2017年1月、中国スーパーリーグの天津権健に加入した元ブラジル代表FWアレッシャンドレ・パト。中国挑戦1シーズン目で、23試合出場14ゴール2アシストと、充実のときを過ごしている。ミランやビジャレアル、チェルシーなどでプレーした経験を持つかつての“神童”は、現在アジアで何を感じているのだろうか。『Goal』のインタビューに応じた。
「予期していなかった経験だけど、ポジティブなのは間違いないね!」と、中国生活について問われた28歳のFWはそう切り出した。
「何年か前に、誰かが遠く離れた中国に行くことになると言ってきたら、おそらく信じなかっただろうね。最初の1週間の印象は、辛いものだったよ。特に言葉が通じなかったから混乱したね。だけどその後は、自分の場所を見つけたし、中国は成長するためのチャンスがたくさんある“世界”だと気づいたよ。フットボールやビジネスなど、あらゆる分野でね。スタジアムはいつもいっぱいだし、応援も熱狂的だ。ここでは本当楽しくやれてるよ」
母国ブラジルや、欧州とは全く違うアジアの地で自分の居場所を見つけたというパト。移籍にはファビオ・カンナバーロ監督の存在が大きかったという。
「中国スーパーリーグは、ヨーロッパや南米と比較するのは難しいね。だけど、ここに来てちょうど半年で、リズムや試合へのアプローチの仕方を見つけたよ。サッカーの面でも進化している。カンナバーロの存在は、移籍に不可欠なものだった。ファビオやスタッフとはイタリア語で話しているし、適応するためにはとても助かったよ。彼は良い監督だし、熱心に勉強している。知識の多さも垣間見えるよ」
“神童”と呼ばれたパトは、17歳のときに2200万ユーロと言われる移籍金で、当時カルロ・アンチェロッティ監督が率いていたミランに加入。ブラジルの未来を背負って立つと言われていたが、イタリアではケガに苦しめられ続けた。コンディションが上がってくると負傷…、復帰して結果を残すとまた負傷という、悪循環に陥っていた時期も長かった。しかし28歳となった今、中国で最高の感覚を取り戻したと語る。
「明らかにトップフォームに戻っている。僕は最高のキレを取り戻したということができる。それはゴールとアシストが証明している。僕は28歳になり、さらに成熟して最高の気分さ」
母国ブラジルとは気候も言葉も違う中国だが、パトは快適に過ごしているという。世間の抱く中国とは全く違うと感じているようだ。そして中国料理も気に入ってることを明かす。
「家で過ごし、練習に行き、そして家で過ごす…。ここでの生活はすごく落ち着いている。僕が住んでいる天津は、みんなが思う中国のイメージとは全然と違うよ。とても住みやすいね。中国料理に挑戦するのも好きだよ。餃子と小籠包がお気に入りだね」
そしてパトは、ブラジル代表への思いを語った。
「チッチ監督との関係は、いつも尊敬と感謝の念に基づいてる。チッチはセレソンに全く新しい形をもたらした。僕にとっても嬉しいことだ。ここ数カ月良いプレーをしているし、自分の得点でチームメイトを助けている。ブラジル代表はいつだって目標の1つであり、招集されるために全力を尽くす。(2014年、母国ブラジルで開催された)W杯には行けなかった。国を代表するという感情的で鳥肌が立つような誇り高い瞬間を、のがしてしまったんだ」
一度は“終わった”存在と見られたパトだが、中国で見事な復活を遂げたパト。確かに世界最高峰の舞台とは言い難いアジアのリーグではあるが、トップフォームに近づいているのは間違いない。28歳と最も脂の乗る年齢となったパトは、来年に控えるロシア・ワールドカップの代表メンバーを、虎視眈々と狙っている。
取材=シモーネ・ガンビーノ/Simone Gambino
文=Goal編集部
