ディエゴ・シメオネが言うには、「スタジアムの近くのラウンドアバウトにいたときから」アトレティコはファーストレグを支配していた。ホームで迎え撃つリヴァプールは、スペインからやってくるバスが「アンフィールド・ロードのキング・ハリー・パブを通ったときから」の逆襲に望みをかける。
ワンダ・メトロポリターノの力を3週間前に感じたレッズだが、今度は仕返す時が来た。アトレティコは水曜の夜に「アンフィールドの力」を否が応でも感じるだろう。
Goalそのような力を発するスタジアムは世界を見渡してもごくわずかだ。そして、そのリストの最上位にあるのが、間違いなくアンフィールドである。強大な力の前に押しつぶされたチームは年々増えていく。インテル、サンテティエンヌ、オリンピアコス、ユヴェントス、チェルシー、レアル・マドリー、ボルシア・ドルトムント、マンチェスター・シティ、ローマ、バルセロナ…これらのクラブは皆スターやトップクラスの選手を連れ、夢と希望を胸に秘めてマージーサイドへとやってくる。
そして、すべてを失って帰っていく。残されるのは痛む足と耳鳴り、そして傷ついたプライドだけだ。
アンフィールドではどんなことだって起こりうる。相手は腰砕けになり、心をすりつぶされてしまう。自信に満ち、よく訓練されたチームでさえ恐れ、最後には意気消沈してしまうのだ。
■ペップ、モウリーニョも敗れ去った
getty images「嫌なグラウンドだ」
ペップ・グアルディオラはカタルーニャのラジオ番組でこう述べている。現にペップ率いるマンチェスター・シティはこれまでアンフィールドを5回訪れたことがあるが、ただの一度も勝ったことがないのだ。これまで4敗を喫しているが、最後は昨年11月の1-3での敗戦だ。グアルディオラは試合後、改めてアンフィールドの恐ろしさを思い知ったようだった。
「『ここはアンフィールドだ』という言葉はただのキャッチフレーズではない。ここには世界中のどこのスタジアムでも経験できない何かがあるんだ。彼らがゴールを決めると5分間以上に渡って、さらに4点決められたような雰囲気になるんだ。自分たちが小さく思えて、相手選手がみな自分の上を行く存在に見えてくる」
グアルディオラが「ヨーロッパで一番タフなアウェースタジアム」だと評せば、アーセン・ヴェンゲルは「行きたくない唯一の場所」と吐露する。
また、アリエン・ロッベンは、アンフィールドを「最悪のスタジアム」と表現する。チェルシー在籍時にCLで2度アンフィールドを訪れ、2度とも敗れているのだから当然のことだろう。
ロッベンの記憶に残る準決勝は2005年と2007年に行われたが、今もアンフィールドの伝説に刻まれている。あの夜、リヴァプールはまさに“12人目の選手”を呼び出したのだ。キックオフの1時間以上も前からスタジアムは満員。レッズファンはジョゼ・モウリーニョ率いるチェルシーをラインの向こうに引きずり込まんばかりの勢いだった。
「群衆を味方につけているんだ」と話すのは元レッズのDFヨン・アルネ・リーセ。「それこそが僕が走り続けることができた、ただ一つの理由なんだ。万事休すと思った瞬間、彼らがまた力を貸してくれるんだ。まだ走れ、まだタックルしろ、とね。本当に驚いたよ」。
当時、その力を肌で感じたモウリーニョは「アンフィールドの力を感じた。強大な力だった」と認めている。
■記憶に新しい大逆転劇
Goal「ファンは皆そのつもりで来てくれるだろう。分かっているよ」
ユルゲン・クロップはアンフィールドの力を信じている人間の一人だ。「アンフィールドにようこそ。まだ試合は終わっていない」。アトレティコの周到なプランを前に屈した直後にも、セカンドレグを忘れるなと言わんばかりに釘を刺した。
ユヴェントスのGKジャンルイジ・ブッフォンもアンフィールドの恐ろしさを知っている。2005年にアンフィールドを訪れ、当時のチームにはファビオ・カンナヴァーロ、アレッサンドロ・デル・ピエロ、パヴェル・ネドヴェドら経験ある選手が多くいたが、ユヴェントスは飲み込まれてしまった。1-2と落とすと、ホームでのセカンドレグでも挽回することはできなかった。アンフィールドをお気に入りのスタジアムに挙げたブッフォンは選手に与える影響を口にする。
