか、単なる人心攻撃にすぎないのか、すぐに区別がつくものだよ。
――ソーシャルメディアに投稿したときはすべての反応に目を通すんですか?
それはなかなか難しいね。特に、僕はソーシャルメディアにあまり時間を使いたくないと思ってるんだ。だけど、ソーシャルメディア上で自分の社会的発言が称賛されているのを読むと、もっと続けようって力づけられるよ。
■ナチズムにも言及
Getty Images――国家社会主義(ナチズム)の問題に戻りましょう。ドイツ史のあの暗黒の時期について初めて真剣に考えるようになったのはいつのことですか?
学校に通っていた頃だね。けれど、自分が受けていた歴史の授業のことを思い出すと、もっと人の心を惹きつけるように授業を作ることもできたんじゃないかと思う。たとえば、当時身をもって経験した人たちに直接会ったり、山のようにある記録フィルムや記録文書を使ったりしてね。劇のように仕立てたものでは多くの人々の心に届かない場合が多い。僕も授業では正しい感じ方をつかむことができなかった。もっと後になってからやっと、ちゃんと理解するようになったんだ。
――では、自分から進んで個人的に情報を集めたんですね。
僕はたくさんの記録文書に目を通したり、当事者たちのインタビューを読んだりした。そうすると、必ずすぐに鳥肌が立ってきて、想像に浮かぶ当時の状況に対してまったく違う感情が湧いてくるんだ。この方がはるかに大きな教育効果があるよ。
――これまでに強制収容所を訪れたことはありますか?
12歳か13歳のときに、友達の家族と僕の父と一緒にダッハウの強制収容所へ行ったことがある。突然、何もかもがリアルに感じられるようになったよ。壁に掛かったたくさんの写真を見た後で中庭へ出たら、そこに間違いなく写真で見た場所がたくさんあることに気づいたんだ。その瞬間、僕の目から涙が流れ始めた。ありとあらゆる思いが一度に襲いかかって来たんだ。誰もが一度は強制収容所を訪れてみるべきだね。
■「人々は未来に不安を抱いている」
Imago Images――ドイツでは長い間、“ナチズムのような現象はもう二度と起こりえない”というコンセンサスが支配的でしたが、その点について確信を持てますか?
とにかく、大いに希望は持ってるよ。けれど、明らかに今はある種の傾向が存在する。ドイツの多くの人々が未来に不安を抱いていて、頼るもののない気持ちでいるんだと思う。そういう人たちにとっては、たとえば移民問題のように他のことに目を向けるのが解決策になることがよくあるんだよ。
――それに対してはどうしたらいいのでしょうか?
そういう人たちに知識を与えて啓蒙する責任を皆が負っているのだと思う。誰もが知識に基づいて理解力を高め、自分たちの本当の問題に気づいて対処するようになれば、右派ポピュリズムの問題も解決される。成功へのカギはあらゆる人々にこちらから働きかけることだ。そして、難解な言葉を使わずに、誰もが理解できる易しい言葉で語りかけることだ。
――あなたはどんなメディアから政治的・社会的な問題についての情報を手に入れているんですか?
もちろんネット経由が多いね。インターネットを見ていると、そういう情報に出くわさないわけにはいかない。それに、僕は経済紙を定期購読しているんだ。経済紙では紙面の多くが政治に割かれているけれど、他にもいろいろな問題が取り上げられている。とても詳しい記事で、たくさんの背景情報を含んでいる。仕事のない日にちょっとスポーツの世界から距離を置きたいと思うときには、それが気分転換になるんだよ。
――そういう類のテーマについてよく人と話すこともありますか?
僕は何かに気づくと、いつでもそれについて人と話したくなるんだ。だけど、僕は特に政治好きってわけじゃなく、家族や友人たちとそういう話題について話すのであって、彼らとは他のテーマについても同じようにおしゃべりしているよ。
――そういうテーマでチームメイトと話し合うこともありますか?
ロッカールームはそういうことをするには全然向いてない場所で、そこで問題になるのは僕らのフットボーラーとしての日常だけだ。そうあるべきだし、いつまでもそのままだろうね。だけどヨシュア・キミッヒやセルジュ・ニャブリ、ニクラス・ジューレ、マヌエル・ノイアー、トーマス・ミュラーのようなチームメイトと食事に出かけたりコーヒーを飲みに行ったりすると、そういう話題になることもあるね。
――ドイツで人種差別的事件が増加していることについて、あなたの同僚のジェローム・ボアテングが「すでに僕たちはもっと先へ進んだものと思っていた。確かにこういうことは以前もあったけれど、それにしても残念なことにちょっと後戻りしているね」と発言しています。あなたも現在の状況は間違った方向へ進んでいるという印象を持っていますか?
そういう類の事件が増えている気がするし、僕もドイツではもっと先へ進んでいると思っていた。今のような状況のせいで、僕はますます自分の姿勢を示す機会を増やして、自分の考えを公に表明したいと思うようになっている。けれど一方で、最近ヴュルツブルガー・キッカーズのリロイ・クワドォーがプロイセン・ミュンスター戦で人種的侮辱を受けたとき、ファンが警察を手伝って差別を行った人間を突き止めたというポジティブな例もあった。その上、スタジアムでは侮辱を受けた選手に対して声援が送られたんだ。これは、そういった状況の解決法として模範的な例の一つだ。そういう素晴らしくてとりわけ重要な場面に人々が注目するのは意味のあることだ。それによって連帯感が生まれ、右翼との闘いにおいて自分が一人じゃないと誰もが気づくことができるんだ。
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