ジョゼップ・グアルディオラの悩みのタネは尽きない。チェルシーとのビッグマッチで自身の手腕を改めて証明するチャンスは、マンチェスター・シティの問題点が露呈する場へと変わってしまった。
シティはまるで数多くの問題点を次々と生み出するつぼのようだ。決定機をものにすることができない一方で、簡単にゴールを許してしまう。ビッグクラブ相手のアウェー戦ではまるで勝つことができない。来季も間違いなくチームに残留すると言い切れる選手ははせいぜい5、6人くらいだろう。

■チェルシー戦では大量の問題点が露呈
問題点の全ては、スタンフォード・ブリッジでチェルシーが2-1でマンチェスター・Cを下し、首位を走るブルーズがプレミアリーグのタイトル獲得に手をかけた試合で証明されてしまったことでもある。
グアルディオラは大一番に向けてチームの持つメンタリティーについて話し合いを重ねていたことを明かした。しかし、力負けに終わった試合後、かつてはビッグゲームで試合をコントロールできていた時に展開していたような前のめりなサッカーの仕方をもはや忘れてしまったかのような選手たちの様子を嘆いた。
「我々は悪いムードのときこそリアクションを起こすことができるはずだったのだが。それでも、試合で失ったものは、試合で取り戻すしかない」
前向きに次戦を見据えたグアルディオラだが、チェルシー戦で顔をのぞかせた問題点を見過ごすことはできない。55分もの間、1点ビハインドでチェルシーを追いかけている状況にもかかわらず、マンチェスター・Cはゲームを支配できず、無意味なポゼッションで試合をひっくり返せるような様子は見られなかった。
ここ数年で、プレミアリーグ優勝を2度経験し、チャンピオンズリーグの常連クラブとなったシティはビッグゲームに慣れているはずだが、ホームで見せているような姿は最後までスタンフォード・ブリッジにおいてお目にかかることはできなかった。前半は何とかポゼッションはできていたものの、チェルシーはうまく対応し、マンチェスター・Cが繰り出すどんな攻撃も抑えつけるだけの力があった。
すでに風前の灯となっていたシティの逆転優勝の可能性は完全に消滅したと言っていい。首位チェルシーと勝ち点で14ポイント離され、5位のアーセナルともわずか4ポイント差にすぎない。
■改善の見込みは…
無論、この試合の結果で彼らのシーズンが終わってしまったようなことになったわけではないが、チャンピオンズリーグ敗退からすでに立ち直ったと思われていた選手たちをもう一度奮い立たせなければならなくなった。
グアルディオラは3月19日に行われたリヴァプール戦でのパフォーマンスには満足していたが、その試合で勝つことができたわけではない。また、シティを継続的に見ている者であれば、その試合で見せたインテンシティーも以前とはかけ離れていたものであることを指摘するだろう。シティは3月のチャンピオンズリーグ・モナコ戦から続くビッグマッチ4連戦を2分け2敗とあまりに物足りない成績で終わることとなった。
ビッグマッチでの弱さを露呈したマンチェスター・Cだが、識者を見返すチャンスの日は近い。23日にウェンブリー・スタジアムで行われるアーセナルとのFAカップ準決勝だ。そのためにハル・シティ、サウサンプトンとのプレミアリーグの試合は落とすことができない。
マンチェスター・Cはここのところ6試合でわずか1勝しか挙げておらず、ポジティブな面もほとんど見られなかった。リヴァプール戦はなんとか引き分けに持ち込んだにすぎず、彼らがポイントを落としてしまった直近5試合では良いところは皆無であったと言っていい。
Getty Images■最適解を探し、悩み続けるペップ
グアルディオラは状況の打開を図るために自分自身すら変えようとしている。戦術を変えることに否定的で、頑固な指揮官は、リーグ戦では今シーズン初先発となるファビアン・デルフをチェルシー戦で起用した。フェルナンジーニョよりもさらに深い位置のミッドフィルダーとして置き、バイタルエリアに生まれるスペースをケアさせようとした。
しかし、そうしたグアルディオラの“努力”はわずか10分で水泡に帰した。エデン・アザールをペナルティボックス内でフリーにし、右サイドからのグラウンダーのクロスから失点を許してしまう。アザールの放ったシュートはヴァンサン・コンパニに当たりゴールに吸い込まれたもので、そのコンパニも昨年11月以来の先発出場であり、もう先発では出場できないのではというほどのパフォーマンスであった。
コンパニはその後なんとか持ち直し、デルフも同じようなミスは犯さなかったものの、選手層の薄さが改めて露呈される結果となった。ヘスス・ナバスは右サイドバックとして堅実にプレーしたが、ボールを持てば将棋の香車のように前にだけ突き進み、ポゼッションには全く貢献できなかった。ガエル・クリシはさらにひどい出来であった。またシーズン序盤はチームのベストプレーヤーであったフェルナンジーニョもすっかり好調ぶりが影を潜めている。そして攻撃陣をけん引するべき存在のケヴィン・デ・ブライネは疲れを隠せない。
今夏には大刷新が予想され、1試合の登録人数と同じくらいの選手が入れ替わる可能性すらある。しかし、全ての批判が選手にだけ向けられるべきではない。チェルシー戦の後半、選手たちがどれほど上向く様子を見せなくても、グアルディオラは変化をもたらすことをためらってさえいるようであったからだ。
週末のアーセナル戦では出来が悪く、ハーフタイムでベンチに退いたラヒーム・スターリングは、最後の11分に出場し、アーセナル戦よりはまだマシなプレーを披露した。レロイ・サネに代わって投入されたノリートは、あまりに短い出場時間ながら、一瞬の輝きを見せた。セルヒオ・アグエロの起死回生の同点のチャンスを生み出しかけたパスを送ったのは他でもないこのスペイン人アタッカーである。
もちろん、マンチェスター・Cにもスコアを変えることのできる決定機がなかったわけではない。後半アディショナルタイムに迎えたコーナーキックの場面でフリーになったジョン・ストーンズであったが、ゴールマウスの目の前からインサイドキックで合わせたシュートはクロスバーの遥か上を通過していった。
もはや嘆きの声すら上がらない。それはマンチェスター・Cにとってはいつも同じことの繰り返しでもあるのだから。混迷を抜け出すために必要なのは勝利と、優れたパフォーマンス。グアルディオラは残り少ないシーズンで、外野を黙らせることはできるのだろうか。
文=サム・リー/Sam Lee
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