「(そのような雰囲気のある)数少ないスタジアムのひとつだね。他にはたとえばグラスゴーのレンジャースや、イスタンブールのフェネルバフチェもそうだ。そこでは最初の15分から20分に渡ってものすごい騒音が起こるせいで、なかなか集中できなくなってしまうんだ」
あの夜、ユヴェントスの監督を務めていたファビオ・カペッロは、25分間で2-0とリードされた際のアンフィールドの雰囲気を「リヴァプールの選手に電気ショックを与えているようだった。ホームチームは驚くべきテンポで試合を始めたんだ。止められないと思った」と回顧している。
アンフィールドがチームを蘇らせた瞬間を、我々はつい最近にも目にしている。2019年5月7日はおそらくアンフィールド史上最も偉大な夜として語り継がれることになるだろう。リヴァプールはバルセロナとの絶望的な点差をホームでひっくり返したのだった。
バルセロナが敗退した後、古巣に同情するよう自らの経験を含めてコメントしたのは過去の“被害者”であるグアルディオラだった。
「バルサに起こったことは全部我々も経験済みだよ。(2018年の)準々決勝は最初の15分か20分で3-0とリードされた。彼らは私に笑顔を見せたんだ。リヴァプールは類稀なチームだし、スタジアムも影響を与えてくる」
彼らのコメントが空虚なものではないということはもうわかるだろう。多くのビッグネームたちが、騒音やチャント、ブーイングや叫び声について話し、それがトップ選手にすら大きな影響を及ぼしていると証言しているのだ。
もちろん、影響しているのはアウェーチームだけではない。「疲れたと思っても走れるし、ボールを追いかけられるし、タックルできる。そしてアンフィールドはどんどんイカれた場所になっていく。『今のは上手かっただろ?』と思えば『もっとだ!』と返ってくるんだよ」。これは元レッズのDFマーク・ローレンソンが語った言葉だ。アンフィールドでは、リヴァプールの選手たちはいつも以上の力を発揮できる。
■戦術さえも無効化する
Getty Imagesアーセナルのミケル・アルテタ監督は、2014年に遠征したガナーズでの恐ろしい逸話を語っている。「途方に暮れた小鳥のような気持ちになったのはあのスタジアムでだけだ」と話し始める。
「『何が起こっているんだ、頼む、試合を止めてくれ! ここがどこだかわからないんだ!』みたいな状況だった。説明するのが難しいのだけれど、アンフィールド以外ではそういうことは起こらなかったんだ。アンフィールドでは、何が起こっているかわからないまま5点取られたりする」
元マンチェスター・ユナイテッドのキャプテンであり、イングランド代表でも活躍した百戦錬磨のガリー・ネヴィルでさえ、アンフィールドでのプレーに慣れるのに「何年も」かかったという。ウェイン・ルーニーに至っては、アンフィールドでは用意してきた戦術が意味をなさないと話す。
「ボールを奪うと、リヴァプールはバックラインから展開させようとするだろう。そうすると、観客が急に目覚めて、そこから最も恐ろしい前半30分を経験することになるんだ。(ユナイテッドでは)練習していたし、万全の対策をしたし、ボールをつなげる対策もしたし、試合に向けて気持ちが入っていくようにもした。でも、アンフィールドでプレーする日になって、リヴァプールが意気込んでいると、たちまち問題が起こってしまうんだ」
もちろんアトレティコも、十分な準備をして乗り込んでくるだろう。シメオネは抜け目のない男だ。ピッチの内外でチームに待ち受けるものをわかっているだろう。アトレティコは自身の強みを最大限に活かし、試合を混乱させ、フィジカルを生かして笛が多く鳴る、神経をすり減っていくような消耗戦に持ち込むつもりだろう。
しかし、そうしたプランを用意したとしても、成功するかどうかは別の問題だ。なぜなら、アンフィールドでは、周到に練られた計画でさえも簡単に失敗してしまうからだ。
リヴァプールはスタジアムのコンコース内に書かれた言葉を証明するため、12人目の選手とともに立ち上がるだろう。アトレティコという難敵が相手でも何も変わることはない。
「This is Anfield」
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