サンドロ・シュヴァルツはマインツに生まれ、1.FSVマインツ05で7年間プレーしたのち引退。その後、2013年にコーチとして故郷に戻り、2017年5月末からトップチームの監督に就任。2月にはクラブとの契約を2年延長し、2022年6月まで指揮を取ることとなった。
このインタビューでシュヴァルツは監督として1年目に超えなければならなかった試練について語り、彼に向けられた批判をどのように受け入れたか明かした。さらに、記者会見での不満を口にし、メディアと監督の考え方の相違点について説明している。
■「大変なシーズン」を乗り越えて

――シュヴァルツ監督、昨年はブンデスリーガクラブの監督としての最初のシーズンを経験しましたが、マインツにとって大変厳しい一年でした。マネジャーの絶え間ない交代、残留争い、そしてあなたへの批判も相次ぎました。この茨の道を耐えきったことの重要性について教えてください。
大変なシーズンだったけれど、最後にはうまくいくと最初から教えてくれていれば、私はすぐにでも契約したはずだよ。このシーズンは最高の経験だった。特に組織の構造を変えて、物事を組み直して正解を導き出していくという作業は良い経験だ。昨シーズンは本当に素晴らしい一年で、結果も素晴らしかった。最後にはマインツが初めてドルトムントで勝利を収めることができたし、残留をそこで祝うことができたからね。
――当時、あなたが解任されていたら、あのような危機的な状況の中でサプライズを起こすことはできなかったでしょう。その状況に身を投じる覚悟をするのにどれほどの時間がかかりましたか?
自分の立場について心配したことはないよ。諦めたくなかったし、「ファンやマスコミに不当な扱いを受けているんだ」なんて思ってへそを曲げるようなことはしたくなかった。フランクフルトとのダービーのような感情的になりやすい試合で2試合もしくじったんだから、批判が僕に向かっても仕方ないと思えば納得できたよ。
――それでは、そのような状況を腹立たしいと思ったりはしませんでしたか?
それはもちろん思ったよ。特にピッチで我々のプレースタイルを披露できていなかったからね。自分にとって重要なことは、自分たちのプレースタイルを昇華できていて、それをピッチで表現できることなんだ。その第一歩を今シーズンは歩むことができているね。
――残留争いのさなか、2018年3月にはファンが結束し、600人以上が討議の場に登りました。彼らは非常に感情的になっていましたが、追従するファンを完全に納得させるような発言をしていました。なぜあなたはそれ以前から別の視点が持てたのでしょうか。
別の視点なんて、全然持っていなかったよ。もちろん、我々は結果を残せていなかった。いくつかの試合での負け方が悪かったことも僕への批判の一因だった。重要な点は確かに、僕は2年前にU23のチームを降格させてしまったということだ。最終的に、ファンイベントがキーポイントだったんだ。そこで皆は僕のやり方を理解するようになったし、クラブ全体が奮起する良い機会だったと思う。その日の終わりには、僕たちは一つになれて、皆が正しい方向に向かっていける雰囲気になったんだ。
――逆の見方をすると、あなたについての過去のイメージを払拭する必要があったのでしょうか。
わからないな。ただ、人間的でありつつ監督でもあろうとする僕のやり方を皆が知ってくれることは、あのときは絶対に重要だった。下した数々の決断について理由を冷静に詳しく説明することもできたよ。僕がどれだけ感情的になれるか、今では皆気がついているはずだけどね(笑)。
■意識している戦術原則
Getty Images――お子さんが誕生し、父親になられた昨夏のシーズンオフですが、このときのことを振り返っていただけますか?
監督としての自身を変えるべきかについて、当時ははっきりしていなかった。当時のことを思い出す上で何よりも重要なのは、コーチングチームとスポーツディレクターを兼任するロウフェン・シュレーダーがチーム構成を担当していたことだね。選手の情報を確認し、正確にチームを構成することで、内容を充実させたトレーニングを安全にできるようにしていたんだ。それがマインツなんだ。
――その夏、シュレーダーと迎える初めての移籍期間中、あなたがほとんどのことを引き受けたことについては、結果的にどのような意味がありましたか?
