Kevin De Bruyne Manchester City GFXGoal

進化を続けるデ・ブライネ:バロンドールも視野に捉えた至高のリーダー

■「短気な子ども」から成熟したリーダーへ

マンチェスター・シティがレアル・マドリーと激突したチャンピオンズリーグラウンド16のファーストレグ、ラヒーム・スターリングがエリア内でダニ・カルバハルからのタックルを受けてぎこちなくピッチに倒れこんだとき、重責を担ったのは他でもないケヴィン・デ・ブライネだった。

シティはPKキッカーの選定に悩まされていた。それもそのはず、スターリング、ガブリエウ・ジェズス、イルカイ・ギュンドアン、セルヒオ・アグエロがそれぞれ直前の4つのPKをすべて外してしまっていたのだ。

キャプテンマークを腕に巻いたデ・ブライネは、すぐに自分が蹴ることをチームメイトに告げ、スポットへと向かう。何度か深呼吸をした後、彼はベルギー代表でチームメイトのティボー・クルトワの逆を突き、3年半ぶりのPKを沈めてみせた。

Kevin De Bruyne Manchester City 2019-20Getty Images

この瞬間、人々は彼のフットボール選手としての進化を目の当たりにしたのかもしれない。彼は才能こそあれど短気なプレーヤーから、成熟した至高のリーダーへと変貌を遂げていたのだ。

デ・ブライネは感情的な選手と評価されることも多かったが、28歳という現在の年齢に近づくにつれてピッチの上で成熟していった。愛する家族と子供とともにマンチェスターで暮らしていることも大きな助けになったのだろう。

ヘンクで若きスター選手だった頃、彼は扱いの難しい選手として有名だった。彼自身はシャイで内向的であっただけで、決してトラブルメイカーではなかったことを主張しているが、いずれにせよそれが彼のキャリアに影響することはなかった。ジュピラー・リーグで頭角を現した彼は、すぐにチェルシーへの移籍を実現させる。

しかし、彼はスタンフォード・ブリッジで当時の指揮官ジョゼ・モウリーニョに「悪いしつけをされた短気な子供」と称され、トップチームでの活躍の機会を得ることができずクラブを去ることになった。とはいえ、デ・ブライネはチェルシーやモウリーニョを恨んでいるわけではない。レンタル移籍先のヴェルダー・ブレーメン、そしてその後完全移籍を果たしたヴォルフスブルクで、自由と冒険に満ちた彼のキャリアが花開いたのだ。

Kevin De Bruyne Manchester City 09122015

2015年の8月にエティハド・スタジアムに舞台を移してから、彼にかかるプレッシャーは増すばかりだったが、彼はマヌエル・ペジェグリーニが育てたチームにすぐにフィットし、チャンピオンズリーグでは準決勝進出に貢献した。

こうして知識と経験をモノにした彼は、今ではジョゼップ・グアルディオラの下で様々な役割をこなし、中心選手として輝きを放っている。ヘンクでトップチーム入りを果たした際、彼のベストポジションは中盤のサイド、あるいは攻撃的な背番号10といった取り返しのつかないパスミスを恐れずにプレーできるポジションだった。

今の彼は、クラブでも代表でも背番号8のポジションで起用されることが多い。そのポジションで彼はピッチ上をくまなく駆け回り攻守に貢献し、素晴らしいフィニッシュの精度で自らゴールを奪うこともある。

デ・ブライネを近くで見てきたある監督は、彼にシャビやアンドレス・イニエスタといったゲームメーカーを超える実力があると評している。バルセロナのレジェンドたちがプレースピードを緩める傾向がある一方で、彼にはスピードがあり、攻撃を加速させることができるからだ。

さらにデ・ブライネは中盤の深い位置で背番号6のポジションもこなす。グアルディオラと、ベルギー代表監督ロベルト・マルティネスの両者から当ポジションでの信頼を得ている彼は、パスでゲームを創るだけでなく、ゴールキーパーやセンターバックからのボールの供給先としても機能している。

