いよいよ始まるW杯予選。30日に発表されたメンバーでは、大きなサプライズはなく、森保一監督は海外組が代表史上最多の19人になる手堅いメンバーを揃えてきた。その選考の意図、東京五輪世代との本格的な融合について、そして注目プレーヤーは誰なのか。スポーツライターの飯尾篤史氏に今回のメンバー発表を読み解いてもらった。
■“いつもの顔ぶれ”を揃えた理由

初招集はゼロ。コパ・アメリカに出場した22歳以下の選手たちからの“昇格”も板倉滉ひとりと、メンバーリストに並んだのは、“いつもの顔ぶれ”だった。
だが、さまざまな条件を考えれば、当然のことだと言える。
9月10日のミャンマー戦で、いよいよ2022年カタール・ワールドカップに向けた戦いの火蓋が切られる。たかが2次予選と言うなかれ。初戦がいかに難しいかは、歴史によって証明されている。
記憶に新しいのは、ハリルジャパンが犯した4年前の大失態だろう。引いて守るシンガポールに苦戦し、ホームでスコアレスドローに持ち込まれてしまった。また、8年前にも、ザックジャパンが北朝鮮の術中にハマりかけ、後半アディショナルタイムの吉田麻也のゴールでかろうじて振り切った。
こうした過去を踏まえれば、森保一監督が“石橋を叩いて渡る”ようなメンバーを集めたことも、理解はできる。
しかも今回は、5日に国内でパラグアイと親善試合を戦ってから、ミャンマーに向かうというスケジュール。なかでも、欧州→日本→東南アジアと移動する海外組は「コンディション的にタフな調整を強いられる」(森保監督)わけで、こうした経験が豊富なベテランを多く招集したことも、納得がいく。
■五輪世代との本格的な融合はいつになるのか
©Getty Imagesましてや同時期に、U-22日本代表もアメリカ・メキシコ遠征を行なう予定なのだ。若手をA代表に抜擢したところでベンチに座らせる時間が長くなるなら、海外遠征で経験を積ませたほうが、成長に繋がるはずだ。
A代表と22歳以下の東京五輪世代の融合という点で言えば、来年3月の2次予選(ミャンマー戦・H/モンゴル戦・A)がひとつのポイントだろう。
10月の2次予選(モンゴル戦・H/タジキスタン戦・A)の時期には、今回同様、U-22日本代表の海外遠征が組まれており、11月の2次予選(キルギス戦・A/親善試合・H)の時期には、U-22日本代表も国内で親善試合を戦う予定になっている。
その後、国内組だけで臨む12月のE-1選手権、来年1月のU-23アジア選手権などを経て、いよいよ3月に東京五輪世代とA代表の融合が図られる、というわけだ。
逆に言えば、その頃になっても東京五輪世代がA代表に食い込んで来られないなら、5カ月後の東京五輪におけるメダル獲得など、望むべくもないだろろう。
■9月シリーズの注目プレーヤーは?
©Getty Images話をA代表に戻すと、今シリーズで特に注目したい選手がふたりいる。
ひとりは堂安律である。2シーズン過ごしたフローニンゲンからようやく“卒業”し、オランダの名門、PSVへとステップアップを果たしたばかり。ただし、代表でのパフォーマンスを見れば、今年1月のアジアカップでは彼自身が「自分に対して腹立たしい」と語ったように、さしたるインパクトを残せず、3月、6月シリーズでも目立った活躍を見せていない。
同じく右サイドハーフの伊東純也は昨季、ゲンクのリーグ優勝に貢献した際の好調ぶりを維持している。同じくレフティで3歳年下の久保建英も代表の常連になりつつあり、レギュラーの座も安泰ではない。こうした状況で果たして堂安は再び、森保ジャパン発足当時の躍動感あふれるプレーを見せられるのか。
ふたり目はGKシュミット・ダニエル。身長196センチで、足もとの技術も優れるシュミットは、世界規格のGKになるポテンシャルを秘めている。森保監督は6月のキリンチャレンジカップで2試合続けてシュミットを先発させたが、今夏移籍したベルギーのシント=トロイデンでもスタメンの座を確保しているため、指揮官は今回もシュミットをパラグアイ戦、ミャンマー戦のピッチに送り出すはずだ。シュミットに足りないのは経験だけ。ワールドカップ予選を経験しながら、さらなる成長を遂げてもらいたい。
日本代表がワールドカップ予選の初陣をアウェーで迎えるのは、フランス大会の予選以来、22年ぶりのことになる。
もっとも、国際Aマッチ152キャップを誇り、日本で最もワールドカップ予選を経験した遠藤保仁はかつて、こんなことを語っていた。
「ワールドカップ予選は、実はホームのほうが戦いにくい。ホームの大歓声がデメリットになる場合があるからね。ホームで大声援を受けた途端、攻め急いで自滅しかけたゲームを、これまでに何度も経験している」
実際、前述した2試合だけでなく、ドイツ大会の予選初戦でもジーコジャパンはオマーンに大苦戦の末、1-0でなんとか白星をもぎ取った。
だから今回、カタール・ワールドカップを目指す戦いが、アウェーのミャンマーからスタートするのは、決して悪いことではない。
文=飯尾篤史
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