わからない。もちろんそれが非常にポジティブなものだとしてもね。僕が分かることは、当時僕が正確であろうとしすぎたということだ。我々が必要なこと、たとえばどんなフォーメーションやチーム戦術を使うべきか、といったことについて理解している自信があった。昨シーズンはたくさんの責任を選手たちに押し付けてしまったのかもしれない。ブンデスリーガの選手たちは個人の責任のような具体的な物事についてはっきり分かっていると思っていたんだ。
――結果的にそのことは、チーム戦術を進歩させることにも役立っています。マインツは改めてポゼッションや試合内容の充実に焦点を絞っています。これは残留争いを戦うチームとしては非常に珍しいことです。
我々の要求は、草サッカーをしないということだ。むしろ、戦術の指針にしたがってゲームの状況をすべてカバーしていきたいと思っている。それは、ボールを奪ったり、失った後の不安定な瞬間にどう対処するか、ということでもあるね。これは試合の重要な部分であり、よくあるシチュエーションでもある。だからといって、ポゼッションやボールロストのことだけを言っているわけではないよ。我々のボール支配率はいつも大体同じくらいだからね。我々の戦術でプレーしようという勇気があれば試合のどんな状況にだって答えを見つけ出せる。
――戦術の原則があなたにとって最も重要な点ということですか?
原則はボールに対してプレーすることだ。規律通りキックオフする、ディフェンシブな姿勢を保つ、フォワードもディフェンスする、といったことなんだ。この原則が我々にたくさんのことをもたらしているよ。我々が積極的に試合に向かえていて、前から守備ができていれば、ボールは良い状況に転がってくるし、試合の強度を上げることもできる。ヴォルフガング・フランクやユルゲン・クロップ、トーマス・トゥヘルもやってきたことだが、それこそマインツがやっていることだ。もし原則から一つでも異なる動きをして、低い位置でボールを受けてパスコースを狭めてしまえば、たちまちダイナミズムが下がり、我々のDNAに合わない試合になってしまうだろう。
――フランク、クロップ、トゥヘルは全員あなたの同僚でしたね。彼らから得たことはありますか?
ヴォルフガング・フランクとは自分が17歳か18歳くらいのときに一緒になった。あれが自分にとって、人としてもコーチとしても非常に大事な出来事になった。彼は父親のようで、僕をいろんな手段で前進させてくれた。彼は4バックの導入に成功したけれど、これは選手に才能が少なくても練られた戦術があれば様々なことを達成できるということを示しているよ。それから彼には、アリゴ・サッキとアヤックス・アムステルダムの試合の録画を吐くまで見させられたよ(笑)。彼の下でトレーニングできたことは自分にとって重要な経験だった。
■システム変更の狙い

――今シーズンは素晴らしいスタートを切り、最初の3試合で勝ち点7を獲得しましたが、その後5試合無得点となったことでシステム変更が行われました。監督として、どのようにしてこの決断に至ったのでしょうか?
本当によく分析しているね。そう、特に陣形にできたスペースから得点機会を多く作ることを試してきたんだ。そしてフォーメーションを4-3-3からダイヤモンド型の4-4-2に変えて、10番的なプレイヤーと2人のストライカーを置くことにした。10番とセカンドストライカーを持つフォーメーションのおかげでアタッキングサードでよりゴールチャンスを演出できるようになったけれど、中盤でのフィジカルを落とさないように、2人の8番と、6番を起用した。けれど、我々はダイヤモンドの4-4-2だけでプレーしているわけではない。何よりもまず、我々の非常に明確な原則をそこに当てはめていかなければならないんだ。例えばドルトムントとの一戦(2018年11月24日)では、我々は5-3-2でプレーしたけれど、よく動けていたし守備も非常にタイトだった。
――それでは、最初のシーズンと比べて大きな違いと改善点はどこにあるとお考えでしょうか?
もちろんプレースタイルだけれど、それから観客の認識も変化したね。我々のプレー強度の高さは前よりはっきりと、着実に分かるはずだ。1年前は、ときに観客が試合に満足せず家に帰ってしまっていた。フィニッシュを失敗したり、毎度のように芝に苦戦したりしていたからね。今は、徹頭徹尾練習や試合で手を抜かず、94分を超えてもフルスロットルで戦うことに集中して取り組んでいる。ボールを保持しながら速いプレーをしていきたいし、プレースタイルを追求し続けていきたい。それから、自分にとっての大きな違いは、去年1年間を経験して事をうまく運ぶための感覚がついただけでなく、選手たちに対する信頼が高まったこともあるね。
――挑発的な質問になってしまいますが、昔からのマインツのファンは、必要な勝ち点を獲得できさえすればチームのスタイルにはこだわらないのではないでしょうか?
どんな相手に対しても気にせず良いサッカーをしていれば、彼らもスタジアムで批判したりはしないよ。マインツのサポーターが何よりも望んでいるのは、我々が全力を投じ、かつ強度が高くスプリントの多いアクティブなサッカーを見せることだ。これは信じておいてほしい。それから、重要な点は、我々が良い状態だ、アクティブだ、と感じたら、答えはボールとともに自然とやってくるということなんだ。これが持続できるようにやっていきたい。ただ結果のためだけじゃなく、良いサッカーをするためにね。
――結局は、良い成果が出るにはしばしば時間が必要だという一般論を、マインツの成長によって否定することはできないのでしょうか?
