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理想はリヴァプール。奪った後の攻撃の迫力は東京のスタイルでもある/橋本拳人インタビュー

2020シーズンの明治安田生命Jリーグが21日、いよいよ開幕する。FC東京は昨季最終節まで優勝争いを繰り広げた。クラブ史上最高位の2位で終わったものの、優勝は果たせなかったその課題を解決すべくスタートした新シーズン。新たに取り組む4-3-3システムの中で、アンカーを担う橋本拳人が見据える今季のチームとは?【構成:Goal編集部】

■課題を糧に取り組む新システム

――昨季はラスト3試合勝てず、2位に終わりました。

アウェイ8連戦を乗り切って、首位で味スタに戻って来たのが、(第32節の)湘南戦でした。絶対に勝たないといけない状況で少し硬くなってしまい、試合はドローに終わりました。

――続く第33節・浦和戦もドロー、最終節は横浜F・マリノスとの直接対決で敗れています。

「やり切るしかない」という思いで残り2試合も臨みましたが…悔しさが残っています。

――今振り返ると何が足りなかったのでしょうか?

「足りなかったこと」というのは正直分からなくて。自分たちは優勝という経験値もなく、未知数な部分が多くありました。ただ、1年を通じて自分たちが持っている力をすべて出し切れたとは思っています。

――迎えた今季、ここまでAFCチャンピオンズリーグ(ACL)プレーオフとグループステージの計3試合を戦い2勝1分けです。

新しいシステム[4-3-3]に取り組んでいて、連係も少しずつ良くなってきています。昨季に比べて、より攻撃的なサッカーを見せられるのではないかと思っています。

――11日のACL・GS第1戦・蔚山現代戦は、前線の流動性やサイドバックの攻撃参加など、新システムの特長が出ていたように見えました。

アウェイの地で相手も力のあるチームで(2019年Kリーグ2位)、Jリーグとは違ったフィジカル的な強さを感じました。その中でも自分たちの思うような攻撃ができていた時間帯も多くあったので、手ごたえのある試合でした。

――橋本選手ご自身は2016年にACLに6試合出場していらっしゃいます。その時と違いはありますか?

そのころは(自身)初めてのACLで、どういったものかも分からず、探り探りプレーしていました。でも今はチーム内にACL経験者も多いですし、とにかくタイトルを目指して戦うという気持ちで臨んでいます。リーグ戦とACL、日程面も厳しく総力戦となります。今まで以上にみんなで力を合わせてやっていきます。

■中盤3枚、新ポジションの面白さ

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――新戦力も加入しました。特に前線は強力です。アダイウトン選手、レアンドロ選手のチームへの適応をどう見ていますか?

キャンプからずっとやっていますし、コミュニケーションも取れているので、すぐに順応できたと思います。

――今取り組んでいる4-3-3は、前線やサイドが流動的に動く中で、アンカーの橋本選手に求められることも多いと思います。

やるべきプレー、役割は増えました。攻撃でも守備でも自分が中心となってやっていかないといけない。でも、すごくやりがいのあるポジションだと感じています。

――今までと違う部分は具体的にどういうところですか?

単純に中盤が4枚から3枚に変わっています。運動量の部分は昨季よりも増えましたし、増やさないといけない。その中でも奪った後のパスの精度もすごく求められています。強力な3トップ(アダイウトン、レアンドロ、ディエゴ・オリヴェイラ)がいるので、前線に良いボールを供給できればチャンスは増える。そういった守備から攻撃に変わる起点となるプレーを多く出していきたいです。

――ACL蔚山現代戦では、髙萩洋次郎選手が最終ラインに落ちるシーンもあり、中盤3枚(髙萩、安部柊斗、橋本)のバランスが取れていたのでは?

このシステムでは、中盤3枚がお互いのポジションや立ち位置を見ながら流動的にやっていかないといけない。よりコミュニケーションが大事になってきますし、バランスに気を遣いながらやっています。

――3枚の中のもう1人、ルーキー安部選手のプレーについては?

彼はハードワークできますし、走力もあります。あとの課題はボールを奪いに行くところだと思うので、思い切ってそこは行ってもらいたい。自分はそのための声かけだったりポジショニングを取ることなどのサポートををしていきたいと思っています。

――全体的に去年よりチームのパススピードが上がってるように見えました。

そうですか?

