カタールW杯アジア2次予選で上々のスタートを切った日本代表は14日、アウェイで第4戦のキルギス代表戦に臨む。勝てば4連勝となる森保ジャパンにおいて、攻撃の要となるのは、2次予選で3戦4発をマークしている南野拓実だ。代表だけでなくクラブでも好調を維持しているが、南野にとっての2019年は“苦悩”からスタートしていた。それを乗り越え、躍進を遂げた南野に何が起こっていたのか。彼がこの1年でみせた成長力に迫る。
■アジア杯での“停滞”
Getty Images11月の日本代表活動が来週11日からスタートする。A代表にとって最大の山場は、14日にアウェイで行われるカタールW杯アジア2次予選・キルギス戦だ。森保一監督も6日のメンバー発表で「2次予選を全勝で突破したいと私自身も選手も考えている」と強調したとおり、ここまでミャンマー、モンゴル、タジキスタン相手に3連勝を収めている日本としては、今回も勝って前半戦を折り返したいところだ。
そのA代表のけん引役として大きな期待を背負うのが、2次予選ですでに3試合4ゴールと圧巻の得点力を発揮している南野拓実(ザルツブルク)だ。
絶対的1トップ・大迫勇也(ブレーメン)が10月2連戦に続いて招集が見送られ、、堂安律(PSV)、久保建英(マジョルカ)という東京五輪世代の若手もU-22日本代表へ専念することになったため、彼に託される攻撃面の役割はより大きくなる。
森保体制発足後の1年間で10ゴールと凄まじいスピードでゴールを積み上げている南野だが、苦しい時期もあった。その最たるものが1月のアジアカップだ。
大会序盤から度重なる決定機を外し続け、決勝トーナメントに入ってからは報道陣に無言を貫くほど、精神的に追い込まれた。決勝のカタール戦では一矢報いる1点を奪ったものの、大会を通してこの1ゴールのみにとどまった。本人も「優勝しないと意味ない大会。悔しい気持ちでいっぱいです」と失望感を露わにしていた。
アジアカップでの停滞感は所属のザルツブルクにも少なからず影響した。2月以降は先発落ちすることが多くなり、後半から途中出場した3月のヨーロッパリーグ・ナポリ戦後には「俺はスタメンで出れる資格があると思うし、それだけのものは残してきている」と苛立ちをにじませた。苦境は昨季終了まで続き、代表でも3、6月の4試合はゴールという明確な結果を残せなかった。
■新シーズンでの“躍進”
Getty Imagesしかしながら、新シーズンを迎えた南野は心機一転、フレッシュさを取り戻していた。というのも、ザルツブルクがチャンピオンズリーグ(CL)本戦出場権を勝ち得たことが大きな理由だろう。「CLに出るチャンスを僕は魅力的に感じた。このチームに残ったことをいい選択にしたいですし、そこで自分の実力を示せればと思います」と9月代表2連戦合流時にも目を輝かせていた。
このシリーズでは、強豪・パラグアイ相手にゴールを奪ったうえ、重圧のかかる2次予選初戦・ミャンマー戦(ヤンゴン)でもダメ押しとなる2点目をゲット。本人もいい感触を手にしている。
そして、代表終わりに迎えた9月17日のグループ初戦・ゲンク戦の快勝に貢献すると、10月2日のリバプール戦では1ゴール1アシストという圧巻パフォーマンスを披露。ファン・ヒチャンの左クロスに飛び込んだ豪快ボレー弾には、名将・ユルゲン・クロップ監督も苦笑い。昨季ヨーロッパ王者を相手に決めた一撃で「ミナミノ」の名前が世界中に轟いた瞬間だった。
代表の勢いをCLでの戦いにつなげた南野だが「でも僕は悔しい気持ちの方が大きかった。勝ち点3で終わるのと負けで終わるのでは全然違うので」とあくまでも冷静に自身とチームを客観視していた。それでも「トップクラスの試合を経験することは自分の成長につながるし、結果を残せたことも自信になる」という前向きな感情も抱くことができた。
実際、リヴァプールとの一戦では90分通して豊富な運動量を維持し、屈強なDFと対峙しても当たり負けせず、ドリブル突破に挑んでもボールを失うことなく高度な推進力を発揮した。
ゴールにつながったボレーは右から走り込む形だったが、左から持ち込んでシュートを放ったり、ヘディングに競りにいく惜しいチャンスもあった。この短い期間で得点パターンが多様化していることが顕著に表れた。短期間での目覚ましい変貌ぶりを強豪相手に示せたことは、非常に大きな意味があった。
確固たる手ごたえは、直後の代表での10月シリーズで2試合3ゴールという形になって表れた。とりわけ、過酷なアウェイの戦いとなったタジキスタン戦では、相手の徹底マークに苦しむなか、後半から縦関係であった鎌田大地(フランクフルト)とのポジションチェンジで、的確な判断から流れをつかみ、2ゴールを叩き出したことは特筆に値するだろう。こうした鋭い戦術眼とインテリジェンスも“CLでの成果”のひとつではないだろうか。
「それぞれの良さを生かしながらチームとしてやっていきたいと思う。とはいえ、自分も良さを出さないと残っていけない。誰が入ってもいろんな攻撃パターンを見せてゴールできることを証明したいです」
本人がそういって意気込むように、南野はキルギス戦でも日本の多彩な攻撃をリードしなければならない。森保ジャパン最大の得点源となったマルチアタッカーはまさにいまが旬。際限なく成長し続けて、真のエースの座をつかむことを目指す。
文=元川悦子
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「※」は提携サイト『 Sporting News 』の提供記事です