「数年前なら、彼はチームの軸としてのプレーはできなかっただろう。周囲に指示を伝えることができなかったからね」アーセナルの現指揮官で、マンチェスター・Cでアシスタントコーチを務めたミケル・アルテタは『Pep’s City: The Making of a Superteam』の中でそのように語っている。

「だけど今は違う。彼はピッチ、チーム、要求、パスや動き方が重要な連動するフットボールを理解しているんだ」

しかし、ポジションが下がっても彼がクリエイティビティを失うことはない。コロナウイルスによるパンデミックで各国リーグが中断に追い込まれる前、デ・ブライネはプレミアリーグで16のアシストを記録しており、ティエリ・アンリが保持するシーズンレコードまであと5アシストに迫っていた。

■バロンドールは「いいところまで来ている」

De Bruyne Ballon d'Or GFXGetty/Goal

過去2シーズンほどの調子を維持できていないシティだが、責任感は彼をさらに成長させる。クラブと代表の両方で共同キャプテンを務めるデ・ブライネは、ダビド・シルバが一線を退けば、フルタイムでキャプテンマークを腕に巻く可能性がある。彼は経験豊かなスペイン人や、その前任者ヴァンサン・コンパニから多くのものを吸収しているのだ。

「大事なのはチームに貢献することだ。僕はチームメイトを助け、特に若い選手を導いているんだ。きっと役に立てているはずだよ。自分を追い込んでいるんだ。自分自身に対して自分以上にプレッシャーを与えられる人はいないからね。ハードワークで自分を限界まで追い込むことは、僕にとって当然のことなんだよ」

「調子がいいときがあれば、悪いときもある。だけどいいパフォーマンスが出せないときでも、仕事に徹してチームを助けなければならない。僕はミッドフィルダーだから、チームのためにベストを尽くしてチームの状態を良くするのが仕事なんだ。そこに一番の力を注いでいるよ」

チームプレーに徹する重要性を口にしたが、彼はたった一人で試合をひっくり返す力も持ちあわせている。シティのチャンピオンズリーグでのベストゲームにも数えられる、2月にレアル・マドリーを2-1で下した試合はまさに“デ・ブライネ劇場”だった。疲れ果てた状態で落ち着いて沈めたPK、ガブリエウ・ジェズスの先制点のお膳立てだけでなく、他にも多くのシティの決定機を演出した。

負傷の影響で昨シーズンは多くの出場機会を逸してしまったが、デ・ブライネは進化を遂げてピッチに戻ってきた。リヴァプールに独走こそ許してはいるものの、年間最優秀選手に彼を推す声も聞こえてくるだろう。

リオネル・メッシとクリスティアーノ・ロナウドによるバロンドールの複占状態もいつかは終わりを迎える。デ・ブライネがシティをチャンピオンズリーグの頂点に導けば、彼がその栄光を手にしてもおかしくはない。

Kevin De Bruyne/Pep Guardiola Manchester City 2019-20Getty

「いいところまで来ていると思う」デ・ブライネはバロンドール受賞の可能性について尋ねられた際にそのように答えていた。ただ、こうも続けている。

「だけどそれは僕が決めることじゃないよね? 最高の自分になるためにベストを尽くしていくだけだよ」

「ここ数年は良いプレーができているよ。昨シーズンはたくさんケガをしたけど、試合に出ているときは悪くなかった」

「ドイツでプレーしていたときも、良い年月を過ごせて幸せを感じていたよ。だけど誰が『最高のフットボーラー』を決めるんだい? 分からないけど、かなりいいところまで来ていると思うよ」

チャンピオンズリーグ出場禁止処分がクラブに暗い影を落とす中、デ・ブライネほどの選手を持つシティは幸運だ。コロナウイルスによる危機が落ち着けば、彼らは契約の延長を検討するだろう。デ・ブライネ自身も残留に前向きであることをインスタグラムのライブで明かしている。

「妻にはもう少しここでプレーするつもりだと伝えたよ。このロックダウンが終われば、家にはいられない。彼女にはあと2年以上はやるつもりだと伝えたんだ」

エティハド・スタジアムで輝きを放つ、デ・ブライネのプレーをみることができるシーズンが多く残っていることを願うばかりだ。

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