逆転優勝へ後がない川崎F。“心・技・体”を磨いた21歳、田中碧にかかる期待

　逆転優勝へもう負けは許されない。川崎フロンターレは2日の明治安田生命J1リーグ第30節でサンフレッチェ広島との上位対決に臨む。5試合を残して首位・鹿島アントラーズとの勝ち点差は8と、3連覇へまさに崖っぷち。勝たなければならない広島戦のキーマンに挙げられるのは、田中碧だ。今季飛躍を遂げた21歳MFが語る優勝への思いとは。【文＝林遼平】

■主力が相次いで出場停止。広島戦は大一番に

©Goal Thailand

　筋書きのないドラマが展開されたJリーグYBCルヴァンカップ決勝。死闘の末に川崎Fは初のカップタイトルを獲得した。決勝の舞台に上がるたびに勝負弱いと言われてきた川崎Fにとって、ついに一発勝負のファイナルで優勝を勝ち取ったのである。

　それでも、優勝の余韻に浸る間もなく週末にはリーグ戦がやってくる。「ルヴァンに浸っていられない。ここから3連戦だから」とは大会MVPを獲得した新井章太の言葉。残り5試合で首位との勝ち点差は「8」と厳しい状況にあるのは間違いない。

　だが、連覇中の王者として可能性が無くならない限り逆転優勝を諦めるつもりもない。ここ2年のリーグ優勝やルヴァンカップ決勝のように「最後まで諦めなければ何かが起こる」（谷口彰悟）のは経験済み。川崎Fとして出来ることは、残り試合をすべて勝ち続けることで奇跡を待つ他ないだろう。

　ただ、もしかすると今節・広島戦が、残りのシーズンを考えた時に最も過酷な戦いになるかもしれない。ルヴァンカップ決勝で退場処分を受けた谷口に加え、累積警告により車屋紳太郎、家長昭博が出場停止。また守田英正を筆頭にケガ人が増えており、満身創痍のなかで3連戦の初戦を迎えることになる。勝たなければいけない状況かつ多くの主力を欠いて迎える広島戦。大一番となるのは明らかだ。

■成長著しい田中碧がキーマンに

©J.LEAGUE

　そんな重要な試合のキーマンとして挙げたいのが田中碧だ。

　プロ3年目の今年、大島僚太や守田の負傷もあってボランチで出場機会を増やした21歳の若人は、試合を重ねるごとに“心・技・体”すべての面において成長。誰よりもお手本となる日本屈指のボランチ・大島から良いところを盗み、またチームのバンディエラである中村憲剛からボランチの極意を伝授されることでプレーの幅が広がっている。

　加えて、東京五輪に挑むU-22日本代表では、今年の5月に行われたトゥーロン国際大会で初の選出を受けるとすぐにピッチで存在感を発揮。先月のブラジル遠征ではU-22ブラジル代表を相手に2ゴールを奪い鮮烈なインパクトを与えるなど、同年代の選手と共にプレーすることで新たな刺激を受けている。

　とはいえ、ルヴァンカップ決勝は120分間+PK戦を戦い抜いたなかで優勝を勝ち取ったが、「緊張して体が動かなかった」と不甲斐ない出来に悔しさを滲ませると共に、「アキさん（家長）やケンゴさん（中村）、阿部（浩之）くん、（小林）悠さんといった、あの舞台で活躍できる人はやっぱりすごいなと改めて思った」と先輩たちの偉大さを感じている。

　だからこそ、自身としても「よりああいう舞台で結果を残せる選手にならないといけない」と語気を強め、さらなる成長への糧にしたいと気持ちを高めている。

　迎える広島戦から始まる3連戦。守田が負傷したいま、田中にかかる期待は大きくなっている。前節・G大阪戦で負った鼻骨骨折の手術をしたためにフェイスガードを付けての出場となるが、「どこかが痛いとか関係なく気合いで乗り越えるしかない」。チームの逆転優勝に向けて、何よりも勝ちを求めて試合に臨もうとしている。

　「この3試合を勝ち続けなかったら、その後の試合は消化試合になってしまうし、まず一つ目を勝たないと次につながらない。自分たちが全勝して、仮に他のチームが負けずに優勝できなかったのなら、それはそれで仕方がないと思う」

　「だけど、自分たちで崩れて、負けて、全部勝っていたら優勝できたねというのが一番もったいない。何かを起こすにしても、とりあえずこの3試合を勝ち続けないと後がない。いろいろチーム状況はあるけど、最初の試合を勝てるように、出られない人たちの思いも含めてやらなければいけないと思う」

　ゲームコントロールに終始することなく、自身の特徴になりつつある攻撃的な動きからのミドルシュートなどで相手ゴールを脅かす。チームを勝利に導くために、田中がゴールへの道筋を切り開きに行く。

文＝林遼平

▶Jリーグ観るならDAZNで。1ヶ月間無料トライアルを今すぐ始めよう