時間のことについては率直に言い訳をさせてもらう。時間の問題を解決できなかったら、私の価値が下がり、全てを保証できなくなるだろうか? 私はそうは思わない。私は皆にクラブの全てを感じてほしいんだ。選手たちは練習や試合でいつでもハードワークしているし、成功のため全力を注いでいる。誰でもそうだけれど、そのときの結果はどうであれ、成長していければいつでも後からいい結果がついてくる。これは私の信念だよ。
■記者会見で話すべきこと

――話題は変わって、2017年の終わりに、あなたは記者会見での記者の質問の質に対して不満を漏らしています。もしあなたがご自身に質問するとしたら、どんな質問をされますか?
試合内容について毎週聞くね。例えば、相手に関することや、どんなテーマを持って試合に挑んだか、とかね。ポゼッション、切り替え、それから試合開始時のやり方について監督はどんな考えを持っているのだろう? 私はそういう根本的な方針についても聞いてみたい。けれど、それについてははっきりした答えはもらえないと思うよ(笑)。
――不満は非公開形式の記者会見で漏らされたものでしたが、結果的にその事実は公になってしまいました。このことについて今どう思いますか?
実際より大きい話題になってしまったと思っているよ。我々は試合の3日後に記者会見の時間を取っている。そこで議論になったのが、記者会見とは試合内容について情報交換をして詳しい情報を得るためにあるのであって、表面的なことを話す場じゃない、ということだったんだ。そこに居合わせた記者たちのように、その意識が続いてくれればいいと思っている。情報で騙し合いをしたいわけではなく、私はオープンな態度でサッカーについて話をしたいんだよ。
――多くの監督にとってそのことが問題になるでしょう。彼らは戦術上の機密を公開したいとは思っていません。
それでも、会見はもっと内容重視になるべきで、一方監督は戦術を事細かに話す必要はないと思っている。試合の週の記者会見で、その試合で採用する戦術について私は嘘をつかないけれど、基本戦術の他に考えられるオプションについて、などの的確な質問には気をつけたいね。そうしておかないと、教えすぎになってしまったり、とても複雑な情報になったりしてしまう。
――どういうことでしょうか?
たとえば相手のフォーメーションが3列だったとしたら、我々がその相手に4-3-3で対戦する理由を説明することはできる。つまり、それぞれの列を3人のプレイヤーで対処することができるからだ。もしくは、ダイヤモンド型の4-4-2を採用するなら、ストライカーをワイドに張らせて司令塔を中盤の3人に対処させる。そういう話題が記者会見では理想的だというのが僕の意見だ。非常識なことを言っているつもりではなかったんだけれどな。そうした話ができれば、記者はきっと試合を違った方向から見ることができるだろうと信じているよ。
――監督は、サッカーを全く別の見方から、もちろん報道内容とは異なる方向から見ているということですね?
そのとおり。我々は来る日も来る日も全く違う次元から物事を考えているよ。そうして、自分の意識を仕事に没頭させているんだ。理想的には、監督はただ選手を起用するだけじゃなくて、選手がやっていることや失敗の原因などを説明して、記者を活用する必要があると思う。結局監督を評価するのは記者たちだからね。彼らが私たちの判断基準を見る機会を得られるという点でも、双方に公平だと思う。
――それが、当日会見の他に毎週会見を行っている隠れた理由の一つということですか。
もちろん一番大事な意図は、上の立場からではなく同じ目線で情報交換することだよ。毎日我々と関わっている記者をこの会見に招待している。そこでは、密に話題を掘り下げることにしている。こうすることで我々の意図やピッチでの出来事について記者たちにより深く分かってもらえるし、僕も彼らの物事の見方や仕事のやり方についてよく理解できるんだ。
――それでは、相手の分析をする際に監督ご自身にしたい最も重要な質問を教えてください。
簡単だよ。「どの場所で相手より多くの人数を割いてプレーできるか」だね。監督は「10人対10人」のような単純な考え方をしているわけではない。2対1や3対2、4対3のような局面について考えている。ただ相手にどこで出くわすかを割り出したいわけではなくて、局面を考えればどこでボールを有利に保持できるかを知ることができるんだ。
インタビュー・文=ヨヘン・ティットマール/Jochen Tittmar
構成=Goal編集部
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「※」は提携サイト『 Sporting News』の記事です



