移籍市場に260億円を費やすミラン…ファンの笑顔を取り戻し「打倒ユーヴェ」の先鋒へ

Hakan Calhanoglu Bayer Leverkusen
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早々に7選手との契約を済ませたACミラン。しかし、補強活動が終わりを告げる様子はまだなさそうだ。

ロッソネーリ・スポーツ・インベストメント・ルクセンブルクにとって、ACミランの買収は、長く痛みを伴った取引だったかもしれない。だが、新オーナーはこの夏、新しい選手を獲得する時間を無駄にしなかった。それは、ここまでの獲得した選手の数を数えるだけでも理解できることだ。そしてミランの夏の大盤振る舞いは、今週末までに2億ユーロ(約260億円)の大台を超える見通しである。

4月にミランの株式の99.93%を、中国資本が最終的に購入した。その際に新しくチェアマンに就任したリー・ヨンホン氏は、サン・シーロことスタディオ・ジュゼッペ・メアッツァをホームとするミランに、かつての栄光を取り戻すと約束した。

「復活と未来の栄光へ向かう道筋において、重要な段階を完了することができた。この伝説的なチームを再びサッカー界の頂点に立たせるべく、一歩ずつ歩んでいくことを約束する」と、リー氏は宣言したのだった。

昨シーズン、ヴィンチェンツォ・モンテッラ監督率いる若くて生きのいいACミランは、6位という上々の成績を収めた。これにより、ミランは3年ぶりに欧州カップ戦の出場が可能となり、投資の必要性が生じたのだった。

ACミランのファンにとって喜ばしいことに、クラブの新しい中国人オーナーたちは、チームのメンバーを一新するという約束を今まさに果たそうとしている。

7月3日の時点で、すでに、1億900万ユーロという大金が新たな選手獲得に費やされた。その中でも最もファンを興奮させ、同時に最も高くついたのは、4000万ユーロ(約52億円)での、ポルトガル代表FWアンドレ・シウバの獲得だった。

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それ以上に大金がかかったと思われるのは、コートジボワール代表のミッドフィルダー、フランク・ケシエに関してだ。ケシエは、アタランタから買い取りオプション付きのローン移籍で加入する。2016-17シーズン、ベルガモを拠点とするアタランタでブレイクし、同じくコートジボワール代表のヤヤ・トゥーレに匹敵する選手と言われている。

マテオ・ムサッキオとの1800万ユーロ(約23億4000万円)での契約はギャンブルにも思えるが、アルゼンチン代表でセンターバックを務めるムサッキオの状態がよく、ケガが完治しているならば、金額に見合う素晴らしい結果を出す可能性もある。同じく1800万ユーロで獲得したスイス代表のリカルド・ロドリゲスも、ミランが長年苦しんできた左サイドバックの問題を解決してくれることだろう。

フォワードのファビオ・ボリーニに500万ユーロかかったことには、ミランの忠実なファンはそれほど関心をもたなかったようだ。ボリーニのイングランドでのストライカーとしての実績は、華々しいものではない。一方で、レヴァークーゼンからセットプレーのスペシャリスト、ハカン・チャルハノールが加入するというニュースは、大きな興奮を呼んでいる。チャルハノールとの契約金は2500万ユーロ(約32億5000万円)で、ミランが使った金額は1億3400万ユーロにまで上ることとなった。

加えて、ケシエと同じくアタランタからはアンドレア・コンティが加入することも決定した。U21欧州選手権のイタリア代表から戻った有望な若手選手は、ミランにとって7人目の新加入選手。これで、一夏に使う額としては信じがたい1億5000万ユーロ(約197億円)という大金を移籍市場に費やしたことになる。

それでもミランは満足することなく、補強活動を休止する予定はない。チーム事情が不安定なフィオレンティーナのエースにも手を伸ばしつつあり、才能あるストライカーのニコラ・カリニッチを獲得しようとしている。カリニッチは、スタディオ・アルテミオ・フランキをおよそ3000万ユーロ(約39億円)で去ることになりそうだ。これで、ミランの総支出額は2億ユーロとなる。

モンテッラ監督率いるミランが、セリエAが切望する「アンチ・ユーベ」となるかどうかは予断を許さず、新シーズンにどのような結末が待っているかはわからない。新戦力がフィットせず、“いつものように”低調な戦いぶりに終始する可能性だってある。しかし、シルヴィオ・ベルルスコーニ会長時代の末期、資金を出し惜しみしたせいで、何年も苦々しいフラストレーションがたまるような時代を経験したミランのファンは、ようやく心の底から楽観的な気持ちを持って、新しいシーズンを迎えることができることは確かだ。

この点において、ミランは、この夏、野心的な中国人オーナーによる、サッカー界の頂点に復帰するための長い道のりに、最初の前向きな一歩を記したと言えるだろう。

文=マーク・ドイル/Mark Doyle

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