谷口彰悟がみせた“新たな武器”…確固たる結果と自信を得て臨む「最後のチャンス」

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(C)Getty Images
E-1サッカー選手権で好パフォーマンスを披露した谷口彰悟。「最後のチャンス」でみせた“新たな武器”とは。

2年前のリベンジ成就を告げる主審のホイッスルが、味の素スタジアムの夜空に鳴り響く。直前に決まったMF井手口陽介(ガンバ大阪)の決勝ゴールの余韻が色濃く残る中で、DF谷口彰悟(川崎フロンターレ)はビッグセーブを連発したGK中村航輔(柏レイソル)と真っ先に握手を交わした。

「今日は(中村)航輔が全部止めてくれたので。航輔に救われましたからね」

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)代表を1‐0で振り切った、9日のEAFF E-1サッカー選手権大会2017。国内組のメンバー編成で臨み、白星発進を完封劇で飾った日本代表の中で、国際Aマッチデビューを果たした選手が4人いる。

先発フル出場した中村とDF室屋成(FC東京)。後半からは伊東純也(柏)、阿部浩之(川崎)の両FWもピッチに投入されたが、もう一人、センターバック(CB)として先発フル出場した谷口も、ある意味で“デビュー"と言っていい。

国際Aマッチ出場は3試合目だが、これまではともにボランチでの出場だった。そして、キックオフ前の時点で最後の出場となっていたのが2015年8月、中国・武漢で行われたEAFF E-1サッカー選手権大会の前身、東アジアカップ初戦の北朝鮮戦だった。

しかもその一戦では、開始早々にFW武藤雄樹(浦和レッズ)のゴールで先制しながら、終盤に立て続けに失点して逆転負けを喫している。後半途中からアンカーに回るも、北朝鮮が仕掛けてきたパワープレーをはね返せなかった悔しさを谷口は脳裏に刻んでいた。

「前回は初戦で負けて、そのままズルズルといってしまった。今回は準備期間もより長かったし、チームとして戦う部分を作り上げられた自信もあった。ホームでの開催だし、代表は勝たなきゃいけない。リベンジの意味も多少ありましたし、強い気持ちで臨めたと思う」

今大会に臨むメンバーが発表された先月29日。23人の中に自分の名前が記されていたことに、谷口は安ど感と武者震いする思いを胸中に同居させた。

「大枠の中に入っていてよかったな、と。代表からだいぶ遠ざかっていたので、もう入っていないのかな、という思いも正直あった。どういう形であれ選ばれて、実際に監督の手元に置かれてプレーしていく中で、新しく見せられるものもあると思う」

約1年半ぶりの代表復帰にホッとした一方で、27歳になる年で迎える来年のワールドカップ・ロシア大会を「多分、最後のチャンスだと思う」と位置づけている。だからこそ、武者震いを覚える。前回のブラジル大会が開催された2014年は、筑波大学から川崎に加入したルーキーだった。

■2年で体得した「新しく見せられるもの」

迎えた今シーズン。明治安田生命J1リーグ最終節での劇的な逆転劇で鹿島アントラーズを逆転し、悲願の初タイトルを獲得した川崎の中でただ一人、全34試合にフルタイム出場を果たした。

しかも、ケガや累積警告による出場停止でボランチが不在となった終盤の2戦を除いて、CBとして最終ラインを統率。リーグ全体で3番目に少ない32失点は、クラブ史上において最少となる付加価値もついた。

ハリルジャパンに選出された2年前も、リーグ戦ではフルタイム出場を果たしている。ただ、副キャプテンという肩書を担い、確固たる結果を残した点で当時とは違うと自負している。

「より中心的な仕事ができるようになったという自信もあるし、チームを引っ張っていくところで自覚も出てきたというか、たくましくなったかなと。ポジションに関するこだわりはそれほどないけど、今シーズンで言えばずっとCBをやってきたので、その分だけ自分の中では自信があったし、それを代表で出せればと」

先発を告げられたのは北朝鮮戦前日。選出されている4人のセンターバック陣の国際Aマッチ出場数で言えば、昌子源(鹿島)が7試合で最も多く、出場歴はないものの、幾度となく招集されている植田直通(鹿島)と三浦弦太(G大阪)が続いていた。

まさにCBにおける序列を逆転させての先発拝命。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督も「川崎で素晴らしいシーズンを過ごしている」と、2年ぶりに招集した理由を語っていた。だからこそ、2年という時間で体得した、谷口自身をして「新しく見せられるもの」を具現化させたかった。

それは最終ラインからのフィード。例えば63分。右サイドの伊東へグラウンダーの速い縦パスを供給。あうんの呼吸で伊東がスルーし、タッチライン際を駆け上がってきた室屋に渡ってスタンドを沸かせた。

その4分後には、今度は浮き球のパス左サイドのFW倉田秋(G大阪)へ通す。頭による折り返しはFW小林悠(川崎)に合わなかったが、引いた形からカウンターを狙う北朝鮮に対してリスクマネジメントを徹底しながら、なおかつ最終ラインから突破口を開こうとする意図が伝わってきた。

「今日のような相手だと、自分がフリーでボールを持つ時間は間違いなく長くなる。今日に限らず、現代サッカーは中盤におけるプレッシャーがかなり激しくなってきているので、その分、CBがゲームを作るような作業をできればチームはすごく楽になると思っているので」

■ロシアW杯のCB枠「4」への挑戦

キャプテンを務めた昌子や、リオ五輪世代の室屋とは初めて最終ラインを形成した。ボランチに入った井手口や今野泰幸(G大阪)も然り。コミュニケーションや連携で噛み合わない場面も特に前半に見られたが、それでも無失点に封じて井手口のゴールを呼び込んだ。

「僕にはチャンスはそんなに多くないことも分かっている。競争する相手が大勢いるし、彼らよりも頑張らなきゃいけないとも。1試合できて自分の中でもすごくホッとする部分があるし、再びチャンスをもらえるのであれば、さらにいいプレーができそうな気がします」

海外組を含めた全体で見れば、吉田麻也(サウサンプトン)が不動で、FIFAクラブワールドカップに出場中の槙野智章(浦和レッズ)が頭一つリードした感のあるCB争い。ロシア行きのチケットを得られるCBの枠はおそらく「4」。一発逆転を目指す谷口の挑戦は続く。

文=藤江直人

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