――気のせいですかね(笑)?

気のせいではないですか(笑)? でも、奪った後に「より速く攻めたい」ということはあります。前線にいいタイミングでいいボールを付けることができれば、そこからチャンスになる。その意識をみんな共有できているので、そういった意味で全体の“テンポ”は速いかもしれないです。

■目指すスタイルはリヴァプール

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――Goalの読者は海外サッカー好きが多いので、次はその視点で少しお話をお聞かせください。海外サッカーはご覧になりますか?

はい、見ます見ます。

――FC東京が取り組んでいる4-3-3は、欧州でも主流になってきています。

今そうですね。

――高速トランジションのリヴァプール、ポゼッションベースのマンチェスター・シティ、バルセロナ、個を生かしたレアル・マドリーなどなど、同じ4-3-3でもいろんなチームがありますが、FC東京が目指す形は?

リヴァプールですね、やはり。スタイル的にもアグレッシブで。

――やはり。それではリヴァプールの選手で橋本選手が参考にしているのは?

同じポジションであるヘンダーソン選手ですね。ヘンダーソン選手のプレーはとても注意深く見ています。あとはファビーニョ選手も。中盤3枚のフィジカル強度、クオリティは本当に高くて、目指していきたいところです。チームとしても、まるっきり真似するわけではないですが、参考にしていきたいと思っています。奪った後の攻撃の迫力は、自分たちのスタイルでもあるので。中盤3枚の運動量とクオリティ、ここは東京にとっても非常に大事だと思います。

――俯瞰的に映像を見ていますか?

見ていますよ。チームで1試合まるまる試合は見ないですが、プレーを取り出して「こういう時はこうしたいね」といったミーティングを何度かしました。個人としては、さきほど言ったようにヘンダーソン選手のプレーをすごく見ます。東京が4-3-3をやるとなったときに、「リヴァプールが理想像だね」という話をしたんです。そこからより注目して見るようになったのですが、試合を丸々見るとヘンダーソン選手のすごさがより分かります。90分間落ちないスタミナや、クオリティがすごかったです。

――橋本選手はヘンダーソン。では、ほかの選手、例えば右SBの室屋成選手はアーノルドといったイメージを持っていたりしますか?

リヴァプールのSBは右がアーノルド選手で左がロバートソン選手でしたよね。攻撃的なSBという点では、東京も近いものがあるかなと思います。前線で言えば、アダイウトン選手はサディオ・マネ選手みたいな感じなので。ギュンギュン攻撃に行ってくれます。1対1がガンガン仕掛けられますし。

――髙萩選手は誰がというより唯一無二なイメージがあります。

彼は本当に頭がいいですし、ハードワークもできます。いつも隣で見ていてすごいなって感じます。やはり彼は攻撃的なプレーが持ち味だと思うので、自分はそこを引き出してあげられるようなパスやポジショニングを心掛けるようにしています。

■昨季と今季、一番の違い

――最後に、開幕戦・清水エスパルス戦についてお聞かせください。清水は横浜FMのコーチ・クラモフスキー監督が就任してスタイルを構築している最中です。また、期限付き移籍した岡崎慎選手をはじめに縁のある選手が多いです。

岡崎選手もそうですし、吉本一謙選手も昔は一緒に試合に出ていましたから。ゆかりある選手もいます。篠田善之コーチもですね。リーグ初戦ですから、もちろん負けたくない思いがあります。東京の強さを見せつけられたらいいなと思います。

――第2節ではホーム開幕戦で横浜F・マリノスを味スタに迎えます。どう攻略しますか?

攻撃的なチームなので、その攻撃をどれくらい抑えて、自分たちの攻撃に持っていけるかが大事になってくると思います。…というより、「自分たちのサッカーをして、勝ちたい」です。昨年の悔しさもあるので、それを思いっきりぶつけたいと思っています。

――では、昨季と今季、FC東京の一番の違いは?

まず、システムが変わりましたし、より攻撃的なチームになるという実感があります。それと、何より昨シーズンの経験値はすごく大きかったと思っています。いずれにしても、先を見て戦うより、一歩一歩目の前の試合を勝ち続けていくというところは、これからも愚直にやり続けていきたいと思っています。

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