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天皇杯

輪郭が備わった神戸のサッカー。天皇杯優勝が新たな栄光の幕開けを感じさせた

18:05 JST 2020/01/03
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記念すべき新国立競技場のこけら落とし、かつ令和初の天皇杯JFA全日本サッカー選手権大会では、ヴィッセル神戸が鹿島アントラーズを下して王者に輝いた。クラブ創設25年目の初タイトル、2020年元日にトロフィーを掲げた姿は、新たな歴史の原点となる。

■ミスマッチを生かし切った神戸

真新しい芝に足を踏み入れる選手たち、両サイドが赤で埋められた観客席。悲願に王手をかけている神戸のサポーターたちは「1995 2020 KOBE」という巨大なコレオを描き、胸を躍らせていた。大声援のチャントも鳴り響き、この試合が特別なものであることを試合前から十分に感じさせてくれた。

対照的に鹿島側のスタンドは落ち着いた雰囲気。決して熱量で劣るわけではない。国内クラブ最多、通算20個のタイトルを獲得してきた歴史がそうさせるのだろう。場慣れした“常勝軍団”たちはその重みをもって強烈なプレッシャーを放っていた。

しかし、鹿島側の落ち着きはキックオフから次第に戸惑いに変わっていく。試合のスタートからフォーメーションのかみ合わせが悪く、鹿島は主導権を握られ続ける。セルジーニョと伊藤翔の2トップの前からのプレスに対して、神戸の3バックは余裕を持ってボールをつなぎ、機を見てディフェンスライン中央の大﨑玲央が上がっていくことで自由な攻撃を展開。鹿島は中盤より下が重くなり押し込まれる。

この試合限りでの退任が決まっていた鹿島の大岩剛監督は試合後、「前で、ミドルゾーンでプレッシャーをかけながら最終ラインをスライドしながらコンパクトにするという意図」があったと語っているが、実践はできなかった。

鹿島に希望がなかったわけではない。劣勢に思える内容でも常に勝利を奪ってきたチームだ。レオ・シルバが力強いプレーで牽引し、度々獲得するセットプレーから鹿島が先に得点を奪う可能性も十分にあった。しかし、結果的には本職でないSBを務める永木亮太のサイドをルーカス・ポドルスキに強引に破られ、混戦の中から中央に折り返されてオウンゴールで失点。逆サイドの町田浩樹も本職ではなく、攻防が続いた両サイドでは後半に4バックから3バックに変更するまで後手に回り続けた。

前半中に2点のリードを奪っていた神戸は、鹿島が対策を講じてきた後半も緩急を付けながら攻撃を続け、挽回はさせない。選手や布陣のミスマッチ、ポドルスキだけでなくアンドレス・イニエスタや酒井高徳らタレントを十全に生かし切った神戸が、“勝負強さ”を粉砕した。

■神戸のスタイルは確固としたものに

昌子源や鈴木優磨、安西幸輝、安部裕葵らがここ1年で出て行ってしまい、即戦力の補充も活発ではなかった鹿島。それでもAFCチャンピオンズリーグ(ACL)8強、明治安田生命J1リーグ3位、JリーグYBCルヴァンカップ4強という成績は凄まじいものだが、神戸のような相手との一発勝負で取り得る戦い方の幅が限られてしまうことは先手を取るうえで非常に苦しい。

皮肉にも、右サイドのポジションでうまく試合をコントロールしていた西大伍は昨年初めに鹿島から神戸に移籍した選手だ。また、オウンゴールを誘発し、追加点まで決めた藤本憲明は加入約半年であり、酒井やトーマス・フェルマーレンも同様。神戸のスタメンとなった11人のうち、10人が約1年半以内、ポドルスキのみが約3年前に加入した選手となっている。トルステン・フィンク監督が就任したのも、2019シーズン途中のことだった。

ワールドクラスの助っ人選手が中核を担い、代表クラスの日本人選手が脇を固める。天皇杯決勝ではベンチにも郷家友太や安井拓也といった気鋭の若手、引退を発表していたスペイン代表歴代最多得点者のダビド・ビジャが座った。フィンク監督は「すごく難しい決断」だったと振り返っているが、かつてバルセロナで将来を渇望されたセルジ・サンペールがメンバー外となるほどの圧倒的な選手層。もちろんスターを集めたからといって必ずしも強化につなげられるわけではない。しかし、神戸にはしっかりとした背骨が通っている。チームを後方から支えた大崎はこう語った。

「別に誰が出ても(戦える)。今シーズン、特に後半戦ですけど、負傷者が出る中で若手が出たり普段出ていない人が出たりしている中で、結果も伴っていた」

「これからACLもありますので、そういう連戦を戦ううえでは必要なことだと思う。誰が出ても同じサッカーができるようなチームに、もっともっとしていければ」

重要な共通認識を持ったうえでチームの誰もがスペシャリティを備え、ベンチであろうとも単なる控えでなくオプションに昇華される。すでに在籍している選手、加入しようか吟味する選手たちも神戸のサッカーが念頭にある状態。そこには、天皇杯を獲得したという確固とした成功体験が輪郭を与える。

悲願の優勝、だが神戸のタイトルはこれで一つ目だ。まだまだ始まったばかり。2020年元日をこれから紡がれる歴史のスタート地点とし、栄光の道を歩むことはできるのか。新国立競技場の座席は、明日に向かう木漏れ日で彩られていた。

取材・文=上村迪助(Goal編集部)

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