■新スタジアムでトッテナムが鮮やかに先勝
チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝のファーストレグは、新スタジアムの欧州カップ戦初お披露目となったトッテナムが、1-0でマンチェスター・シティに先勝した。VAR判定による試合序盤のPK献上、さらにエースであるハリー・ケインの負傷交代というアクシデントを乗り越えて勝利したスパーズは、攻守にわたって非常にアグレッシブなパフォーマンスを見せ、終始試合を優位に進めた。これに対してクアドルプル(4冠)を目指すシティは公式戦9試合ぶり、今季3度目のノーゴールに終わったが、直前のFAカップ準決勝ブライトン戦から中2日(トッテナムは中5日)という疲労度の差もあってか、トップギアとは程遠いパフォーマンスだった印象だ。
注目されたのは、スパーズがどのようなアプローチで試合に臨むかだった。彼らはシティ相手に昨季、今季とプレミアリーグで3連敗中であり、マウリシオ・ポチェッティーノ監督はいずれの試合も最も得意とする4-2-3-1で真っ向勝負を挑んだが、ペップ・グアルディオラのチームの攻撃を食い止められずに敗れていた。そのため、何か特別なペップ対策を講じる可能性も考えられた。例えば、ドルトムントとのラウンド16セカンドレグでのスパーズは実質5バックの3-5-2でブロック守備を固め、相手にボールを持たせる形で試合をコントロールした。その再現をするのでは、という向きも少なからずあった。
■スパーズの選択は「真っ向勝負でハイプレス」
Gettyだが、新スタジアムに集まった6万人の大観衆の前でポチェッティーノが選んだのは、やはり真っ向勝負だった。キックオフの直後、4-2-3-1の最前線から猛然とボールを追ったハリー・ケインの姿が、この日の“所信表明”だった。
それに呼応するように、トッテナムの選手たちは持ち前のハイプレスでシティのビルドアップ部隊を追い回す。ケインがセンターバックのニコラス・オタメンディとアイメリク・ラポルテを牽制し、左サイドバックのファビアン・デルフが中央寄りで“偽SB”として振る舞おうとすれば、クリスティアン・エリクセン、またはソン・フンミンのいずれか右サイドに出ている方がマンマーク気味についていく。フェルナンジーニョはトップ下のデレ・アリが見て、一方では両SBのキーラン・トリッピアーとダニー・ローズは攻め上がりを通常よりも自重してラヒーム・スターリング、リヤド・マフレズの裏抜けを警戒。メリハリのあるプレッシングで試合の主導権を握るのがポチェッティーノの狙いだった。
だからこそ、スターリングのドリブルシュートがローズの手に当たり、VAR判定によって13分にPKを取られたのは痛恨だったはず。もしリードを許せばハイプレス戦術のリスクは高まることになり、シティに余裕を与えてしまう。だが、セルヒオ・アグエロのキックはウーゴ・ロリスが見事にストップ。3月のアーセナル戦でも終了間際にPKを止めていた守護神はこの夜再び英雄となり、主将のビッグセーブでチーム全員が乗っていけたのだった。
■タイトなプレッシングをかいくぐれないシティ
(C)Getty Imagesこの日のシティは、どこかパスワークに精彩を欠いていた。相手のマークが厳しくデルフが組み立てに参加できないと見るや彼の“偽SB”化を諦め、イルカイ・ギュンドアンをフェルナンジーニョの隣に下げて2枚のホールディングMFでビルドアップする形に改めたが、それでもスパーズのタイトなプレッシングをかいくぐることができない。長いボールを組み込んだり、ワイドに展開したりとコンパクトなスパーズ守備陣を広げようと工夫を凝らすものの、ロングパスはことごとく跳ね返され、ハイプレスだけでなく帰陣も速いトッテナム守備陣を前にサイドも崩せず、試合を通じてほとんど良い形でゴールに迫れなかった。
良いときのシティならトップ下に入ったダビド・シルバが積極的に裏抜けを狙って相手のハーフスペースを攻略していくのだが、スパーズ守備陣にそのスペースも与えてもらえず、D・シルバはほぼ消されてしまっていた。この試合は動き回りながらボールを受けて相手の守備をずらすベルナルド・シルヴァが負傷欠場、1本のミドルパスで決定機を演出できるケヴィン・デ・ブライネがベンチスタートだったが、彼らがいれば状況はまた違ったかもしれない。
フォアチェックとリトリートのバランスが秀逸だったトッテナムは、リーグで調子を崩していたものの(直近6試合で1勝1分4敗)、まるでここに合わせてきたかのようにハツラツとしたパフォーマンスを見せ、シティにリズムを譲らない。そして待望だったゴールが生まれたのは78分。中盤で50-50のボールをルーカス・モウラが拾うと、アリを経由してエリクセンが右のソン・フンミンにロビングパス。ファーストタッチは流れたがなんとか残し、中へ切り返して左足を一閃。シュートはGKエデルソンの脇下を抜け、新スタジアムでの2試合連続ゴールとなる韓国代表FWの一撃がネットを揺らした。
58分にケインがデルフとの接触で足首を痛めて交代を強いられたスパーズにとって、彼に代わる第2エースであるソン・フンミンのゴールでシティに勝ち越せたのは非常に大きかった。疲れ知らずで献身的、かつゴールに対して貪欲で、責任感に満ちたプレーをするソン・フンミンは、PKストップのロリスと並んでこの試合のMVPだろう。また、スコアに直結する仕事をした彼ら2人だけでなく、この試合では中盤で冷静沈着なパスさばきと的確なポジショニングで中盤を締めたハリー・ウィンクス、SBとの挟み撃ちでスターリングやマフレズから度々ボールを奪ったムサ・シソコら“黒子”の活躍も光り、前線と守備陣をつなぐ彼らの貢献があったからこそ、チームは90分を通じて間延びすることなく強度の高いゲームができたとも言えるだろう。
■謙虚なポチェッティーノ、冷静なペップ
Getty Imagsポチェッティーノ監督は試合後、「パフォーマンスにも、ゲームへのアプローチにも満足している」とした上で「やるべきことはまだたくさんある。1週間後はまったく違うゲームになるだろう」と勝って兜の緒を閉めた。ただ、まさに美しい新スタジアムに相応しかったこの日と同等のパフォーマンスができるなら、アウェーでのセカンドレグでも大いにシティを苦しめることができるだろう。
ただし、ペップも黙ってはいないはずだ。セカンドレグではB・シルヴァやバンジャマン・メンディの復帰が見込まれ、この試合では89分まで温存されたデ・ブライネもコンディションをそこに合わせてくるはずだ。試合後に「180分の戦いだ」と冷静に述べた彼の姿は驚くほど落ち着いていたし、何より、珍しくほとんどチャンスを作れなかった最初の90分を徹底的に分析して次に臨むことは間違いない。元より戦力的にはシティが上。第1戦を0-3で落とした昨季のリヴァプール戦とは違って、残り90分で1点ビハインドを跳ね返すだけの力は十分にある。
スパーズの先勝で、ベスト8唯一の同国対決は俄然面白くなった。どちらが勝ち進んでもおかしくない。運命の第2戦は1週間後、4月17日にマンチェスターのエティハド・スタジアムで行われる。
文=寺沢薫
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「※」は提携サイト『 Sporting News』の記事です





